第37章
Seitsemäsneljättä runo
クッレルボの悲劇的哀歌終了のあとでなんですが、この章からじわじわとジジイオーラがまた滲み出しはじめます…。ジジイは何やっても大爆笑。
でも、この章の主役は、まだイルマリネン。
愛妻を無惨に殺された(それも自業自得という気がしなくもないですが…)彼は、落ち込みまくっていました。なんせ、あれだけ苦労して結婚した奥さんです。それが、アッサリ手元を離れてっちゃうんですからね!男やもめは、悲しく一人暮らしです。
仕事も手につかず、何ヶ月も泣き暮らしていたとある日のこと。
彼は、突如として思いつきました。
「…そうだ。妻を作ろう。あたらしい妻を作ればいいんだ」
チョット待て。
いきなり危ないことを言い出しました。作るって。
炉に金属ぶち込んでガンガン焚いてますけど、それで人間なんか作れるんですか。
あんたは、ギリシアのヘパイストスですか?
しかし、そんな冗談のような思いつきさえ、この、彼には可能なことでした…流石は鍛冶の匠。出来上がる失敗作品の乙女たちは、どれもみな、素晴らしい出来栄えの美女ばかり。祭り前のヲタクもかくやと言わんばかりの集中力で、危険な工芸品(18禁)の製造に没頭しています。
「ええい、ダメだ! こんな…ダメだ、こいつも好みじゃない! こいつは胸がデカすぎ…こいつは…うーん、イマイチだな。もっとこう」
ヤバい。
ヤバいです。鍛冶の匠ですよ。フィンランド一番の鍛冶屋です。その彼が等身大フィギュアづくりに没頭しているのです!
…そんなことに特殊アビリティを使わんといて下さい…(涙)
女への思いは執念となるか。
イルマリネンもやはり男です。男だったらもう一花。(ちょっと違う)
愛と肉欲の日々を取り戻すための努力には、鬼気迫るものがありました。作っては壊し、壊しては、また作り…。
こうして何度めかの失敗のあと、ついに。
「出来たぞ!」
皆が怯える艶かしくもリアルな黄金の美女。イルマリネンお好みの乙女が完成しました。
でも、奇蹟はここまでです。
せっかく作っちゃっても、彼は全能の神でも創造主でもありません。いかにリアルに作られていたとしても、命の宿っていないそれは、人形です。人形に過ぎません。とにかく人形なのです。
だからその人形を風呂に入れたりベッドに寝かせたりするのは単なるヘンタイです。
イルマリネンはヘンタイになってしまったのです。
嗚呼、カレワラの中で唯一の常識人が、ついにお壊れに…。
自分が作った美女人形と一緒に床で寝たりして、そ、それってまさか、ダ○チワイ○…? ぎゃああ!(※18歳未満の方はご遠慮ください。)
あうう…なんか、考えたくないです。イルマリネンが。あの、いい人だったイルマリネンがそんなことに。
しかも、夜のお相手が冷たいと文句たらたら。そりゃ相手は金属で出来た美女なんだから、冷たいのは当たり前でしょうよ。暖かかったら怖いですよ。金属の美女。
「しょうがない。こんなモンはワイナミョイネンにでもくれてやるか。」
と、イルマリネン。
そのダッ○…じゃない、等身大リアルフィギュア美女を、このところ女っ気まったく無しのジジイのもとへと運びました。
「おい、ワイナミョイネン。お前にプレゼントを持って来たぞ。」
うわぁ、これはエロジジイ喜ぶかなあ、と思いきや…。
「何じゃその気色の悪いモンは。いらんいらん。そんなモン、溶かして何か暮らしの役にたつもんにしちまえ。」
どうやら、ジジイは生身の女性じゃないと口説くにしても燃えない(萌えない?)らしいです。
ジジイ…
もしかして、すっごいこだわり派?^^;
それにしても、要らなくなった美女人形の再利用先として思いつかれるあたり、ジジイの女好きは、世間の公認するところなのでしょうか。どこが賢者やねん…。
{この章での名文句☆}
真夜中の夢の中、掌は虚空に触れ、
手は幻想(まぼろし)を愛撫した。
奥さんが死んでショック大のイルマリネン。
夢の中で、死んだ愛妻とランデブー。けれどそれは、とっても空しい甘い夢…。