フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第38章
Kahdeksasneljättä runo


 「女はナマに限る」。
 ジジイのそんな言葉に何かが目覚めたのか、イルマリネンは、あれだけ苦労して創りあげた○ッチ…じゃない、黄金の女性像を海に投げ捨て、橇を走らせます。目指すはポホヨラ。失った前妻の実家です。
 彼は、妻の死を報告に行ったのでした。

 娘が死んだことを聞いたロウヒは、さすがに落ち込みました。だってまだ新婚ですもん。
遠い異国で、娘は幸せに暮らしていると信じていたのに…!(昼ワイド調)

 「なんてことだい。あんたなんかに娘を任せたあたしが馬鹿だったよ!」
けれどイルマリネンは、そんなロウヒの言葉も聞いちゃいねェ。
 妻を無くしたので、ロウヒの2番目の娘を嫁に寄越せと言っています。もはや、なりふり構ってません。
 「冗談じゃないよ。あんたは、またその子も殺すつもりだろう。一体どういう了見だい?! あんた、娘をどうしちまうつもりなんだね!」

 イルマリネンの妻を殺したのはクッレルボなんだし、そのクッレルボがキレたのは妻自身のイタズラのせい。言ってみりゃア、被害者の自業自得です。イルマリネンは悪くないじゃない…と、思うのですが、そんな理屈、子供を無くした親には通用せんですな。
 魔女でも、親としての愛情は持ってるもんなんでしょう。

 構わずイルマリネンは家の中に踏み込み、前妻の妹を見つけて求婚します。
 「あんた、姉さんの代わりに俺の妻になってくれ。」
ムチャクチャです。こういう時、基本が朴念仁な男は手順というものを知りません。
 姿は前妻に似ているものの性格は正反対な妹は、口をとがらせ悪し様に返します。
 「イヤに決まってるでしょう。あんたなんかのとこへ行ったら、あたしも姉さんみたいに殺されちゃうじゃないの。」

ひでぇ言い草だ…。
 そんなひでぇ言い草も、イルマリネン、全く聞いちゃいません。ただただ、目の前にいる娘が欲しいだけ。
 娘を掻っ攫い、そのままポホヨラから逃亡。

 …イルマリネーン! 戻って来い、かむばぁっく!

 うわーん、どんどん大変なことになってます。イルマリネンがレンミンカイネンと同じことを! 暴れる娘を押さえつけ、いやらしいことなどしつつ家路を急ぎます。しくしく。
 しかし娘のほうも諦めが悪いというか何というか、「ウサギの嫁になったほうがまし」だの、「キツネの口のほうが愛らしい」だの、グチり続けました。イルマリネンのほうも、なんか口元がピクピクしてます。

 なんか、この娘さんは、ムサい男が嫌いだったらしいですナ。…分からんでもないですがね、その気持ちは。

 さて、家の近くまで戻って来たイルマリネンは、橇を止め、一休みしようと仮眠を取ることにしました。ほんのひと時のことです。けれど、疲れは大きく、思っていたより深く眠りこんでしまいました。
 気が付くと、娘さんは通りすがりの男ひっかけて楽しいことを。(間接的表現)
 おいおい、この娘、口が悪いだけじゃなくてそっちもヤバいのか? 実はイケイケだろう! そうだろう!
 「こんな女はダメだ!(彼はどうやら純情派好みらしい) ええい、こうなったらどうしてくれよう。そうだ、カモメがいい。ぎゃあぎゃあ煩いのがお似合いだ!」
 さすがに自ら手を下して殺害することはしませんでしたが、それにしたって、攫った女が自分の思いどおりにならないからって鴎にしてしまうなんて…。以前のイルマリネンは、こんな短気な男では無かったはずです。

 やはり色恋沙汰は性格を変えるものなのか。

 ひとり、とぼとぼと戻って来たイルマリネンを見つけたワイナミョイネンは、怪訝に思い、訊ねます。
 「お主、どうしたんじゃ。女は?」
 「…ありゃダメだ。やっぱり、俺には前の女房じゃなきゃ駄目なんだ…(涙)」
暗い気持ちでワイナミョイネンに打ち明けるイルマリネン。もしもこの時、ロウヒがもう1人の娘を気前よく送り出していたなら、また話の流れは変わっていたはずなのですが。
 友人の切実な悩みを聞いたワイナミョイネンは…。

 >>次章へ続く!



{この章での名文句☆}

出て行け用なし、我が館から、
見知らぬ人よこの扉から!


妻の家族からこんなことを言われるイルマリネン。
さらに葬儀の場面で、父親が塩を投げつけたりすると、
お昼のホームドラマばりの光景になりますな(オイオイ!)。



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