第40章
Neljäskymmenes runo
はてさて、これでいよいよポホヨラへ乗り込む! と、思うでしょう?
ふっふっふー。どっこい、それが違うんですねぇ。彼らがマジメに真っ直ぐ目的地へ向かうはずないじゃないですか(笑)。
船の上ではどんちゃん騒ぎ。侵略に行くとは思えんほど賑やかに、船は波をけたてて進んでいきます。岬の先では乙女たち、「まあ、あの賑やかで素敵な船は何でしょう」と、うっとり耳を傾けます。
…お嬢さん。それは今から戦争に行く略奪船ですので気にしちゃダメです。
何かもう、ジジイとかかなりのテンション高さで、歌いながらメチャ楽しげにポホヨラへ向かって進んでいきます。レンミンカイネンも、呪文で船の障害を取り除いたりと大活躍。
しかし、あるところまで進んだところで、順調な航海を妨げたものがありました。
「ん? 船が止まった…。」
イルマリネンとレンミンカイネンが櫂を水中に差し入れ、かき回しますが、船はビクともいたしません。
「おっかしいのぅ、どうしたモンかの。」
「…ああっ?! なんだこりゃ」
水の中を覗き込んだレンミンカイネンはびっくり。何と、そこにいたものは、巨大なカマス(魚)だったのです!
よりにもよってカマス? なにゆえ?
魚へんに師匠の師の右側を書いて、カマスと読む。漢字もふつーに出てきません。これが魔女ロウヒの寄越したものだったのか、たまたま通りすがりにそこに居たものなのかは分かりませんが、あまり攻撃的ではない様子です。ただ大きすぎて邪魔なだけ。
「おい、ちょっと斬ってこい」
と、言われてレンミンカイネン。剣振りかざしますが…どぼーん!!
マトモに水んなかに落ちてしまいました。それはそれは、小気味よいがまでに。
「ったく…しょうがないな、お前は。一体、何をやっている」
呆れたイルマリネン、落ちたレンミンカイネンの髪をガッキと掴んで水から引き上げます。
おいおい、腕を掴むとかさ、せめてもーちょっと優しくしてやんなよ。
「仕方ないな。こんどは俺が」
ズブ濡れのレンミンカイネンをそこらへんに投げといて、イルマリネンは、力任せに剣を叩き卸しますが、カマスの骨は固くて、剣のほうが粉々になってしまいます。
「……。」
どないな硬い魚やねん、それは。
最後にやっぱりワイナミョイネン。前のふたりの失敗を、鼻で笑い飛ばしつつ自ら剣を抜き放ちます。ジジイと剣。どう考えても「年寄りの冷や水」だ…。(笑)
「まったく、どいつもこいつも。揃いも揃って嘆かわしい。」
とかなんとか言って、自分も失敗してたら袋ダタキですが、ジジイは何と余裕こいて巨大ウオをさっくり3枚卸。しかも、その勢いで魚を甲板へ跳ね上げます。
スゴい? ジジイ。
急に若返ったって感じですな。
「むふふん。どーぢゃ、カッコええじゃろ」
「(船じゅうから)わーー!! ワイナミョイネンさま、カッコイー!!」
「(イルマリネン&レンミンカイネン)………。」
ジジイは言います。
「さぁ皆もの。船を岸につけろ。この魚を料理するのじゃ! カマスの活けづくりにカマスの煮物、カマス雑炊にカラアゲ・天ぷら、カマスづくし立食パーティの始まりじゃぞい!」
さすがですな、倒した魚を食事にするとは。
かくして、敵陣を前にして、彼らは腹いっぱい美味しいご馳走を食べましたとさ。カマス料理。
腹ごしらえも済んだところで、ジジイは、残された巨大な骨を見て思案します。
「ふーむ。何か勿体ないのぅ、このホネ」
いたづら心がぴくぴくする、というか、物珍しい素材を見ると、つい工作してしまいたくなるのですな。その気持ちは分かりますよ。プリントの白い部分見るとついつい落書きしてみたくなるモンなんですよねぇ。むふ。(それはお前だけだ。)
ジジイは、通りすがりのイルマリネンに声をかけて、聞いてみました。
「のう、この骨から造るとしたら、何がええかのう。」
「はあ?」
イルマリネンは、鍛冶の匠です。
「そんなもん、何にもならんだろう。ただのクズだ」
彼は、金属じゃないモノには興味がないのです。鍛冶屋だから。
「ふーむ…。しかし…。あっそーだ、カンテレなんかは、どうじゃろう?!」
カンテレとは、フィンランドで使われる民族楽器です。弦楽器の一種で、カンテレタルという演奏で使われます。こいつを使って呪歌を歌うと、効果30パーセントUP!(ほんまかいな)
この様子を見ていた陸の人々が、何だ何だと集まって着ました。子供も大人も、男も女も、物珍しそうにカンテレを弾こうとしてみます。
しかし、誰にもこれを弾くことは出来ませんでした。
…大地のトゥーラですか。(ドラクエ7)
「ったく情けねぇなあ皆して! ここは、オレが決めるぜ!」
と、どこかの大剣振り回す青髪の戦士さんのようなことを言いながらカンテレを手にしたレンミンカイネンも、結局は弾けずじまい。ジジイは呆れてしまいます。
「ううむ。誰も弾けんとはのー。いかんのぉ。そうじゃ、これをポホヨラに送ってみればどうじゃろう。」
自分で作ったんだから自分で弾けよ、っていうツッコミは駄目なんでしょうか。ジジイは早速、敵陣に塩ならぬ魔法楽器を送り届けさせます。
これってイヤミじゃないんでしょうか。
自分の作った楽器の素晴らしさをひけらかしたかっただけ、っていう気が…しなくもない。
さてもポホヨラでは、これを挑戦と受け取ったのか、住人たちはこぞって演奏に挑戦します。魔女ロウヒ自らカンテレを手にしてみますが、やはり、演奏することは出来ません。それどころか耳障りな音ばかりが発生し、しまいには、盲いた老人(マルカハットウ?)がヒステリー起こして怒鳴りだしてしまいます。
「エエ加減にせんか、そんなワケわからん楽器なんぞ、とっとと送り返してしまえ! 昼寝も出来んじゃろうが!」
ごもっとも、とばかり、人々はカンテレをワイナミョイネンのもとへ送り返し―――、
ご満悦のジジイは、自らの作り出した魔法楽器を構え、そして、ついにポホヨラ攻撃に移るまでありました。
果たして、その方法とはいかに?!
>>次号へ続く!
{この章での名文句☆}
刀で海へ斬りつけた、船腹の下へ突き入れた。
水から水中に転落し、拳から波へ突入した。
えらい派手に落ちてますな…レンミンカイネン。おもろすぎ。
(この時、さりげに横に立っていたジジイが足引っ掛けたりしてると、なおグッド。)