過去の日録を見る  2000年 12

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 1月31日(水)
 夕刊と朝刊地方版の間に珍しく空き時間ができたので、CAIに「アンダー23」を見に行ったけど、残念ながら小生にはサッパリわけがわかりませんでした。
 帰りには三岸好太郎美術館で「第1回三岸好太郎・節子賞展」を見ました。1階に受賞作を展示していました。いずれ紹介を書く予定です。全道展や道展、新道展はともかく、道内では全国水準の絵画を見る機会がわりと少ない(12月の函館の行動展は数少ない例外)ので、こういう絵画展は意外に貴重なのでは? 2階にはいつもの好太郎の主な作品のほか、節子の作品もけっこうあったのが意外でした。
 どうでもいい話ですが、館内には客は私ひとりでした。冬の間、知事公館の北側の庭園が通れないのは、けっこう不便ですね。
 札幌市内版を下ろした後、職場に山岸誠二さんが現れてビックリ。名刺を届けてくれて、どうもありがとうございました。
 
 1月30日(火)
 とかなんとか言って書いたりして。
 都心へ向かうバスが速すぎて時間ができ、This is galleryの二人展「ふくらめる湿度」に。さいとうギャラリーの巌信栄さんの個展も見ました。すばやい筆致とペインティングナイフによる厚塗りで、支笏湖や積丹などの風景をぐいぐい描いていく人です。薄塗りを重ねる人の多い新道展では珍しいタイプ。おそらく下の絵の具が乾きらないうちにかいているらしく、海の色などに濁りがありますが、それも魅力といえばいえるでしょう。
 1月29日(月)
 ふだんはたくさんの展覧会でにぎわう(たぶん)世界一の貸しギャラリー、時計台ギャラリーもさすがに真冬は展覧会が少ない。今週も「第30回現展北海道支部展」だけです。
 現展も毎年マメに展覧会を開いています。「現代美術家協会」の略ですが、べつに現代美術ではなく、絵画の公募展です(写真の部門もあるようですが、上野の本展を見たことがないのでよく分からない)。七つの目を持つ猫の顔のようなシンボルマークが掲げられていますが、地下のアダムの顔を隠しているお面とかそういうものではないようです(分かる人にしかわからんギャグですいません)。
 道支部展にも本部からの賛助作品が出品されるのが特徴です。
 支部長の村上豊さん(余市)は、原色に近い平坦な色班が画面のあちこちに置かれた風景画が特徴です。一時、裸婦やミズバショウを画面に取り入れた作風に取り組んだこともありましたが、もとの画風に戻ったようです。阿部国良さん(旭川)は、明るい有彩色を薄く塗った抽象画が持ち味でしたが、今年は茶色が主体となりました。近藤弘毅さん(今金)は、青とピンクで構成した抽象的な背景に飛ぶタンチョウを配したもので、青一辺倒だった過去の作品より広がりが出てきたようです。とにかく分かりやすい。

 その後、かでる2・7にて、12月に近代美術館で行われる「HIGH TIDE」展の会議。

 読者の方から長文のメールをいただきました。ありがとうございます。ちゃんと読んでくれてる方がいるんだなあ(じーん)。

 30日はたぶん更新しません。
 1月28日(日)
 休み。
 19世紀ロシアの文豪ゴーゴリの短篇2篇が収められた岩波文庫「肖像画・馬車」を読む。「肖像画」は、貧しく若い画家が夜店で肖像画を二束三文で買うが、目のあたりがリアルすぎて夜も落ち着いて眠れない。彼はふとしたことから金貨を手に入れ、売れっ子の肖像画家となるが、筆は荒れ、ある日、地道な修行を怠ったためにまともな絵がかけなくなっている自分に気づく…という悲惨なお話。
 ストーリーもさることながら、絵を売る夜店に人だかりができているというのが、今の画家や画廊主や関係者からみると、隔世の感があるのではないでしょうか。なにせ、写真も映画もテレビも無い、印刷物すらほとんど目にしないこの時代、表象といえば絵しかなかったのですから。
 1月27日(土)
 早起きしてNHK「土曜美の朝」を見る。柳幸典氏が出ていた。いま瀬戸内海の直島にあるコンテンポラリー・ミュージアムで、彼の大規模な個展が開かれている。見たい。けど、遠い……。
 終日仕事なので、どこにも行けず。

 札幌の画家の三神恵爾さんから映画ミニコミ誌「シネマ・レストラン」4号が届く。どうもありがとうございます。ちなみに、小生も「ゴダールの映画史あるいは『ありえたかもしれない映画』」なる拙文を書いています。読みたいという奇特な方がいらっしゃいましたらお分けしますのでおしらせください。
 1月26日(金)
 うーん、きのうは、休みだったので寝坊して、春陽会道作家展の原稿を書いた時点でパソコンの前で寝てた……。

 きょうは夕刊なので朝イチで会社へ。金曜なので道路が渋滞してる。
 清水一郎さんから「CHONZA」拝受。ありがとうございます。ほかにも会社に図録や個展のお知らせなどたくさん届いていました。多謝。

 フォトグラファーの山岸誠二さんに制作を頼んでいた当ホームページ用の名刺が会社に届きました。あとでお礼を言おうと思っていたら、アートスペース201の前でばったり会いました。こんどは士別市の喫茶店で展覧会とか。がんばるなあ。
 そこでは、上杉克也絵画展が開かれていました。だれもいなかったので確たることはわからないのですが、壁に張ってあった経歴によると、上杉さんはかつて剣淵西原学園という施設に在籍していたそうで、確かに、展示してあるペン画は、一昨年あたり美術業界でちょっとはやった(というと言葉は悪いかもしれませんが)「アウトサイダー・アート」という感じです。「食べられる魚」なんて絵は、紙の左側4分の1くらい魚の頭がかいてあるだけで、あとはほとんどが白紙。なかなか大胆な構図です。天井からは魚の形に切り抜いた紙がたくさんぶらさがっていて、楽しい雰囲気でした。

 this is galleryでは「Art MARKET」なる若手のグループ展をやってましたが、うーん、ただ現代美術に値段が付いているだけではないか。ギャラリーには作家はだれもいませんでした。
 出品者の谷川よしみさんからもらったはがきに「売ると買うがテーマ」ってあったから、せめてオークションくらいやるかと思ったのにさ。
 中では、小粥丈晴+雄川愛の写真が面白かった。ビキニ姿の女性らがいる海辺が映っているのですが、よく見ると人形なんですね。(まあ、ベルナール・フォーコンあたりがやってそうな気もするが)
 で、ここで筆者がいいたいのはですね、なんで「最近の若いヤツ」の作品は、一部例外を除いてどいつもこいつも小さいのだ! カネがかかるのは分かるが、スケールの大きさに負けずに秩序ある世界を構築するのも実力だぞ! それとも、東京都現代美術館の「ささやかなラディカリズム」にあてられたのか?! もっと人をびっくりさせるようなヤツを見せてくれ!
 
 1月24日(水)
 なんだかパソコンの調子が悪いんだよなあ。写真を見ようと思ったら変色してるし……。
 時計台ギャラリーで春陽会道作家展。A、B、Cの3室を使っているにもかかわらず、作品が入りきれず、廊下にまで展示してありました。なかなか見ごたえがあります。評はあした(って言っても信じてもらえないかもしれないな)。谷口一芳さんと話しているうちに時計台の鐘が鳴り、道彩展まで到達できず。

 ものすごい人の数を画面に登場させる絵で知られる登別の矢元政行さん(行動展、全道展会員)から、2月6日〜15日に東京日本橋・ギャラリーツープラスで個展のはがき。ありがとうございます。でも経歴の欄に「たけしの誰でもピカソ出演」って書いてあるのってやっぱり笑えます。たまたま私は見てましたけど。ちゃんとメダル(=最高賞)をもらったのはえらい!(出演ということだと、札幌の道展会員茶谷雄司さんも出たことがあります)
 1月23日(火)
 申し訳ありません。きのうもさぼってしまった。藤本さんの報告ももう少し待ってください。
 やっと寒さもひと段落したと思ったら、こんどは雪。雪かきに50分かかりました。まあ、趣味だと思ってやらないと、やってられないですけど。

 ギャラリーたぴおで一原有徳「北海道の山」2。
 一原さんは、ご存知の方も多いと思いますが、小樽在住の全国的な版画家です。宇宙のような不思議なイメージの抽象作品が多いです。
 これは珍しい展覧会。というのは、一原さんは、まずめったに、現実の何かを表象した作品は作らないのですが、今回はずばり道内の山がモチーフなのです。
 樽前山、日高山脈、真狩岳など、マチエールは一原流ですが、形は現実の山に着想を得ています。それにしても、30点以上あったな。90歳とは思えぬ創作意欲には脱帽です。

 額賀氏の辞任さわぎで永田町はどたばた。おかげできのうは原稿が届くのが締め切りから25分も後。ひどい目にあいました。
 1月21日(日)
 芸術の森美術館へ。きょうは藤本和彦さんのワークショップというか、なんというか……。かなり風変わりな試みでありました。
 報告はあした書きます。すんません。
 有島武郎旧邸に行ったら、小生の朗読した、古幡靖さんのビデオが流れていました。恥ずかしい。自分があんなに早口だとは思わなかった。以後気をつけます。

 18日の項に書き忘れ。
 近代美術館の資料コーナーで、道立帯広美術館で昨秋行われた「北海道美術は何を記録してきたか」の図録を見ました。「北海道美術の100年」というテーマでふつう連想される展覧会というのは、林竹次郎「朝の祈り」や小川原脩「大北海道」を並べた名作選ではないかと思うのですが、帯広の展覧会は、行啓の記録画、居串佳一の戦争画、記録という意味で佐藤時啓や岡部昌生、池田緑の作品を並べるなど、きわめて意欲的な展覧のようでした。これは見に行くべきであった! 
 1月20日(土)
 昨日はさぼってしまって申し訳ありませんでした。映画の紹介も書けなかったし、ちょっと疲れ気味かも。

 大同ギャラリーでは16日から「お正月展」が開かれています。
 毎年、札幌の畑野天秋さんが呼びかけで若手の美術家が出品していますが、とくにグループとしての固定メンバーとか主張とかまとまりとかはなく、そういういい意味でいいかげんなところがこの展覧会の魅力かもしれません。

 19日はほかに、市資料館(大通西13)で、大谷女子短大出身の5人による油彩展「SHIROTEN」と、青坂龍子水彩展を見ました。前者では、加藤早苗さんの、おつゆがきを駆使した人物画など。宇田川麻美さん、瀬野ひろみさん、高橋唯佳さん、富永祐子さんも。
後者は、人物や静物はわりとよくある画風でしたが、「冬陽」「雪稜」といった、晩秋から冬にかけての風景画はなかなかものさびしくて良かったです。「夕映え」の微妙な空の色は、ドイツロマン派といった雰囲気?

 富士フォトサロン(北2西4。道庁赤れんが正面の道路です)の新年最初は札幌の谷本憲治さんが道内の滝などをモチーフに撮った「北海道 水紀行」。さすがに風景写真は定評があるだけに、勢い良く飛び散る水しぶきや、オリオンの傾きと流氷、群青の月夜など、美しい作品が並びます。ただ、キャプションは、文字が小さくて見づらいうえに、読んでも理解を助けない作者の感傷が目立ち、無い方がずっといいのにな、と思いました。
 入ったら、客が10人以上いて、ちょっとびっくり。写真は中高年齢を中心に関心が高いんですね。24日まで。

 パリ在住の吉田康子さん(全道展会友)から香りつきのかわいらしい版画が届きました。わーい、ありがとうございます。お元気でしょうか。

 それにしても19日は、フィリピンの政変だの奥尻町長逮捕だのあって、年明けで一番忙しかったぞ。センター試験は1面から消えてしまいました。
 札幌は、最低気温が8日連続で氷点下10度を下回りました。
 
 1月18日(木)
 休み。
 シアターキノに「議事堂を梱包する」を見に行きました。
 米国在住の世界的芸術家の夫妻クリスト&ジャンヌ=クロードが1995年、ベルリンの国会議事堂を布ですっぽり包むという壮大なプロジェクトを成功させるまでの記録映画です。クリストにちょっとでも興味があって、けれど実物は良く知らないという人には絶対おすすめ。フツーの人が見ても面白い映画だと思いますよ。
 くわしい評はあした書きます。

 ギャラリーユリイカで宮下章宏個展。
 宮下さんは、不思議で楽しい世界を絵に描きます。緑の多い場所を空想で描いた風景画なのですが、時々空間がゆがんで、地面が建物の壁になり、天井が地面になったりしますが、遠藤彰子と違って、陰影のほとんどない明るい世界です。人物はすべて点景の後姿ですが、ワンピースを着た髪の長い少女が必ずどこかにいます。
 右の「虹を見た日」は、中央に黄色いバベルの塔のような建物がところどころ壊れています。周囲には風力発電所のような風車が回り、四角形の虹が空を横断していますが、これは宮下さんが実際に見たものだそうです。 
 これらはすべて細いサインペンと色鉛筆(時に水彩を少し)で描かれたというから驚きです。1作仕上げるのに5カ月かかることも。
 ほかに、同題「虹を見た日」「広がる世界」「公園画廊」と小品を出品。
 宮下さんは函館在住、新道展会員です。

 さいとうギャラリーでは建築家5人の気ままな作品展。建物の水彩画や建築設計コンペに出した紙まで、統一のないところがユニーク。
 大丸藤井スカイホールでは、千田徳子さん主宰の「朱明会書展」を見ました。すべてかな作品です。表装はたった2点で、残りは額装。それはいいのですが、作品が小さすぎて、細い字が色紙のデザインに負けているのが気にかかりました。
 道立近代美術館では冬休み恒例「アミューズランド」を見ました。1,2をのぞいて作品にさわっていいというのは画期的です。というのも、音を出したり、手触りを楽しんだりする作品が多いのです。ちょっとICCっぽい感じもしますが、36歳の男が一人で見るより親子で行ったほうが絶対面白いと思うなあ。
 入ってすぐのところに、杉山留美子さんの絵が、覗き窓の向こうに掛けられていましたが、赤、青、黄の絵とも、まるで自ら光を発しているかのように鮮やかでした。

 ギャラリーミヤシタで伊賀信個展「2001space geometric」。平面上に、小さな角材のような木材を貼ることで作品にしています。方法論的には、石本本子さん(全道展会友)に似ていますが、もっと落ち着いた印象を受けます。木材の配置はウマイです。うますぎるくらい。
 中央にモノリスそっくりの黒い物体が置かれていて「なぜ、これがここに」と題されていましたが、2001年とはいえ、なぜ、これが、ここに…。

 
宮下章宏「虹を見た日」宮下章宏「虹を見た日」
 1月17日(水)
 時計台ギャラリー(中央区北1西3)で「第18回大洋会道支部展」を見ました。予定していたA、B室に加え、C室に小品を並べています。大洋会は、けっしてメジャーな公募展ではありませんが、今回はなかなかいい絵がありました。
 会のみなさんは私ごときのことをよく覚えていただいていて、ほんとに赤面というか、すっかり以前のことを忘れている私は恥ずかしいです。
 季刊の美術批評誌「てんぴょう」6号が届きました。筆者は今回、昨年、札幌のテンポラリースペースで開かれた池田緑さん(帯広在住)の個展について書いています。ただ、どうしたことか、会期が脱落してるなあ。
 ちなみに、道内のもうひとりの執筆者である吉崎元章さんは、佐々木秀明さんが石狩で開いた展覧会を取り上げています。この展覧会、私も見ましたけど、いま芸術の森でやっているのとは一味違いましたよ。
 よかったら買ってくださいね。札幌では、旭屋、紀伊国屋(オーロラタウン)、パルコ、アテネ書房、丸善南1条店(地下)、芸術の森美術館(ここはバックナンバーも)などで売ってます。1238円。
 未明、帰宅途中に街角の温度計を見たら氷点下12度。いつになったら寒さが緩むやら…。
 
 1月16日(火)
 午後5時まで新聞を読んで、出勤、外電面の担当でした。金総書記はやはり中国に行っていたようです。相変わらず昼間で氷点下7度くらい。かなり慣れてきましたけど。
 1月15日(月)
 休み。寒い日が続きます。長崎でも雪が積もったと報道されていました。皆さん、お風邪など召さぬように。小生は更新がなかなか進みません。
 1月14日(日)
 芸術の森美術館で3月25日まで開かれている「北の創造者たち2001」展は、出品者全員のワークショップやパフォーマンスがあります。2回目は古幡靖さん。12、3人が集まった中から6人がビデオ撮影にチャレンジしました。
 その後、芸術の森の南端にあるアトリエを借りている古幡さんのところにおじゃまして、彼のビデオに出演。といっても、有島武郎「惜しみなく愛は奪う」の一節を朗読するだけですが、こういう体験をするのは初めて。ちょっと緊張。
 この日の札幌の最低気温は氷点下15度、最高が同6・7度。古幡さんは雪まつりなど、冬の発表が多く、きょうで「古幡=寒い」のイメージが完全に定着してしまいました。
 1月13日(土)
 大通美術館ギャラリー(大通西5)で、全道展会員の水野スミ子さんの教室「グループ千」の展覧会と、長沼幸子個展を見ました。後者には呆然としました。理由はいずれ別項で書くかもしれません。大丸藤井スカイホール(南1西3)では陶芸の個展(わー、メモがなくて名前が分からない。ごめんなさい!)と中野邦昭さんの教室の合同展。前者は、天目茶碗、青磁、飴釉など多彩で、チャレンジ精神と、細かい部分にこだわらない大まかさがむしろ魅力的でした。
 1月12日(金)
 寒い!
 きょうは札幌の最高気温が氷点下10度以下でした。最低ではなく、最高気温です。昼間の気温が氷点下10度以下
 アートスペース201(南2西1)で「書と絵の五人展」を見ました。
 北海高校の先生方が毎年この時期に開いており今年で10回目だそうです。
 保原丹舟さんの書は、飄々とした筆遣いでした。「賢」「侃侃諤諤」など、肩の力が抜けた感があります。「墨戯」は、墨の字を縦長に、戯の字を三角形に書き、面白い造形を見せていました。「翼をください」は近代詩文ですね。
 堤〓(くさかんむりに九の字)野さんは墨象で、墨の色にはかなり工夫を凝らしているとお見受けしました。「風雪」は線のカーブが気持ちいいです。
 佐藤辰舟さんが俳句を、全道展でおなじみの川本ヤスヒロさんが油彩の小品を、松竹谷智さんが油彩や水彩の小品をそれぞれ並べています。

 12日の道新の後志・小樽版に、今年6月1日から7月22日に小樽の市立美術館と文学館が共同で開く「一原有徳ー新世紀へ」展の記事が大きく出ていました。一原さんは90歳で現役の版画家で、ついでに言うと小学館の「日本美術館」に作品図版が掲載されているただ一人の道内在住美術家ですが、写真で見る限りお元気そう。美術館と文学館の建物はかつて一原さんが郵便局の職員として働いていたところだということにも記事はふれています。

 刃物屋いとうさんという未知の方から美術展評の膨大なメールをいただきました。すべてテキストで、プリントアウトしたら12枚にもなりましたが、まだ読んでません。ありがとうございます。このページをどちらで知ったのでしょうか?

 1月11日(木)
 さいとうギャラリー(南1西3)の間瀬武新春日本画展を見ました。
 間瀬さんは近年名古屋のほうから札幌に転居され、一昨年には大同ギャラリーとNHKギャラリーで個展を開いています。今回はそれら旧作も展示されています。「梅香」など、太い枝はおおらかに、細い枝は緻密な描線が生かされています。「層雲峡」など道内の風景を題材にした作品もあります。
 近作は、鮮やかな色使いの「赤富士」など。右は、小樽の青山別邸新館の天井画なのだそうです。
 大正5年生まれとは思えぬ元気さでしたが、ここ最近風邪気味とのこと。お大事に。

間瀬武の天井画原画
 1月9日(火)〜10日(水)
 9日も休み。家族で実家に泊まりに行ったので、日誌は休みました。
 10日は仕事の前に、下の娘(4ヶ月)の検診のため保健所へ。
 時計台ギャラリーにも行きました。森山季紫鳥さんなどの日本画グループ「美萼会」は32点すべてが植物を題材にしていました。野口裕治さんのインスタレーションは、番号を打った紙片を床にまいて日々の変化を見るというもののようでした。
 北海道教育大札幌校日本画研究室の学生さんたちによる「にかわ絵展」は、なかなかフレッシュな作品がそろいました。中には「これじゃエゴン・シーレだよ」「この平面インスタレーションはどっかで見たことあるぞ」てな感じのもありましたが、若いうちはどんどん影響されればいいと小生は思います。そのうち自分の個性を出していけばいいんじゃないでしょうか。小崎正史さん「砂漠」今橋香奈子さん「個性」なんて、若いうちにしかかけない絵ですね。
 ちょいと注目したのが一昨年の道展で高校生ながら入選を果たした谷地元麗子さんの「習作」で、和服の平面性を生かした画面構成を試みています。
 1月8日(月)
 休み。朝7時まで起きていたおかげで、起床は夕方4時。うーん、完全に生活リズムが狂ってしまった。きのう書き始めた「北の創造者たち2001」の評も、鴻上さんのぶんしか書けなかった。やれやれ。
 1月7日(日)
 休み。寒い一日。昼でも氷点下7から9度。
 芸術の森美術館で行われている「北の創造者たち2001」は、出品者7人全員が会期中にパフォーマンスやワークショップを行うという点でもユニークな展覧会です。きょうはその第1回。川上りえさんのワークショップ「作家と観客のコラボレーション」が行われました。一般客も、穴のあいた鉄板に針金を思い思いの形に通すというもので、シンプルだけどやってみるとけっこう楽しい。出品者の鴻上宏子さんもやって来て針金を挿していました。
 なお、芸術の森の中にある「有島武郎旧邸」でも、古幡靖さんが作品を展示しています。土、日、祝日だけのオープンですが、お見逃しなく。
 帰りは、真駒内駅からのバスが行ったばっかりで、仕方なく乗ったことのない路線(豊平清掃事業所行き。終点までバス停が9つしかない変わった系統)に乗って「緑ヶ丘中央」で下車して自宅を目指したら、道に迷って25分かかった。凍死するかと思った(ちょっと大げさ)。
 徹夜して北の創造者たち2001評を書いたけど、まだ川上さんだけ。レイアウトも凝りすぎて見づらくなってしまった。
雪の有島武郎旧邸

雪の有島武郎旧邸。

 1月6日(土)
 テンポラリースペース(中央区北4西27)に畠山哲雄さんの「夕張・冬」を見に行きました。
 2年前にも畠山さんのスケッチ展がこの会場で開かれましたが、その直後の99年に亡くなられました。今回は、夕張市美術館が所蔵する畠山さんの油彩から、1960年代に制作された冬の絵ばかり10点を展示しています。
 道内の方はご存知かと思いますが、50年代から60年代の夕張は人口11万人を超えていたそうです。しかし、相次ぐ炭鉱の閉山で、昨秋の国勢調査では1万5千人を割ってしまいました。
 畠山さんは、そんな夕張のマチを、素直に描き続けてきました(この空間は現代美術の個展が多いので、普通の絵が掛かっているとなんだか妙な感じです)。
 画廊主の中森さんから興味深い話を聞きました。つい何日か前に、有名な詩人の吉増剛造さんがこのスペースを訪れたそうなのですが、彼は一度だけ生前の畠山さんに会っているそうです。畠山さんに夕張を案内してもらったのですが、そのときに受けた印象が、近年の絶唱である詩篇「石狩シーツ」を生んだというのです。それを聞いて「石狩シーツ」を読みたくなりました。
 それにしても、現在もある風景は「早春の木」(66年)だけで、残りの9点に描かれた選炭場や発電所、炭住などは一切現存していないそうです。深い感慨を覚えます。
 備忘として、展示作品名を挙げておきます。
 「工場早春」(66年)
 「選炭場から社光」(63年)
 「工場・冬」(62年)
 「寒い冬」(60年)
 「雪の炭鉱町」(62年)
 「工場早春」(66年)
 「ズリ山・冬」(63年)
 「冬の発電所」(67年)
 「残雪と駅舎」(60年)

 7日の道新によると、東山町に6月、写真資料館ができるそうです。東京でモール写真図書館を開いている津田基さんが開くそうです。
 また、道立帯広美術館の入場者がそろそろ通算30万人に達するそうです。
 夜、大雪。タクシーが家の前までたどりつけず、雪をこいで帰ってきた。
 
畠山哲雄作品

下は「早春の木」。上の題をメモしてくるのを忘れましたが、たぶん「雪の炭鉱町」。斜面に張り付く炭住がすごい

畠山哲雄「早春の木」
 1月5日(金)
 5日の道新によると、国展会員で、彫刻家の秋山沙走武(すすむ)さんが亡くなられたそうです。70歳。乾漆という技法で上品な人体を作る人でした。小生はほとんどお話しした記憶がありませんが、全道展の彫刻部門では力のあった人らしく、北の彫刻展にも毎回出品していました。ご冥福をお祈りします。
 世の中が動き出しているらしく、都心に向かうバスの所要時間が日々延びて行きます。
 1月4日(木)
 ギャラリーたぴおで、年末年始恒例「異形小空間14人展」へ。ギャラリーを利用している札幌・江別の14人が出品しています。ギャラリーの竹田さん、あけましておめでとうございます。
 画廊の中央にでんと塔のように座っているのは平松和芳さんの「エロス」(写真右上)。平松さんには珍しくモニュメンタルな(?)、大き目の作品であります。てっぺんにサルノコシカケが乗っかっているのが面白い。鉛などの導入はいかにも平松さん。珍しいと言えば、パリのモンパルナスを題材にした絵も出しています。
 七宝作家の神谷ふじ子さんは、金属板を幾枚も重ねた、いつもの深みある立体作品。ただ、今回は、斜めに傾けてある分、不思議に動感が出ています(写真右下の手前)。
 川村雅之さんは毛皮のような布をベースにした平面作品(写真右下の奥)。樹脂を群島のように何ヶ所も丸く散らし、それぞれの周囲を、タイルの目地を埋めるシリコンが、チューブからほとばしったばかりの絵の具のように渦を巻いています。
 市川義一さんのコラージュは、NASAの太陽の写真を張ったもの。紙の表面を、太陽光で焼いて、穴を何カ所も並べて空けているのが効いています。
 丸勢文現(まるせ・ふみあき)さんは細長い板の表面に絵の具や砂を散らしています。廃品利用のオブジェを作るM・ババッチさんは、例によってユーモラスな「カバノタツヒコ」「ハンマカモ」。山岸誠二さん「上ヘムカウコト 下ヘムカウコト」は陶のオブジェと古い鉄線や木の棒を組み合わせた縦長の立体。藤川弘毅さんは古い木の窓枠と滑車でしょうか。
中村友三さんも廃品かと思ったら実は新品で、水道のバルブを使って十字架みたいにつなげていました。
 凹凸のあるキャンバスを自作する毛内康二さんは、白や緑の原色を躍らせたそのキャンバスを雲形定規のような形に切り取り、隙間を空けて何重にも重ねています。大林雅さん、古賀和子さん、兵藤いづみさん、竹田博さんは絵画です。大林さんの絵って、異様な宇宙生物みたいで、どうしてこういうものを思いつくんだろうっていつも思う。
 こうしてみると、無題の作品が多いですね。13日まで。
異形小空間14人展の平松和芳作品異形小空間14人展・神谷ふじ子作品
 1月3日(水)
 きょうは2面。正月なのでほんとに静か。ニュースが入ってこない。
 たくさんの方から年賀状をいただきありがとうございます、って、ここで書いても仕方ないか。
 ぜんぜんアートと関係ない話ですが、きのうケーブルテレビで見た、手品のタネ明かしの番組は面白かった。
 上の「過去の日録を見る」のリンクが作動してなかったので、直しました。しつこいようですが、林亨さんの展評、一部表現を改めました。
 1月2日(火)
 仕事始め。21世紀初の1面担当。
 さいきん「ART AT THE TURN OF THE MILLENNIUM」(TASCHEN)を、超スローペースで読んでいます。素人くさい言い方をすれば、やっぱり現代美術はムズカシイ。
 1月1日(月)
 あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。
 札幌は吹雪の新世紀でした。
 


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