富士屋ホテル(箱根宮ノ下温泉)


【2013年2月更新】
 秋の週末に、再び箱根宮ノ下を訪れ、花御殿に宿泊しました。1992年に初めてこのホテルに宿泊した際、滞在して以来、20年ぶりの花御殿です。今回はデラックスツインの予定がUPグレードにより、スイートルーム
「菊の間」の宿泊となりました。ジョンレノンを初めとして著名人が多数滞在されたという「菊の間」花御殿の3Fの正面にある角部屋352号室です。2間続きの広い部屋は、1間がベッドルーム、1間がソファーのあるリビングルームで、正面の広いガラス窓から、本館玄関を望むことができます。結婚式が何組が行われており、入れ替わり立ち代わり、新郎新婦や親族・友人等が本館正面で記念撮影をされる姿が見えます。遠くには箱根の山々も望め、往年の宿泊客の方々がどんな思いでこの眺望を見ておられたか偲ばれます。
 和洋折衷の寺院建築のような重厚な室内は、天井の隅々や柱に至るまで、彫刻が施され、天井や室内を眺めているだけで、タイムスリップした別世界にいるように時間が過ぎていきそうです。窓のある明るい浴室や、長期滞在者向けの広いクローゼット等、外国人向けのホテルであったことも伺われます。折角の素晴らしい客室に滞在できたことを踏まえ、夕食はルームサービス、朝食もホテル直営のPICOTのバンを購入し、部屋でいただきました。土曜日の午後から日曜日午前まで、できるだけゆっくり
「菊の間」での滞在を楽しみました。また、夜には同じ花御殿の地下にある屋内プールと大浴場にも入りました。

花御殿 352号室菊の間 花御殿3F廊下
352号室菊の間
ルームサービス 浴室 クロー
ゼット
西洋館 花御殿プール
菊の間から望む本館 箱根登山鉄道
(箱根湯本)



【2012年9月更新】
 あじさいの美しい初夏に本館のスタンダードダブルに宿泊しました。最も古い明治24年建築の本館のフロントのすぐ上の2階にあるシンプルなダブルルーム48号室です。窓から望む中庭の新緑と雨の音が何と言えない情緒を醸し出していました。昔ながらの階段を昇り降りし、メインダイニングで朝食をいただき、花御殿1階の宿泊者専用の室内プールで泳ぎ、また大浴場で温泉を楽しみました。室内プールは、休日にも関わらず空いていて、ゆったりと泳ぎを楽しみました。今回も花御殿1階のチャペルでは結婚式が行われており、花嫁衣裳の新婦を見ることができました。

本館 本館階段 本館廊下
本館2F 48号室(スタンダードダブル)
中庭 花御殿1F室内プール メイン
ダイニング
花御殿
花御殿・資料室 花御殿・チャペル 花御殿
大浴場


 箱根は古くから日本を代表する温泉リゾートです。箱根湯本、塔ノ沢、宮ノ下、強羅、仙石原、芦ノ湖等、広域に渡り、 各々味わいのある温泉があります。歴史ある旅館・ホテルが多いのも特徴です。中でも宮ノ下温泉にある富士屋ホテルは、明治11年、 日本の温泉リゾートホテルの先駆けとして設立されました。今でも創業当初の趣をそのまま残し、明治浪漫が漂う情緒満点のホテルです。 1992年の秋、初めてこのホテルを訪れ、花御殿に宿泊して以来、すっかりこのホテルに魅せられ、食事のみ・宿泊等、形態は色々ですが、何度も訪れています。
 客室は、本館(明治24年建築)、菊華荘(明治28年建築)、西洋館(明治39年建築)、花御殿(昭和11年建築)、フォレストロッジ(新館)(昭和35年建築)の5つの建物に分かれており、それぞれ独特の趣があります。訪れるたび異なる思い出が残る、このホテルの訪問記録を時系列にまとめました。

富士屋ホテル・花御殿 富士屋ホテル別館・菊華荘
本館 花御殿 菊華荘
メインダイニング 紅葉頃の西洋館 西洋館1号館
紅葉頃の西洋館
(庭園側から)
西洋館客室 西洋館
廊下
猫足
バスタブ

第1話「花御殿」
 1992年に初めてこのホテルを訪れた時、「花御殿」に宿泊しました。木造4階建てで寺社建築のように風格あるこの建物は、フラワーパレスと呼ばれ、ホテルのランドマーク的な存在になっています。客室は建物の外観どおり、「洋と和の折衷」という言葉が最適な重厚感あふれる雰囲気です。開放感ある高い天井の室内は、木のぬくもりが感じられる基調になっており、黒光りの木造の格天井と柱、壁の細かい彫刻、白熱灯と家具調度品等、ひとつひとつが大変美しく、芸術的な感じがします。昭和初期にタイムスリップして静かな別空間にいるような気分になります。 ホテル客室の浴室は、すべて天然温泉を引いており、客室内で温泉を味わえるのも魅力です。「花御殿」の地階には、太閤湯・不老泉という浴場もあります。こじんまりした浴場ですが、透明マイルドで体にやさしい感じのお湯でした。同じ地階には、ホテルの歴史を紹介した資料館もあり、昔の写真や資料を興味深く見学しました。また、館内廊下にも往年の写真が数多く展示されています。同じ地階には、他に温泉プールやチャペルもあります。滞在中にホテル内の美しい日本庭園と温室を散策しました。温室には美しい植物が多数展示されており、販売もされています。夕食・朝食は、本館のメインダイニングで取りました。メインダイニングは格天井や彫刻、簾が大変美しく、重厚感のあるレトロな雰囲気です。本館ロビーやティーラウンジも雰囲気満点であり、明治時代へタイムスリップした気分になりました。「洋と和の折衷」の美しさを残し、また古き良き日本の心を残す、素晴らしいホテルと感じ、満足して帰りました。

第2話「メインダイニングと嶋写真館」
 昭和5年建築のメインダイニング「ザ・フジヤ」は重厚な寺社建築であり、独特の格天井、彫刻、窓の簾等、和洋が絶妙に調和した大変美しい建物です。別の日に昼食を とるために再び立ち寄ってみました。ランチであれば、予約なしで手軽に味わうことができます。また、自家製の美味しいパンが有名であり、道路沿いのホテルのパン屋さんにパンのみ買いに来られる お客さんも沢山おられます。ホテルのすぐ隣りにある「嶋写真館」は同ホテルの写真部として創業した歴史ある写真館であり、当時の富士屋 ホテルや箱根の風景、ホテルを訪れた著名人(アイゼンハワー、三島由紀夫、中山美穂 等々)の記念写真が展示されています。セピア記念 写真の撮影でも知られており、昼食の後、早速立ち寄って2階のスタジオで記念撮影をお願いしました。

第3話「別館・菊華荘」
 かっての御用邸である菊華荘は、美しい和風の木造建築です。宿泊以外に昼食のみ、昼食+入浴のみのプランもあり、昼食プランで別の日に立ち寄ってみました。美しい日本庭園を見ながら個室で味わう懐石料理は大変満足のゆくものでした。また、入浴昼食プランは、1日3組限定となっているようです。富士屋ホテル本館・花御殿の「洋と和が調和したレトロ」に対して、菊華荘は「深みある和のレトロ」という雰囲気です。いずれも日本人が忘れかけていた「こころ」を取り戻すことができるような、そんな素晴らしいホテル・ 旅館であると感じました。

第4話「新館(フォレストロッジ)と館内見学ツアー」
 4月末の或る日、再び富士屋ホテルに宿泊いたしました。今回は客室指定なしの格安プランで参加し、客室は昭和35年東京オリンピックに備えて建築された新館(フォレストロッジ)のデラックスツインとなりました。木造建築ではないものの、客室内は富士屋ホテルのイメージを維持したレトロな色調でまとめられていました。また、室内はとても広く、ホテル敷地内の最も奥まった場所にあるため、快適で静かに過ごすことができました。この新館にのみ、禁煙ルームが設定されているようです。今回、16時から毎日開催されている館内見学ツアーに初めて参加しました。本館、西洋館、花御殿といった建物の紹介から、メインダイニング、バンケットホール、資料室、厨房内の紹介まで、大変興味深いツアーでした。休前日ではないものの飛び石連休中とあって、何十人もの宿泊客がツアーに参加していました。

第5話「グリル・ウィステリア」
 紅葉の残る12月中旬の或る日、富士屋ホテルへ昼食に再び立ち寄りました。 今回は本館1階にある「グリル・ウィステリア」を初めて訪ねました。ごじんまりとしたレストランであり、メインダイニングや菊華荘に比べると気軽に 立ち寄れる雰囲気です。カレーライスやオムライス、ランチやステーキセットを比較的手軽な価格で楽しむことができます。味はメインダイニングに全く 劣らない富士屋ホテルの味です。メインダイニングと同じ本館内にあり、白壁や柱、天井、ライト等、明治時代のレトロな雰囲気を醸し出していることは同じ です。夜もメインダイニングに比べて手軽な価格でコースメニューが用意されており、宿泊・日帰りいずれでも気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。また、 グリルの隣には、やはりレトロな雰囲気のバー・ヴィクトリアがあります。クリスマスにはコンサートが開かれるようです。

第6話「西洋館」
 紅葉美しい11月下旬の金曜日、「記念日プラン」という宿泊プランで再びホテルに宿泊しました。このプランはスペシャルディナーとシャンパン(またはお花)、記念写真がセットになったプランで、客室はスーペリアツインという広い部屋指定になっています。案内された客室は、2棟ある西洋館のうち、1号館の2階、庭園側に面した角部屋91号室です。明治時代建築の白い木造建築の西洋館に宿泊するのは初めてであり、エキサイティングな 思い出になりました。本館の廊下を通り、売店を過ぎて間もなく、白壁天井に白熱灯というレトロな西洋館1号館 に入ります。黒光りの階段を上ると、もう完全に明治時代へタイムスリップした気分です。エレベータはないので後から客室係の方が荷物を順番に運ぶことになり、大変な作業と頭が下がります。室内は大変高い天井と広大な空間で開放感があります。ベッドと応接セットの間にかなり広いスペースがあり、専用の小さなクローゼットルームもあります。本館に面した側には、高く細長い西洋風の角窓が2つあり、庭園に面した側には、横長の和風窓が 2段あります。和風窓は障子になっており、外から見ると完全に西洋風ですが、中から見ると和風であり、独特の 風情があります。この絶妙な和洋折衷の造りが、美しい白壁、白熱灯、調度品、猫足バスタブ等と相俟って何とも言えないレトロな美しい雰囲気を醸し出しています。  しばらく休憩した後、温室のある日本庭園を散策しました。見頃になっている紅葉が本館・西洋館・新館と うまく調和し、美しい光景となっていました。夕食のスペシャルディナーは、オードブル、松茸スープ、伊勢海老、 ステーキ、デザート全て素晴らしく、満足できるメニューでした。夜半に降り出した雨が止み、絶好の好天に 恵まれた翌朝、朝食後に再びホテル内を散策しました。黒光りの本館階段や、西洋館・花御殿の前では、新郎新婦 の記念撮影が行われていました。ホテルで結婚式が予定されているようで、館内は賑やかな雰囲気に包まれて いました。

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