2012/09/02(日) 2012佐渡国際トライアスロン-2(レース当日)

03:00 起床

まだ寝ている家族を残して静かに部屋を出て、自転車で会場を目指す。
家族は、朝食バイキングを楽しんでから、わたしがスイムアップする時間には間に合うように、会場にやってくる予定。

早朝の薄暗い中を、装備一式を背負って自転車で会場に向けて走る。

05:20 会場到着

通行止めの看板が出ている。
この商店街を真っ直ぐ抜けて、左折すると、スタート地点であり、ゴール地点である、メイン会場にいたる。

05:36 トランジットエリア準備完了

メイン会場は、すでにたくさんの参加者であふれている。

早速、手首のIDタグをオフィシャルに見せて、トランジットエリアに入り、装備一式の準備をする。

いつものように、使う順番に、バイク用具、ラン用具を並べる。

いつもと違うのは、補給食が多いのと、バイク用グローブも用意してあること。


すっかり夜が明け、あたりは明るくなってきている。

ふと上を見上げると、真っ青に晴れ渡った空に、真っ白な月が浮かんでいる。
背中には今さっき登ってきた太陽の温かみを感じる。
長く伸びる自分の影。

目線レベルの地上の景色は、朝焼けに照らされて、かすかにオレンジ色。

なんだか、とっても不思議な時間帯。

マジック・アワー。


準備完了してから、レースナンバーを腕に書いてもらうために、会場のホールへ向かう。

フィニッシュゲートの計時が0を並べている。
明るくなってきているが、まだ煌煌と照明が輝いている。
ここに戻ってくる時って、どんな気分なんだろう。
そもそも、無事戻って来られるのだろうか・・・。
いや、絶対に、戻ってきてやる。

ホールに入ると、レースナンバーごとに、受付が設置されている。
ここでも、手首のIDタグを見せると、2人のおばさんが、わたしの両側に立って、それぞれ、右腕、左腕にぶっとい黒マジックで、レースナンバーを算用数字、縦書きで書いてくれる。

「がんばってね!」
「ありがとうございます!」
とってもいい気分。

そのまましばらくホールに留まり、板張りの床の上で横になって、ゆっくりとストレッチする。
まだまだ、わたしのスタートまで時間がある。


そろそろ、Aタイプのスタート時間、6:00が迫ってきたので、ホールを出て、浜辺へ向かう。
小路の向こうに、朝焼けに照らされてひかる海が見える。

Aタイプは、スイム3.8km、バイク180km、そして最後のランはフルマラソン42.195kmという、国内最長距離のレースである。

時間がかかるので、Bタイプよりも先にスタートする。
すでに、スイムチェックを終えて、スタート準備を整えたAタイプ参加者が群れをなしている。

Aタイプの赤いスイムキャップが勇ましい。
いつの日か・・・。


06:00 Aタイプスタート

開会式が始まり、ファンファーレが演奏される。
朝の時点の気温が29℃、水温が27℃と発表される。
早朝なのに、既に暑い。
空は雲もなく、真っ青に晴れ渡っている。
これから、どんどん気温が上がるはず。
暑い戦いになる予感。

要人の挨拶、激励が終わり、いよいよ、スタート時刻。

ファァ〜ン!

スタートの合図で、赤いキャップの猛者たちが、水しぶきを上げて海に駆け込んでいく。
すげぇ〜なぁ!
見る見る沖へ離れていく参加者を、羨望のまなざしで見送る。
群れをなして、水しぶきを上げて、進んでいく。
勇ましい!



07:40 Bタイプスタート

さぁ、次はわたしの出番である。

ウォームアップのために、ぞうりから、一時的にランシューズに履き替えて、会場近くを軽く走る。
気温が高く、すぐに汗が吹き出てくる。
ちょっとペースを上げて走って、心拍を一度上げておく。
朝日の照る海岸べりの一直線の舗装路のど真ん中を、きもちよく流して走る。

再び、トランジットエリアに戻り、スイムの準備にかかる。
ランシューズを脱いで裸足になり、ウェットスーツを着用。
暑いので、上半身は、はだけたままにする。
ゴーグルに、タップリと曇り止めを塗る。

ゴーグルと、スイムキャップを持ってスイムチェックの列に並ぶ。
順番になり机の前にたどり着き、自分のレースナンバーを申告すると、足首に巻く計測チップを手渡され「がんばってください!」と声をかけられる。
右足のすそ口、ウェットスーツをちょっとだけめくり上げ、計測チップをしっかりと足首に巻きつけ、その上にウェットスーツを下げる。
ランへのトランジション、ウェットスーツを脱ぐときに、計測バンドが邪魔にならないようにするための、基本中の基本。
初めて参加した渡良瀬の大会では、こんなことも知らないで、ウェットスーツを脱ぐ時に計測チップも外さなくてはいけなくなったっけなぁ・・・。

海岸に出る。
すでにたくさんの参加者が、試泳している。
「くらげに顔さされたぁ!イタイイタイ!」と女性の参加者が、満面で笑っている。
上半身もきちんとウェットスーツを着用し、わたしも、水の中に入る。
期待通り、綺麗な水。
透明度高し!
冷たくもない。
見たところ、波もほとんどない。
こりゃぁ、最高だ!
他の参加者と正面衝突しないように気をつけながら、泳ぐ。
朝日を浴びて、青空の下、美しい海で泳ぐのは、なんとも、気持ちいい!
こんなひと時も、トライアスロンやってて良かった、と思える瞬間のひとつ。

充分泳いでから、浜辺に上がり、またまた上半身のウェットを脱いで、足を海に投げ出して、ゆっくり座ってスタート時を待つ。

そうこうすると、いよいよ、スタート時間が迫ってくる。
ウェットをまた着用し、水中眼鏡の曇りをチェックし、大集団の中でスタート位置を決める。
スイムコースは、沖合いの2箇所のブイを時計回りに1周回する逆三角形のコース。
距離2km。
内側は混雑しそうなので、スタート時にはアウトコースになるよう、沖に向かって大集団の左側の中段に陣取って、スタートを待つ。
第一ブイのターンまでに、徐々にアウトコースからインコースに入り込む作戦。

いろんな人のスタート前の挨拶が済み、いよいよスタートが迫る。

ときの声を挙げて、気合を入れる。

07:40、号砲一発でスタート。
歩いて水に入り、遠浅の海をしばらく歩いて進む。

水が綺麗なので、集団がばらけたあとでも、前方や、横を泳いでいる他の参加者が、すぐ目の前、右、左、あっちこっちに浮いているのが見える。
芋の子を洗うが如く、大混雑。
泡立つ海中で、バトル。

1個目のブイまでは、マイペースで泳ぐよう気をつける。
でも、たくさんのスイマーで、大混雑しているでなかなかマイペースを守って泳ぐのが難しい。
前がつかえて蹴られたり、後ろからのしかかられたり、手と足で叩き合いながら進む。
時々、ヘッドアップして進行方向を確かめないと、集団のどの位置に自分がいるのか、進んでいる方向が正しいのか、皆目分からなくなる。

作戦通り、アウトコースからスムースにインコースに入れたとは思えないが、とりあえず、沖の1個目のブイに辿り着き、時計回りにブイを巻く。
2個目のブイまでは、右手に見えるコースロープに沿って泳げば、蛇行を最小限に抑えられそうだ。
わたしは、右側でブレスするので、右側の目標物は確認しやすい。
透明度は高いし、だいぶ参加者もばらけてきたので、水中での見晴らしもよい。

前方、左右に、ばらけて泳いでいるほかの参加者がバタ足してできる、水中の白い泡って綺麗だなぁ、などと思いながら押さえ気味のペースでゆっくり泳ぐ。
右手に見えるコースロープからは、着かず離れずの距離を保ち、第2ブイまでの最短距離を保とうとする。

第2ブイに到着。
さぁ、ここからは、岸辺までの一直線。
ヘッドアップして、スイムアップ地点、陸上の目標物を設定する。
あの小山のちょっと右側にスイムのゴール地点がある・・・。

残り距離も少ないので、ここからは、ペースアップして泳ぐ。
腕に力を込めて、水をかく。
脚は、バイクとランにとっておかないといけないので、使わない。

岸辺への復路は、いままでになく、うねりを感じる。
体が波にもまれて、上下するのが分かる。
うねりに体をゆだねつつ、浜に向かって、全力で水をかく。
時々、ヘッドアップして、ゴール地点を確認する。
水中、目の前を、左から右へ視界を横切って斜行して泳いでいく他の参加者のバタ足が見える。
お〜い、そっちはゴール方向じゃないよぉ〜、と心の叫び。

何度かの息継ぎごとに、ヘッドアップして、前方を確認して泳ぐ。
前方に見えるスイムゴールゲートが、徐々に、大きくなってくる。

海のそこが近くに見える。
岩場がゴツゴツしているエリアを抜け、砂地になる。

もうすぐゴールだ。

とりあえず、無事にスイムアップできそうで、一安心。

周辺の参加者が、立ち上がって歩き出すが、ぎりぎりまで泳いで進む。

そこに手が着くほどに浜辺に近づいてから、立ち上がる。

浜辺に、応援してくれる妻と子供たちが見える。
大きく手を振って応援に応える。
ありがとぉ〜!


久しぶりに二本の脚に、全体重を受けて、ふらつきながら、上陸する。

ぶっはぁ〜、結構疲れたぞぉ。


08:32 スイムアップ

無事スイムアップして、シャワーを浴びて、塩水を落とす。

こんな風にスイムアップでシャワーを浴びるのは初めての経験。
なんか、本格的なトライアスロンっぽくていい感じ。

あぁ〜、気持ちいい。


水浴びのあとは、給水。

ボランティアの女学生さんたちが、冷たい飲み物を大盤振る舞い。

アクエリアスでも、コーラでも、冷たい水でも、飲み放題。

アクエリアスをいただく。


08:34 トランジット-1

トランジットエリアに戻り、まずは、エナジージェルで補給。

甘いものが美味しい。

ウェットを脱ぎ捨て、座り込み、足の裏の砂を落とし、靴下を履いてから、バイクシューズを履く。
ヘルメットを被る。
今回は、長距離なので、いつもは着けないバイク用のグローブも着用する。

準備完了。


08:37 バイクパートスタート

トランジットエリアをバイクを押して進む。

まだまだ先が長いので、一つ一つの動作にあくせくしない。

ゆっくり、マイペースで進む。


バイクパート

佐渡島は、北側の山塊からなる大佐渡、南側の山塊からなる小佐渡、そしてそれを結ぶクビレの部分の平野部、国中平野で構成されている。
したがって、佐渡島には、中央部が唯一の平野部で、あとは、海岸線まで山がせり出した地形となっている。

ミドルディスタンスのバイクコースは、105km。
トランジットエリアのある、クビレの左側から、中央の国中平野を東に向かって、クビレの逆側の海岸線、両津湾まで出てから右折し、あとはひたすら海岸線を走り、小佐渡を時計回りに周回して、スタート地点に戻ってくる、そんなコースである。

ちなみに、ロングディスタンスのバイクコースは、クビレの左側のトランジットエリアから、そのまま海岸線を北上し、大佐渡、小佐渡の両方、つまり島全体を、時計回りに周回する190km(!)のコースである。

バイクのスタートラインを越えてから、サドルに跨り、ペダリング開始。距離が長いので、周りのペースに惑わされないよう、マイペースで行こう。

トランジットエリアを出てからしばらくは、市街地を走る。
島のくびれの平野部を東に向かい、昨日上陸した両津の港を目指して、内陸部のコースを走る。
平野部とは言え、昨日バスに乗って両津港から会場入りした時に分かっていたのだが、結構アップダウンがある。
徐々に、ペダリングという行為に体が順応してきたので、TTバーを握ってスピードを上げる。

すぐに汗が噴出してくるのが分かる。暑い。ギラギラと太陽がまぶしい。

前後に参加者が走ってはいるが、混雑してはいない。

快調に進む。

軽く坂を上り、右にカーブを切りながら坂の上に上がると、眼前に両津港が見える。
島の逆側まででてきたのだ。
海が青い!

20km地点の住吉のエイドステーションは、水の補給も必要ないし、疲れてもいないので、そのまま通過。

暑いので、ボトルの中の水をドンドン消費していく。

空から、容赦なく、夏の太陽が照りつける。

左手に小さな波頭がギラギラ輝く濃紺の海。

天空は真っ青な空と真っ白な雲。

右手は葉っぱが香ってきそうなほど濃緑の山塊。

そんな原色の中を、白く光るアスファルトのコースが蛇行しながら見渡す限り前方へ続き、彼方、緩く登っていく道路が、目を細めたくなるような眩い青空と接して、消えていく。
なんて気持ちのいいコース。

サイコォー!

大声で絶叫しながら、ペダリングする。

33km地点の水津のサービスでは、水分を補給する。
ここで、佐渡島独特のウォーターサービスを知る。

仕組みはこうだ。

エイドステーション手前数百mの地点に、看板とともに、後方に高さ2mほどのネットの壁がついた畳一畳ほどの大きさの箱が置かれている。
参加者は、空になったボトルをネットに向かって、走りながら投げつける。
ボトルはネットに当たり、箱の中に回収される。

こうして、あらかじめエイドステーションに着く前に、余分なボトルを投げ捨てて、ボトルケージを空けておく。

エイドステーションでは、テーブルが並び、手間から順に、アクエリアス、コーラ、水と、種類ごとにそれぞれゾーンわけされている。
ボランティアの学生さんたちが、「アクエリアース!」とか、「コーラ!!」と叫びながら、テーブル越しに、大会側で準備したボトルを差し出してくれる。
自分の欲しい中身の入ったボトルを受け取り、そのままケージに入れて出発するのだ。
それこそ、バイクを降りずに、徐行しながら、ボトルを受け取って、補給を済ませることも可能である。

おぉ〜、なんともカッコいい、素晴らしいシステムではないか。

なにより、大会側で準備した、白地に赤字の専用ボトルがカッコいい。
しかしながら、初参加のわたしは、そんな給水システムであることを知る由もなく、3つのボトルケージに、自分の家から自分のボトルを3個付けて参加しているので、大会ボトルを受け取る空きスペースがない。

当然、そういう人のために、ボトルごとの補給ではなく、空のボトルに、飲み物を注いでの補給もしてくれる。

ボランティアの女学生に空のボトルを渡し、自分の欲しい飲み物を告げる。
TTバーの間の一番飲みやすいボトルには、氷水を入れてもらう。フレームのボトルケージに入れたあと二つのボトルには、アクエリアスと、氷の塊を入れてもらう。

かち割り氷を入れてくれるのが、本当にありがたい。

さぁ、出発。

でも、あのボトル、欲しいな・・・。

再び、絶景の海岸線を走る。

島の海岸線を走る幹線道路際には、ポツリポツリと集落がある。

集落に差し掛かると、家々の、道路に面した玄関が脇に、島の人々が座り込んで陣取り、家族で自転車に乗って走る我々を応援してくれる。
おじいちゃん、おばあちゃん、と子供たちが目に付く。

一斗缶や、タライを木の棒で、カンカン叩きながら応援するスタイルが多い。

53km多田のエイドステーションが近づいてくる。

今度は、ボトルをもらおう。

東京から持ってきた3本のボトルのうち、750mlサイズの一本は、この日のために購入した500円の安いボトル。
これなら、捨ててしまってもいいや。

エイドステーションが近づいてきたことを、道路わきの標識が教えてくれる。
しばらく行くと、左手前方に、ボトル回収ボックスを発見。
ちょっとだけスピードを落として近づき、家から持ってきた500円の空ボトルを、左手でネットに向かって下手投げすると、ボトルは放物線を描きながら、ボックスの中に無事回収される。

エイドステーションでは、TTバーに付けたボトルに、再び氷水を入れてもらう。
もう一本のボトルには、アクエリアスを入れてもらう。
そして、念願の大会ボトルは、氷水入りのやつをもらう。

ボトルゲット。

氷水を補給してもらったハンドルに付けたボトルには、昨日、受付会場で買ったタブレットを入れる。
水に入れると、泡を出しながら、勝手にシュワーッと溶けてくれる優れもの。
ボトルをシェイクする必要がない。
味は柑橘系で、脚の吊り防止に効くらしい。

さぁ、あと半分、がんばるぞ。

エイドステーションを後にして、海岸線をひた走る。

景色がいいので、灼熱の暑さも、脚のだるさも、気にならない。

前方に、また上り坂が見える。

海岸線とは言え、山岳部がそのまま海に接しているので、平坦な路ではない。
上り坂の頂点には、左手の海へ、右手の山岳部からと連なる山塊の末端に穿たれたトンネルの入り口が見える。

スピードが落ち、坂の頂部のトンネルに向けて、ギアをギリギリいわせならが、ゆっくりと登る。
ブラケットの握り、顔を下に向け、重いペダルを下に向かって踏みつける。
見えるのは、白い路面と、自分の太もも。

そして、左手前方から、一斗缶を叩く音。

「がんばれ〜!」

家族総出で応援してくれる。

「ありがとぉ〜」と心の中で叫びならが、ちょっとだけ顔を上に上げて、軽く会釈しながら、応援団の前をゆっくりと通過する。

もうすぐ山頂だ。

トンネル入り口に到着。
オフィシャルが一人、立っている。
「トンネル出口、急カーブ注意です!」
「おう!ありがとぉ!」と叫びながら、トンネルに突入。
涼しい!
ひんやりと冷えた空気に包まれて、下り坂になっているトンネル内を気持ちよくスピードアップ。

前方のトンネルの出口は、青空でいっぱい。

アスファルトの路は、右に曲がって視線から消えていく。
トンネルの出口に差し掛かると、前方に見えるのは、一面真っ青な海!
緩い下りでスピードを上げながら、前方の海に向かって走る。
トンネルを出ると、再び熱気に包まれる。
右にカーブする路に沿って進み、どんどんスピードを上げて下って行く。
その先、眼下に見えるのは、海岸線と、次の集落と、そして緑の山。

嗚呼絶景!

76km地点、小木のエイドステーションに到着。

大会案内のコースプロファイルで、ここから、ゴールに向けて、キツイ登り坂であることを知っているので、ここでゆっくりと休憩も兼ねて補給することを決めていた。

エイドステーションでは、ヘルメットを脱いで、頭から氷水をひしゃくでかけてもらう。
一瞬、頭がシャキーンとする。
ヘルメットを被る。
水分をボトルに補給し、出発する。

エイドステーションを出ると、すぐに「小木の坂」が始まる。

コース終盤で疲れのたまった脚には、かなりキツイ上り坂が延々と続く。
止まりそうなスピードで、意地でも降りるもんか!とジリジリと進む。
時には、蛇行してしまうほど、脚がキツイ。
前を見ても見えるのは、上り坂と、芥子粒ほどの他の参加者。
バイクを降りて、押している参加者もいる。

どこまで登りなんだぁ〜。

容赦なく太陽が照りつける。暑い。頭がボーっとする。

先ほどのエイドで補給してもらった氷水のボトルを頭上で絞り、冷たい水を浴びる。
頭がキリッとして、100mほどの間は元気に登れる。

すぐに頭の熱が再発して、ボーっとしてくる。
しかも、風が前方から吹いてくる。熱風の向かい風。最悪。

先ほどまでの海岸線の気持ちのいいサイクリングとは一点、ゴール前の最後の苦行となる。

命からがら、小木の坂をクリアした後、しばしの下り坂のあとは、再び緩い上り坂に、海から吹きつける向かい風と闘いながら、市街地を走ってトランジットへ向かう。
このパート、景色もイマイチ、スピードも出ない、暑い、一番キツイ区間。

やっと見覚えのあるコースに出る。
宿泊している宿の前を通過する。

幹線道路を真っ直ぐ進み、アーケードの商店街に辿り着く。
この区間は、特に応援がたくさん。

ありがたい。

12:47 バイク・ゴール

真っ直ぐ進んだ先を左折して海岸へと向かうと、バイクパートのゴール、トランジットエリアに到着する。

オフィシャルが、停止、降車の合図にしたがって、バイクを降り、バイクを押してトランジットエリアに到着。

トランジットエリア脇に、応援してくれる家族の姿を発見。

ありがとう!

バイクラックにバイクを引っ掛け、ヘルメットを脱ぎ、靴をランシューズに履き替える。
エナジーチューブと、アミノバイタルチューブを補給する。
ラン用の帽子を被り、準備完了。

さぁ、最後のランパートだ。


12:52 ランパートスタート

まずは、出発前に、トランジットエリアの出口で冷たいアクエリアスと、コーラで喉を潤す。

頭から、ひしゃくで氷水をタップリかけてもらう。

脚はもう、限界な感じ。

とても走れる気がしないが、あと20km、なんとかなるだろう。


12:52 ナハナハ!

・・・ではない。

帽子を深く被って、頭を叩いて気合を入れて、走り出す。

トランジットエリアから、先ほどバイクで戻ってきた商店街のアーケードのコースに出る。
この区間は、会場近辺の商店街でもあり、歩道に鈴なりの応援の人々がいる。

皆さん、温かい応援、ありがとうです!


商店街を抜けると、幹線道路脇に、住宅の立ち並ぶコースとなる。

前方に、自宅の水道で、歩道に向けてシャワーしてくれる人を発見。
目が合って、頭を指し示すと、頭から水がかかるように、シャワーしてくれる。
かけて欲しくない人は、かけないでくれとジェスチャーすれば、シャワーをかけない。
応援するほうも、手馴れたものである。
こういった、プライベートなシャワーゾーンが、とてもありがたい。

私は、当然、頭を指し示して接近する。
シャワーヘッドを私の方へ向けて、冷たい水を掛けてくれる。
とても気持ちがいいので、立ち止まって存分に水浴びしてしまう。
とにかく、暑い時間帯なのだ。

後ろ髪を引かれる思いで、プライベートシャワーゾーンを後にして、再び走り出す。

日向に立っているだけでもクラクラするような暑さの中を、足を引きずるようにして、ラン。

再び、宿泊している宿の前を通過し、しばらく行くと、幹線道路から左に道を分かれる。

3.7km地点、この分岐点に、コース上最初の八幡のエイドステーションがある。

エイドステーションについて最初にしてもらうことは、ひしゃくで氷水を頭にかけてもらうこと。
ぼぉ〜っとしていた頭が冴え渡る。
さきほどまでの地獄の暑さから、一瞬の天国の涼感を味わう。

そして、次に、ランパートで必須のアイテムを受け取る。
白いスポンジである。
大きな青いポリバケツに溜めた氷水に、スポンジがたくさん浸してある。
これを、ボランティアの学生さんから、3個、受け取る。
冷たい水をタップリ含んでいるスポンジを、トライアスロンジャージの両肩口に一個づつ挟みこみ、背中にも一個入れる。
合計3個の白いスポンジが、しばしの間、涼を伝えてくれる。

気持ちいいぃ〜。

水分も十分補給してから、八幡エイドステーションを出発。

エイドステーションから上り坂。

脚が上がらない。

橋を渡り、今度は緩やかに下りながら、市街地を進む。

エイドステーションを出て、5分もすると、冷たかったスポンジは、体温と気温に暖められて、ぬるくなってしまう。
最後に、間をあけながら、ひとつ、ひとつ、スポンジを絞って頭から水を浴びる。
スポンジ効果終了。

早く、次のエイドステーションで、頭から氷水を浴びて、スポンジ欲しい・・・。
ただ、それだけを願って、コースを進む。

なんとか、5.1km地点の金丸エイドステーションに到着。

待ちに待った水浴びタイム。

あぁ〜、極楽極楽。

頭から水を掛けてもらったあと、朝からの暴飲暴食(といっても、ほとんど液体を飲み続けたのだが)のため、お腹の調子が悪くなってきたので、トイレに駆け込み、スッキリさせる。

スッキリさせてから、レモンをバクつき、アクエリアスとコーラをタップに飲んで、冷たいスポンジを3個もらって、イヤイヤながら、エイドステーションをあとにする。
ずーっと、ここで休んでいたい・・・。

天国から、地獄へ。

疎水沿いを進み、

前方には、緑の稲穂がたなびく田んぼが見える。

田んぼのなかの、細い道を進むランナーがずっと先まで見える。

陽射しをさえぎるものは無いもない、太陽から逃げ場の無い、むき出しのコースを進む。

疎水の橋を渡り、両側に田んぼの広がるコースに入る。
この区間、日陰もなければ、エイドステーションもない。
約3kmに渡って、なんにも無い灼熱のコース。

ここでも、プライベートエイドステーションが大活躍していた。
前方に、氷のタップリ入ったクーラーボックスを積んだワンボックスカーが止まっている。

助かったぁ〜。

駆け寄って、ひしゃくを持ったおじさんの前で膝に手をつき、後頭部を差し出し、頭のてっぺんから首根っこにかけて冷たい水を掛けてもらう。

生き返ったぁ〜。ありがとうございました!

そして、また、灼熱の路へ復帰。


田んぼの中の一本道を進む。

突き当たりを左に曲がると、市街地っぽくなってくる。

前方に坂道が見える。
あれを登らないかんのかぁ〜。
絶望的な気持ちになる。

坂をトボトボと登り下りになる。
下りになっても全然嬉しくない。
なぜなら、今下っている坂を、折り返してからの復路では、登らなければならないからだ。

登りも、下りもない、平坦な路がいいのに・・・。

8km地点、街中の宮川エイドステーションに到着。
氷水、スポンジ、アクエリアス、コカコーラ、出発・・・。

街中を下っていくと、折り返し地点が近いことを示す標識を発見。
あぁ〜、これで、やっと、半分か。

幹線路を左に別れ、市役所の出張所に設えられたBタイプ折り返し地点に到着。
ここでも、氷水、スポンジ、アクエリアス、コーラ。
ゲップ。
なんか、腹がタプタプしているような気もするが、とにかく冷たいものを飲みたい。
脚が動かない。もう限界。ひとたび止まってしまうと、なかなか、走り出せない。
でも、戻らないとしょうがないので、出発する。

折り返し地点へは下り坂でやってきたので、当然、復路は上り坂となる。

ダメ、やっぱり、走れない。

上り坂は走れない。

ついに、歩いてしまう。

意地でも歩くか、と思っていたが、意地が完全に、プツンと切れた。
ゴールできさえすれば、いいじゃないか・・・。
いやいや、でも、あとで後悔するような走りだけはしたくない。
タイムはこの際、どうでもいいが、せめて、全力を出し尽くしたを言えるような走りをしなくては、今までの努力が報われない。

気を取り直し、すり足のように、小股で、なんとか、走り出す。

先ほど通過した宮川のエイドステーションで、水浴びとスポンジと給水。

そして、一番苦しい区間、田んぼの中の一本道を進む。

逃げ場の無い、この暑さなんとかしてくれぇ〜。
エイドステーションでもらった冷たかったスポンジは、今では水分も枯れて、役立たず。

右手に、また、白いワンボックスカーを発見。
遭難したボロボロの小船が、嵐の大海で避難する小島のような、貴重なプライベートエードステーション。
冷たい氷水に感謝。

再び、田んぼの一本道。

前方に疎水沿いの土手に上る緩やかな坂。
そんな短い上り坂が苦しい。
再び、歩いてしまう。

平坦になってから、走り出す。

太ももがパンパンで、脚が上がらない。ふくらはぎがぴくぴくする。
しこたま浴びた氷水の副作用、足の裏が水を吸ってふやけて痛い。

やっとこ、金丸エイドステーションに到着。
あと少しだ。
水を掛けてくれるボランティアの学生さんの元気を分けてもらう。
皆、給水や、スポンジや、それぞれの役割を楽しそうに、真面目に、元気よくこなしている。

「水、水いりませんかぁ!」「コーラ!コーラ!いりませんかぁ!」「がんばってください!」

元気な声が気持ちいい。
ありがとう!君たちのひたむきな姿を見ていると、少しだけ、元気になった気がするよ。
あと少しだ、頑張ろう。

エイドを出発、少しだけ動くようになった脚で、次のエイドステーションを目指してすり足走行で、市街地の中を進む。

前方に、八幡のエイドステーションが見えてくる。
水浴び、スポンジ、アクエリアス、コーラ、出発!

エイドを出て、幹線道路に突き当たり、右折すると、あとは海岸に沿って真っ直ぐ進むだけ。

ここから、ゴールまで、約3.5kmほど。

道路の一番端っこ、時には歩道の上を走り、少しでも民家の軒先の日陰に入ろうとする。

私設エイドステーションの、カナダライが置いてある。
その中には、水とスポンジ。
スポンジに染み込ませた水を頭からかぶる。

逆車線では、ロングディスタンス、Aタイプの選手が、最後のランパート42.195kmの往路を走っている。

後方からは、時々、Aタイプのバイクが凄い勢いで抜いていくので、道路の端を走らないと危ない。

一回、そんな状況を暑さのなかで忘れてしまい、道路右側の民家のシャワーを浴びようと、フラフラと道路の右側に渡ろうとしたら、危うく、後方から凄いスピードでやって来たTTバイクに轢かれかける。

アブネェ・・・。

真っ直ぐな路を進むと、徐々に、道路の両側がにぎわってくる。

おぉ、アーケードの商店街に帰ってきたぞ。

「お帰りなさ〜い!」

声援は、もう、「がんばって」ではない。

無事、ゴールまで帰って来たのだ。

「○○(わたしの実名)さん、お帰りなさい!」

・・・!

参加者名簿を手元に置き、レースナンバーを確認して、わざわざ、名前で応援してくれるなんて、なんて素晴らしい佐渡の人たち!

本当に、ありがとう!

あと少しで、ゴールだ。

我ながら、結構がんばった。

幹線道路を左折し、前方に海が見える。

左手にゴールの横断幕を見ながら、そのまま前進し、Uターンしてから会場内のコースに入る。

15:45 ゴール!

右手前方に、妻と、子供たちの姿を発見!

おぉ、待っていてくれたか!

子供たちの手をとり、ゴールへ向かう。

ついに念願かなって、家族同伴でのゴールだ。

嬉しくて、嬉しくて、笑顔満面、脚の痛みを完全に忘れて、足取り軽やかに走る。
タイミングとか、前後の選手とか、何も考えられずに、お立ち台のゴールへ向かう。


前方でゴールする選手たちが混雑していて、目の前でゴールテープが張られる前にゴールをくぐる。

娘たちの手を両手に握ったまま突き上げて、ガッツポーズ、最高に嬉しいゴール。

佐渡のローカルTVでは、生放送でゴールをずっと中継していたようで、大会HPには、その録画がUPされている。
しかしながら、大混雑ゴールだった私の姿は、画面の端にちょっと写っているだけ。
名前のテロップも流れなかったのは少々残念。

来年はタイミングと見計らって、お立ち台が混雑していない時にゴールすべし。


ゴール後は、冷たいスポーツドリンク500mlを受け取って一気飲みしてから、参加賞のタオルと完走賞のメダルを受け取る。
このメダル、銀色で、なかなか立派な完走記念。

「パパ、メダル見せて」 「かっこいいだろぉ〜。」

靴を脱ぎ捨て、靴下を脱ぎ捨て、真っ白に膨れ上がったぶよぶよの足を芝生に放り出す、この開放感!

あぁ〜、人生で、一番疲れたぁ〜。
もう立てない。

ゆっくりと休憩してから、最後の一仕事、おかたづけ。


16:19 撤収

疲れた体に鞭打って、脱ぎ捨てたウェットやら、バイクシューズやら、食べ散らかしたジェルの包みやらを集めて、全部、IKEAの袋に乱暴に突っ込んで、片付け終了。

暑い、熱い、一日が終った。

とても濃密な時間だったなぁ・・・。


夕方になって、やっと、ちょっとだけ涼しくなってきたが、まだまだ、陽射しは強い。

会場からは、私は自転車で、家族はタクシーで、宿に帰る。

マジ、疲れた。



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