泥沼から逃げているのだ。足元が汚れないように高足を使って。その高足の棒は何故なのか人間の巨大な人差し指だ。天に向かって伸びた2本の人差し指を私は右手と左手でシッカリと掴んで放さない。泥沼は洪水のようにうねり指は大きく揺れる。そんな流れに吸い込まれたくないという一心で振り落とされないようにと必死だ。
このシチュエーションは今の自分の現状なのだろうか?
気付かずに人の手に身をゆだねている自分の姿を見てみろという暗示だろうか?
無我夢中でもがき自身では成すすべを知らない自分への警告?
そして10人の赤ちゃんが生まれたという病院を洪水の中カメラを持って探し回るという変なストーリーだった。
そんな夢から覚めた後、ある日本人男性に電話する。オモシロイ男がクルージュに3ヶ月滞在しているから話をしてみたらと紹介されていた相手だ。午前11時、もう起きているだろう。
「初めまして。Tさんから紹介を受けて電話しています・・・」。やけに冷めた感じの人で私が「何故ルーマニアに?クルージュでは何をしているのですか」と尋ねると、「別に・・・他に行くとこないから」と素っ気ない返事。クルージュでおすすめの場所を尋ねると、「一番いいホテルのある丘の上かな・・・」「そのホテルの名前は?」「・・・知らない。とにかく一番いいホテルだよ・・・」「そう、ありがとう。突然電話してごめんなさいね」と弾まない会話を終えた。
見ず知らずの者からの突然の電話に自分のプライベートを話す必要は無いだろうという考えなのか、本当に何もしないで寝起きしていただけなのかは判らない。ルーマニア国内に潜伏している日本人はかなりいるらしいが、それぞれの過ごし方はどういうものなのだろう。
丘の上ね。行ってみようかな。