第7章
Seitsemäs runo
海に落とされたワイナミョイネンは、まだ生きていて、一週間以上も海を漂っていました。
死なないのが半神たる由縁? それにしても、普通は死ぬでしょうよ。
漂ううちに、ジジイはヘンなことを考えはじめます。「陸地に家は建てられても、海ん中はムリじゃよなあ…。居間が水の中じゃあなあ」
おいおい、あんた陸地に泳いで帰ろうとか思わんのかい(笑)
そうこうして漂っていたジジイを助けたのは、どこかで出会った、イカした鷲でした。「どうしたい、ジイさん」
そう。彼は、第2章で、ワイナミョイネンが白樺を切らずにおいていてくれたことに、いたく感動していた、あの大鷲。
ワイナミョイネンが涙ながらに海を漂流することになったいきさつを話すと、鷲は、「それなら私が運んでやろう」とばかり、彼を水から掬い上げ、手近な陸まで運んでくれました。RPGでも、恩売っとくと後でいいことがあるモンですよね?
ところが、ひとつ問題がありました。
陸には上がれたモンの、そこは、見たこともない荒野―――魔女ロウヒの住む、ポホヨラの地だったのです。
なお、ワイナミョイネンが行こうとしていたポホヤっていうのは、ポホヨラと同じ場所ではあるのですが、どうも、京都と奈良くらいの違いがあるようです。
え? なに、わからんって?
私にもよくわからん。まー地続きではあるようだ。
迷子になって、ずぶ濡れのハラペコで、浜辺でワイナミョイネンは泣いていました。
ジジイが途方に暮れて泣くんですよ。なんか美しくないですよねぇ?(ヲイヲイ)
その泣き声を聞きつけたのが、魔女ロウヒの娘。「お母さん、誰か泣いてるわよ?」ロウヒも耳をすませます。「うむ。これは、どうやら大人の人間のようだねえ。」
そこで行ってみると、泣いていたのは、なにやら異国風のジイさん。「あんた一体どこから来たのかね。どうして泣いているのかね」
問われて、ワイナミョイネンは、自分が異国の地に来てしまったことや、ここは自分の住んでいたカレワラとはゼンゼン違うといったことを、ひたすら愚痴ります。
それで、ロウヒはピンときました。「このジジイ…ワイナミョイネンだね。」
どうやら、彼の名前は、ここ、ポホヨラでも知れ渡っていたようです。
あとあとのことを考えてみれば、ロウヒは暗きポホヨラで一番の魔法使いバアさん、ワイナミョイネンはカレワラで一番の知恵ある魔法使いなわけですから、北と南の大魔法使いどうしなわけです。この時はお互い、初対面で、まだ何の因縁もなかったようですが…。
ワイナミョイネンを連れ帰った魔女は、もてなそうとしますが、ジジイはどーしても故郷に帰りたいの一点張り。バアさんが気に入らなかったのか…うん、きっとそうだ。「わしはピチピチぎゃるに会いに来たんじゃ。こんなおっかない魔女ババアなんざ、いらんわい。」
けれど、魔女もなかなかワイナミョイネンを帰そうとはしません。「あんたは、高名な魔法使いじゃろう。サンポが造れるかね? もし造れるなら、私の娘をやるよ。そして、あんたをここから帰してやろう。」
なんと、魔女はこのジジイと取引をしようというのです!
老獪者どうしの駆け引き。しかしワイナミョイネンはこう言います。「わしには造れん。だが、わしの知り合いに、イルマリネンというヤツがおって、そいつなら作ることが出来るはずじゃ。なんせヤツは天の覆いを造ったくらいの腕利きじゃからのぉ」
…この世界では、どーやら空というものは「大きな蓋」みたいなモノだったようです。まあ北欧の空って年中灰色に雲ってますからねえ。そんなふうにも見えたかもしれません。
こうして、何も知らない友人を取引きのダシに使ったジジイは、なんとか恐ろしい魔女のもとから脱出することに成功します。
が…
好色エロジジイが、そうそうカンタンに女のことを忘れるハズもなく。
この物語は、さらに色んな人物を巻き込んで、ホームドラマばりに入り乱れていくのでありました。
次章、「ワイナミョウネン旅情編・2 色気娘の罠、惚れた男のヒサンな末路。〜虹の彼方に〜」120分まるまる魅せます。
乞うご期待!(どんなだよ)
{この章での名文句☆}
「もしあんたが頭をあげて、その首を伸ばすなら、
きっと破滅がやってくる。不幸な日が襲うだろう」
ポホヨラの女主人がワイナミョイネンを解放してくれるときに言うセリフ。
ワイナミョイネンは、ポホヨラでは出された食べ物を絶対に食べようとしないし、
しかも帰るとき振り返っちゃダメなんて、ポホヨラってまるで死者の国ですねえ。