展覧会の紹介

一線展 選抜展■第20回北海道支部展 4月10日(水)〜14日(日)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)

(敬称略)

 一線美術展は、1950年に岩井弥一郎、上野山清貢、増田誠らが旗揚げした全国公募展だそうです。
 今回は、北海道支部展のほか、審査員の小品展、全国からの選抜展の、計3本だてです。作品は、銅版画が1点あったほかは、すべて絵画でした。
 ただし、内部の階層構造がどうなっているのか、審査員と会員は違うのか、などなどについては、よく分かりません。また、通常は、東京のギャラリーなどで行われることの多い選抜展が、今年は札幌で開かれることになったことについても、とくに説明パネルなどはありませんでした。

 北海道支部展について述べましょう。
 16人が、100号クラス1点と、10-30号の作品の計2点ずつを出品しています。うち14人が油彩、残りは水彩です。道内在住でありながら、後に述べる選抜展にしか作品を出していない人もいました(両方に出している人もいる)。
 昨年に比べると、全体的な印象でしかないのですが、やや会場が明るくなったような気がします。
 昨年小品しか出していなかった信岡成子(登別。道展会員)は、道展にも出品していた「刻(とき)わかれ」を陳列しました。裸婦やシーラカンスを配し、全体を白や水色の寒色でまとめています。もう1点の「風路」は、以前からの信岡調とでもいうべき、野菊などの色を丹念に塗り分けた作品です。

 中村国夫(旭川)「静刻『骨-01』」は、動物の頭骨を中心に手堅くまとめています。
 田島繁一(同)「新雪の嶺」は、遠くの山並みを、安定した構図で描いています。重層する白のなかで、中央付近の木の茶色の帯が、効いているようです。
 神林仁(同)「浅春」も雪景色ですが、だいぶ広がりのある風景です。よく見ると、左から右に、右から左にと、斜めの線が何往復か走っていて、構図に安定感をもたらしています。雪の色が単調に陥っていないのも、好感が持てます。
 川西由峰(札幌)「輪の世界」は、昨年の道展入選作。埴輪を、茶で塗りつぶした平面的な構図で処理しており、苦心の跡がうかがえます。
 河瀬陽子(芦別。道展会友)の「虚」も、道展の出品作。昨年なくなった「43Z」こと清水一郎さんをモデルに、スポットライトに浮かぶリアルなピエロと、屋外の明るい光の中で平面的に描かれるピエロとを、並列して描写しています。
 小崎侑子(札幌)「満月とあじさい」は、レモンイエローの月と、そのあかりの中にぼうと浮かぶおびただしい花との対比が鮮烈です。色がちょっとナマっぽいのが気になりますが、かきたいことがはっきりしているのはいいことだとおもいます。
 また、入川ミツ(旭川)「午後のひととき」は、オーストラリアのイメージを散らし、にぎやかな画面になっています。
 渡部泰子(同)「もくもくと」は、バレリーナを手慣れた筆でとらえ、中村美恵子(旭川)「追憶の流氷」は、冷たい海の前に立つ老婆を縦の構図で描いています。
 ほかに、石川宗晏、佐々木稔(以上旭川)、木村好(苫小牧)、鈴木利枝子、平原智子(以上札幌)、藤田猛夫(網走館内滝上町)が出品。

 選抜展のほうには、道内外から、50号前後の作品1点ずつが出ています。
 いちばん印象に残ったのが、尾花賢一(群馬)「飛ぶアホウ」でした。ビルや神社の並ぶ都会の上に、樽を横にしたような化け物が飛んでいます。暗い顔と両手だけが妙にリアルです。よく見ると、化け物のしっぽは、都会から根が生えたようになっています。
 小林弘子(同)「SUBARU」は、一見なんでもない室内画のようですが、それぞれの要素がよく考えられたうえで配置されているので、見ていると心が穏やかになってくるようです。左端ののっぺらぼうの女性、テーブル上の花瓶や梅酒をつけた瓶、そして背後には星のきらめく窓も見えます。
 また、佐藤良子(神奈川)「みのり」も、平凡な田園風景を描いていますが、黄色から黄緑へと微妙にうつろっていく色彩の階調、かかしと手前の杭との反復などが、心地よさを演出しています。
 道内勢では、宮田忠征、中村国夫、石川宗晏、川西由峰、中村美恵子、渡部泰子が出品しています。

一線美術会のHP 

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