箱根堂ヶ島温泉


【追記】対星館、晴遊閣大和屋ホテルとも、残念ながら2013年に閉館となったようです。専用ロープウェイやケーブルカーで訪れる、昭和の秘境旅館がなくなったのはとても残念です。

対星館

対星館の自家用ケーブルカー

【対星館】
 温泉エリア全体が車では辿り着けない場所にある「隠れ家」のような温泉が箱根にはあります。
箱根堂ヶ島温泉には、対星館、晴遊閣大和屋ホテルの2つの旅館がありますが、前者は自家用ケーブルカー、後者は自家用ロープウェーで谷を下っていくことになります。冬の三連休の週末対星館を初めて訪れました。
 
対星館は、松本清張の「蒼い描点」や川端康成の「名人」にも登場する旅館です。国道1号線沿いにある駐車場に車を止め、小さな無人の自家用ケーブルカーに乗ること7分、山間を300メートル下ることになります。ケーブルカーは2台あり、中間地点で行き違いができるようになっています。このケーブルカー自体がレトロで大変味わいあるものであり、乗っている時から「隠れ家」気分と温泉情緒が急激に高まっていきます。ケーブルカーの終点駅も未だ旅館ではなく、ここから古い鉄橋を渡り、川沿いを数分歩いて旅館の建物に辿り着くことになります。東京近郊にこのような温泉地があったということは驚きです。また、この旅館が昭和5年創業であり、ケーブルカーも同年に開通していることを知って更に驚きました。昭和初期に自家用ケーブルカーを開設し谷底に温泉旅館を造るという心意気には 頭が下がります。
 旅館は、創業時の面影をそのまま残す本館、離れと、比較的新しい西館から成っていますが、滞在した客室は、西館3階のバストイレ付の広い和洋室、天竜六(336号室)でした。10畳和室に4人用応接室の付いた広い部屋です。お風呂は、大浴場と婦人浴場が男女時間交替制になっています。まず、大浴場は、岩風呂の内湯が2つ(熱い湯と温めの湯)と岩の野天風呂があります。野天風呂は、箱根の山と早川の渓流が間近に迫り、野趣満点です。婦人浴場は、一回り小さいですが、内湯、露天風呂とつながった岩風呂、岩の露天風呂があります。お湯は透明マイルドで香りが良く、体にやさしい感じです。源泉を5本も持つ、贅沢な源泉かけ流しの湯であり、湯質は素晴らしいものがあります。また、露天風呂からは満天の星を眺めることができ、とても楽しい時間を過ごすことができました。
 食事は、夕食・朝食とも部屋食で、夕食は海の幸を交えた、美しくヘルシーな懐石料理でした。また、旅館内にはマッサージ室(2名常駐)やエステルームがあり、マッサージ付きプランで宿泊したため、客室で快適なマッサージを受けることができました。さらにスリッパ が使い捨てで各人が目じるしを記入すること、チェックイン時のロビーでの給茶、チェックアウト時のモーニングコーヒー等、細かなサービスにも気配りが感じられました。
 チェックアウト後、庭園を散策しました。1万坪の敷地内には、自然のままの美しい庭園、滝や足湯もあり、楽しく散策できました。箱根堂ヶ島温泉は、箱根の国道沿いにありながら、秘湯の隠れ家気分を満喫できる温泉です。自家用ケーブルカー、温泉の質、料理、オリジナリティあるサービスと、魅力が一杯であり、また訪れたい気分になります。贔屓客が多いのも頷けると実感して、自家用ケーブルカーで旅館を後にしました。


[2011年2月更新]
 秋の週末、6年ぶりに再び対星館を訪ねました。赤いケーブルカーがリニューアルされ、青い登山電車に変わっていました。旅館の仲居さんによると、経営者も代わられたようです。宿泊した客室は、西館2Fの一番奥の和室10畳バストイレ付きの「飛泉」です。客室からは、大雨の後ということもあり、少し怖いくらいの勢いある早川の渓流と、昔ながらの離れの建物を望むことができました。食事は夕食・朝食とも部屋食で、夕食は牛ヒレ肉や車えび、季節の新鮮な魚やきのこ類を使用した美味しい料理を味わいました。山間の渓流沿いの岩の露天風呂、岩に囲まれたタイルの大きな内風呂とも、豊富な自家源泉の、良質で心地よいお湯は、以前と全く変わらず、ゆっくりと味わいリフレッシュしました。

対星館

対星館の自家用渓谷電車

 翌日、すぐ近くの嶋写真館に立ち寄り、5年ぶりにセピアの家族写真を撮影しました富士屋ホテルや宮ノ下の温泉、町並みとともに長い歴史を刻んだ、昔ながらの写真館も変わらず、良い記念になりました。帰りは宮ノ下駅から、これも昔ながらの箱根登山鉄道109型電車で帰路につきました。

嶋写真館 箱根登山鉄道(宮ノ下駅)

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