手のひらの汗 |
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前回,いきなりワケの分からないお話をしちゃったね. さて経路がわかったところで,汗ってどうやってできるのってお話だよ. |
エクリン腺の構造 |
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ここでエクリン汗腺の構造をもう一度見ておきましょう.エクリン腺は皮膚のちょっと深いところ,真皮って部分にあるんだ.そこに汗の源をつくる分泌部が,コイル状にくるくると巻きついた感じであって,その端っこが延びて皮膚の表面まで到達し,開口している(導管部).交感神経の末端は汗腺の分泌部を取り巻いているんだね. | |
図.エクリン腺の分泌,腺で分泌された等張の源汗は導管部でNa,Clが再吸収されて低張になる (引用:大橋俊夫「汗をかいた後のビールはなぜおいしいのか」) (汗腺の絵は,文献にあった中野朋彦さんのイラストを利用させていただきました) |
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汗の産生 |
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脳から神経を通って汗を出せっていう命令が汗腺まで伝達される.するとエクリン腺の近くでは,交感神経末端からアセチルコリンが放出されるんだ.すると汗腺細胞(基底細胞)の外側の膜(基底膜)がNa+を通しやすくなる.そのままNa+が細胞内に流れ込む.すると今度は,それをポンプ作用で汲み出す酵素(Na,K-ATPase)が働いて,Na+は細胞と細胞の間の細い管(細管)に分泌される(ナトリウムポンプ).今度は電気的平衡を保とうとしてCl-が細胞外に引っ張られる.ここでNa+とCl-は結合してNaCl,つまり食塩になる.その結果,導管の底の方では浸透圧が高くなり,それを補正しようと水分まで染み出てくるってワケだ.これで汗の元(源汗)ができ上がる. | |
では,この水の元はなに?..それは血漿,つまり血球のない血液なのですね.だから血液と同じ浸透圧を持つそうだ.この源汗,導管を通って皮膚の表面に到達するまでに,Na+の再吸収やK-の分泌が起こり血液より浸透圧の低い汗となる. 汗腺は副交感神経との二重支配ではなく,交感神経だけでコントロールされているんだね.しかもコリン作動性.この汗の産生原理を知ると,交感神経でも皮膚の交感神経だけがコリン作動性であるのも,納得できる気がするよね. |
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図.エクリン腺の分泌,再吸収様式の模式図 (引用:大橋俊夫「新しいタイプの局所発汗量連続記録装置の開発とその医学への応用」) |
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(参考:大橋俊夫「汗をかいた後のビールはなぜおいしいのか」「新しいタイプの局所発汗量連続記録装置の開発とその医学への応用」,小川徳雄「新 汗のはなし」) | |
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発汗漸減 |
汗の末梢のお話をする場合,もう一つつけ加えておきたい現象がある.それは汗をかきつづけると,汗は少なくなるの?なんて,そんな話...手のひらとからちょっと,汗全体のことだけど.. 気化熱の話,前に少しだけしたよね.汗は,この気化熱を利用して体温が高く上がりすぎないように調節しているってこと.さて,この水分の気化って現象.周りの湿度に大きく影響されるんだよね.理科の時間を思い出して欲しいんだけど,飽和水蒸気量っての,覚えてるかな? 空気中に含むことが出来る水分の量って,温度によって決まってるんだ.気温が高いほどたくさん水を含めるんだけど,それでも限界がある. 手のひらにラップを巻いて密封してやる.ちょっと温めてやると汗が出てきて,その周りは水蒸気でいっぱいになり,すぐ飽和してしまう.すると皮膚(角質層)がふやけ,汗腺の導管の終末部が塞がってしまう.こうなったら汗は出てこれないってワケ.皮膚が濡れた状態で1時間もすれば,この発汗漸減(hidromeiosis)って現象は起こるのだそうだ. さて,真夏の暑い日,ジメジメして湿気が多く,なかなか汗が渇きにくい時あるよね.流れ落ちるような汗では熱を奪えない.となると,かいてもムダってことで,脱水を防ぐためのよくできたしくみだとも解釈できる.なんだかすごいよね. |
(参考:小川徳雄「発汗の機序」) |
皮膚表面の汗って,どんな感じで出るの? みなさん,あまり見たことないよね.ネットに動画を出してる研究室(小川徳雄先生のみえた教室)があるから,そこを紹介して,今回の〆とさせていただきます(リンク切れしてたらごめんなさい). 愛知医科大学医学部生理学第2講座 http://www.aichi-med-u.ac.jp/physio2/v-micr.htm 汗腺でのNa+話,それだけちょこっと覚えておいてね.次回は,精神性発汗の特徴についてお話します.それでは... |
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