北欧神話−Nordiske Myter

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「ヒュミルの歌」2

チュールさんちの愉快なご家族。 



 と、いうわけでアスガルドをあとにした二人は、さくさくとヒュミルさんち(チュールの実家)へと向かいます。実家なんで、道に迷う心配なし。
 着きました。(早ッ)
適当。 ●ひとくちメモ● ”天の縁”とは?

 北欧神話の創世神話では、世界(ミッドガルド、またはミズガルズ)は、原始の巨人ユーミルを解体して作ったものとされています。その中でも、天は、頭蓋骨のてっぺんの丸い部分を持ち上げて作ったものとされ、大地の「覆い」のようにとらえられていました。
 天の縁、とは、頭蓋骨の断面、大地の果てのことです。

 チュールにとっては久々の実家です。ちょうど気難しやの父は外出中。しかし、家には母のほかに祖母もいました。
 この祖母、どうやら孫が気に入らないご様子。なんと頭が九百もあるのです、九百。ギリシア神話のヘカトンケイルなんかメじゃありません。

 トール「なんか嫌われて無いか。」
 チュール「ああ…、あの人は昔かたぎなんだ。おばあ様は俺の頭が一つしかないから弱そうだってな。」

 そんな中、チュールの母だけは、息子を優しく出迎えてくれます。金色の服なんか着てかなりケバケバしいですか、まぁオバサンって概してそんな感じですからね。チュールさんの実家って何か由緒正しき名家っぽいので、みすぼらしい格好してたら、頭が九百ある姑さんにケチつけられるってのもあるんでしょう。

 チュール「ってわけで母さん、鍋もらうにはどうしたらいいと思う?」
 チュール母「むずかしいわね。あの人ったら、ケチなんで大抵の客には敵意剥き出しなのよね。いきなり攻撃しだすかもしれないから、あんたたちを鍋の下に隠しておくわね。」

 と、母の助言で、チュールとトールは隠れてスタンバイ。

 トール「おい、お前の親父ってどんななんだ。」
 チュール「…見ればわかる。俺とはあまり似ていないんだ。」

 果たして、狩りから戻って来たチュールの父・ヒュミルさんは、とっても醜い、バカでっかい巨人さんでした。
 凍りついた鬚がツララになって、揺れてかちんかちん音をたてています。

 チュール「な?」
 トール「………。(こいつ、母親似だな。あぁ間違いない)」

 チュールの母は、夫を迎えて言います。

 チュール母「おかえりなさい、あなた。長いこと家を開けていた息子が帰ってきていますよ。お友達のヴェーオルさん(トールの別名)も一緒です。御覧なさいな、破風の下の円柱の影に二人腰掛けてますよ。」

 ちょっとムカっときたのか、ヒュミルさんの眼光が鋭さUP。振り向くなり、いきなり柱が砕けて梁が折れ、天井が落ちてきたのです! スゲエ。どんな眼光ですか。目からビーム出てます。

 トール「お、お前の親父はいつもあぁなのか(ドキドキ)」
 チュール「…だいたいは…。」

 トールは、あのビームに耐えてきたならチュールが強いのも当たり前かな、などと妙に納得してみました。
 機嫌の悪いときに声かけるだけで家が破壊されます。ヤな亭主です。亭主関白とか通り越して亭主が神です。天井から降って来た鍋が床に転がって、一個だけ、いちばん丈夫で大きなものだけが壊れずに済んでいました。

 このとき、チュールひとりで帰省してたら、親父さんそーとー激しく折檻とかしてたと思うんですよ。「お前のような奴に家は継がせられんわッ! なっちょらん!」・・・とか。親父さんも、どうやら息子があんまり好きじゃなかった様子。
 しかし、巨人泣かせのトール(強いおともだち♪)が一緒だったので、取り合えずは穏やかにことを進めようとします。トールは最強武器ミョルニルを装備してますし、本気で戦ったらマジヤバですよね。

 で、とりあえずもてなしとして、ごはんを準備。
 牛三頭用意して、トールはそのうち二頭たべました。
 食べすぎだーー!!
 残り1頭をヒュミルさんとチュールが…。ヒュミルさんはどケチなので、トールのあまりの食いっプリに、自分ちの食料を全部食われてしまうのではないかと思い始めました。
 そこで、明日は海でとれたものを食べよう、と言い出します。要するに釣りです。

 トール「餌は?」
 ヒュミル「家畜のところへ行って、家畜の餌でもとってくればいい。」

 とことんドケチです。
 しかしトールはそういうのがキライなので、ヒュミルさんちの放牧地へ行って、牛の餌じゃなく牛の頭をねじり取って来てしまいました。

 ヒュミル「……。ムチャクチャやがな…。」

 まァそんなわけで、牛の頭をエサにして、トールとヒュミルは磯釣りをはじめます。
 チュールはお留守番。
 果たしてこのあと、一体なにが釣れるのか…?

−続く



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