フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第8章
Kahdeksas runo


 さあ、ここまでヒドイ目に遭ったらワイナミョイネンは真っ直ぐ家に帰った、と誰もが思うでしょ?
 ところがどっこい! 違うんですよねえ。なんとジジイ、少し行ったところで、道端に美しい女性がいることに気が付いて邪まな気持ちを起こしてしまうんですよ。
 相手は、虹の端に座って織物をしていたポホヤの娘。
 うーむ、どうもポホヨラには、ふつうの(魔法を使えない)人間は、いないようですなあ。

 ジジイは、死にそうな目にあったこともスッカリ忘れて娘に求婚します。
 「ヘイ娘さん、わしの馬に降りてこんかね。わしかスッゴイ魔法使いなんじゃぞい。お前さんに楽さしてやるわい。わしの嫁にならんかね?」
 初対面でンなこと言ってるわけですから、ジジイ、無茶苦茶です。当然、相手の娘さんが首を縦に振るわけもなく。

 しばらくの押し問答の末、娘は、「じゃあ、私の言うことが出来たらお嫁さんになってあげるわ」と、絶対に出来そうもない無理難題をふっかけます。けれどワイナミョイネンもさすがは知恵者、最初の2つは、難なくこなしてしまいました。
 最後に娘は、ある条件を満たす、特別な船をつくるように言います。ジジイは自信満々、「そんなのカンタンじゃわい」とばかり、はりきって船作りに取り掛かりました。
 しかーし。そう簡単にはいかないのが世の常。
 求婚者や家族に3つの問題を出す物語は世界各地にありますが、そーいうのは、たいてい3つめ、最後の問題がネックになっているモンです。
 悪霊の仕業で(それって自分の不注意を他人のせいにしただけちゃうんかい)手を滑らせたジジイ、斧でサックリと膝を切ってしまいました。
 「はああ! 何すんじゃ、この斧はッ!!」
ワイナミョイネンは傷を塞ぐ呪文を唱えようとしたのですが…ド忘れなのか、老人ボケなのか、なんと大切な呪文の一部が思い出せない!!

 大ピンチです。
 血はどくどく出るし痛いし、まったく馬鹿もんです。真っ直ぐ家に帰ってりゃあ、そんな目に遭わずに済んだってぇのにねえ。なにやってんだか。
 しかも、ジジイ、またも泣く。
 いくら痛くたって泣きすぎだ、あんた。泣きながら、見たこともないジイさんがいきなり家に入ってきて、「血止めの呪文を知らんかのう」なんて言ったって、家の人はビビるだけでしょうよ。

 このあと、足から血をぼたぼた落としながら、ワイナミョイネンは、血止めの呪文を知る人を探し、村から村をさすらい、ようやく、1人の老人のもとへとたどり着くのでありました。


{この章での名文句☆}

「創造主(つくりぬし)の三つの言葉で
深い起源(おこり)の言葉を唱えれば、
さらに大きなものもせき止められ、偉いものも倒される。」



自らの怪我を治す呪文を探すワイナミョイネンに、人間の老人が言う言葉。
その呪文さえあれば、怪我を治すことは出来るが、
同時にワイナミョイネンのような老賢者を倒すことも出来る―――という暗喩。



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