Part・2
<オランダのマフィア屋さん> 2000年8月8日
オーストラリアのマフィア屋さんから入ってしまったので、続けてオランダのマフィア屋さんの事も書いてみよう。
オランダで仕事をしていた頃、大変お世話になっていた、とあるレストランのオーナーからある日、
”ロッテルダムに今度、高層のワールド・トレード・センター・ビルが出来るという話がある。”
”どうもそのビルの周りを公園のようにして、そこに色んな国のレストランをおきたいらしいんだ。”
彼はそう言って、話を持ちかけて来た人間から貰ったという、関係書類とパンフレットを私に見せてくれた。
書類もきちんとした物がそろっているし、パンフレットを開いてみても、建物の大まかな構造図、パースと写真の合成で作られた完成予想図、ビル周辺の緑地化計画で作られる公園や、公園内に計画される各国のレストランのイメージ図、等々。このプロジェクトに関する殆どの物はそろっていた。
”話を持ってきた人間は、プロジェクトが大きな物だから、出来れば話を早く進めたいらしくて、やる気があるなら、デポジット(手付け金)がほしいと言っている。だがな・・・。”
”だがな・・・”。ここいらへんが、ヨーロッパで白人に混ざって長く商売をしてきた人物の違うとこで、何か嫌な物を感じると言う。
”だいたいこれだけ大きなプロジェクトになると、必ず裏の世界では、情報が早く行き渡っているはずだ。”
”だから明日、マフィアのボスを知っているので、でっぱてきてもらって、話を聞こうと思う。一緒に来るか?”
次の日、私は彼と、そのマフィアのボスと会うために出かけた。
”やあ。” グレーのベンツからニコニコしながら降りてきたボスは、ちょっと小太りな紳士で、そこいらの会社の役員という感じだった。私にはこの人が、ここいら辺を縄張りにするマフィアのボスにはとても思えなかった。ただ、運転手兼ボディーガードでついている男は、たぶん雇われのプロのガードだろうが、静かなぶん不気味だった。私には、彼らがどんな話しをしているのかは、オランダ語なので解らなかったが、側でビールをチビチビやりながら見ていると、ボスの目が、たまに厳しい本職の目になっているのだけは感じられた。
そして、しばらくしてこの話の結末が、オランダだけでなく、周辺国も絡めた、大がかりなサギ行為で、その犯人が捕まったという報道で幕を閉じた。
このレストランのオーナーは、こういった形で身を守ったのである。
オランダのマフィアに関するおもしろい話は、これ以外にいくつかあって、マフィアのイメージからはチョットずれている。大変庶民的で、逆に庶民の味方というイメージが私には強い。
ある街に、犬を虐待する男がいた。欧米では、オランダに限らず、お犬様はちゃんと市民権をお持ちになられていて、大事にされて伸び伸び生きている。そんな犬を虐める悪い奴だから、周りの住民も何度も注意に行き、役所や警察にも届けた。だが、いっこうに収まらない。それで、住民達はマフィアにお願いをした。
”あの男は、犬を虐める悪い奴です。どーか、敵をとって下さい。”
結末は想像がつこう。
オランダには運河が沢山ある。その運河に浮かんでいる一隻の船が、海賊電波を発して、周りの船や住民は困っていた。やはりこの男も、幾度注意しても、いっこうに聞こうとしない。それで、周りの人達は相談した結果。
”あの船は、海賊電波を幾度注意しても止めない。どーか、懲らしめてやって下さい。”
と、マフィアにお願いした。
ダイナマイトが投げ込まれたそうだ。
オランダのマフィア屋さん。全てがこんなに庶民的では決してないだろうが、こんな一面があるだけでもホッとする。
とある国の、とある人が、こう言った。
”日本のマフィアは、ピストルで喧嘩をする。”
”イタリアン・マフィアは、マシンガンで喧嘩をする。”
”だが、ジューイッシュ(ユダヤ)・マフィアは、核兵器で喧嘩をする。”
世の中、怖いことが沢山ある。上の方まで追いかけて見ていけば、いったいどうなるのでしょう。

