フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第17章
Seitsemästoista runo


 話はこの世に戻ってきたモンの…、わざわざ死者の国まで行ったのに何にも収穫ナシだったワイナミョイネン。次なる手段として、アンテロ・ピブネンという人物を訪ねることにします。
 しかも、教えてくれたのは道行く牧人。おいおい、賢者が一介の通行人に「呪文はどこじゃろのう」とか聞いて、いいのか? 意外と情報量少ないのな…ジジイ…。

 とりあえず、冒険に出る前は装備品そろえんのがお約束なんで、ジジイはイルマリネン宅に押しかけます。
 「イルマリネン! 装備くれ。アンテロに会いに行くんじゃい。」
もうイイ加減慣れて来たかと思いますが、ジジイはとっても身勝手なのです。お仕事中だったイルマリネンは、ちょっと困った顔でジジイを振り返り、言います。
 「…アンテロは、もうだいぶ前に死んだぞ?」
ありゃりゃ。情報古すぎ。

 しかし、ジジイはそれでも引きません。(意地?)
 兜やら鎧やら装備して(…装備品の防御力だけで中ボスに挑む感じ?)、颯爽と旅に出てしまいます。たどり着いたのは、アンテロ・ピブネンの横たわっている場所。彼はポプラを肩に生やし、松やら白樺やらが体中のあちこちから芽生えて、体の上でリスが遊んでいたりします。

 人は普通、そのような状態を屍(しかばね)と呼びます。

 カンペキに土と同化してるじゃないですか。しかも、ロー○ス島戦記の「原始の巨人」よろしく、緑の礎となってしまっています。

 ジジイはこれで諦めるか? 勿論、そんなことはありません。なんと、ワイナミョイネンはいきなり、死んでいる巨人アンテロの口んなかに鉄の棒つっこんで、奥歯ガタガタ言わせたのです!
 「起きろ! いつまで寝とるんじゃ!!」
ってアンタ。死人になんてことを?!

 あまりの痛みに、死んでた巨人は目を覚まします。すごい、すごいよジジイ。永遠の眠りからさえ呼び戻してしまう、その無礼な態度! アンテロは自分の身に何が起こっているのかも分からずに、口ん中につっこまれた鉄の棒を引っ張り出そうとしました。
 が。
 口の側に立っていたワイナミョイネン、その弾みに転げ落ちて、巨人の口の中に…。


じじー・・・。
 …バカだ。
 なんてバカなんだ、ジジイ…。
 「んん? おれっち、何か飲んじまったか??」
アンテロは寝惚け顔で首をひねってます。そりゃあ、気が付きゃしないでしょうよ。だって今まで死んでたんだもん。
 「ヘンな味だなぁ…。」
ジジイはあまり美味しくないようです。

 巨人の腹に転げ落ちてしまったジジイは、ちょっと溜息ついて思案しました。「むむー…。わしも、年貢の納め時かのォー…。」
 またかい。
 いい加減、そうやってすぐ弱音を吐くのヤメて欲しいです。そんでもって、もっと後先考えて行動して欲しいモンです。ここまで軽はずみな行動が重なると、なんか愛嬌っていうより、真剣にトチっているとしか思えません。
 本当に、この人は高名な大賢者なんでしょうかねぇ?


 しばし考えた挙句、ワイナミョイネンは魔法で小さな船をつくり、胃袋ん中に浮かべました。こうしておけば消化されず、安心☆ そして、さらに鍛冶屋に転職。
 さすが大賢者です。ダーマ神殿とか行かなくても自分で転職できてしまうんですねぇ。(ドラクエネタ)何でそういうことは出来て、当たり前のことは出来ないのでしょうか。

 さらに、いまや鍛冶屋となったワイナミョイネンは、アンテロの腹の中でお仕事をはじめてしまいました。トンテンカンと腹の中から打ち付けるのですから、そりゃ痛いですよ。アンテロは苦しみもがき、何とかして痛みを抑えようと呪文を唱え始めます。

 しかし、それらはどれも、悪霊や運命としての死を退けるためのものでした。ワイナミョイネンは死神でも悪霊でもないので、当然ながら呪文はちっとも利きません。
 次々と呪文を唱えたアンテロは、どれも効果がないことで、ようやく痛みの正体に気付いたようです。
 悪霊や死神以外にこんな酷いことをするやつは、1人しかいない。
 そう…、ヤツだ。

 「うひゃひゃひゃ。そんな呪文は効かんわい。わしゃあ、もっともっとお前を苛めてやるぞ〜い。ヒッヒッヒ」
ワイナミョイネン、不滅の詩人にして天下一のふられん坊、色ボケのエロジジイにして最高最悪の大賢者! ああッ、生き返ったと思ったら、こんなヤツにとっつかれてしまうとは?!
 「なに? 助けて欲しいんかい? じゃったら呪文を寄越せ、ホレホレ」
内側から脅しをかけるとは…。なんて卑怯で狡猾なジジイでしょう。かなり悪人入ってます。

 仕方なく、アンテロ・ピブネンはワイナミョイネンの望む呪文を唱えてみせました。さすがジジイ、大賢者名乗るだけあって、一度聞いただけで全て覚えきったようです。
 「よっしゃ。それさえ聞ければお前さんに用は無いわい。口を開けい。出てってやるわい」
ピブネンは溜息。
 「おれっちも色んなもん食ったり飲んだりしたけど、こんなサイアクなもん食ったことはねぇよ。ったく…とんでもねぇよ、あんたは。」
口をガバチョと大きく開けるとワイナミョイネンは外に飛び出して、お礼も言わずさっさと退散。そのとき、彼のヨロイがちょっと溶けていたとか、いなかったとか。

 戻って来たワイナミョイネンに、イルマリネンは嫌な予感を覚えながら訊ねます。
 「…呪文は手に入ったのか?」
 「ウム! 勿論じゃ。」
 「……。(やっぱし。死んでたヤツを脅したのか…哀れだな、アンテロ)」
この場合、同情されてしかるべきなのは、静かに死んでたのにムリヤリ生き返らせられた巨人のほうでしょう。

 こうして、ようやく欠けていた呪文を手に入れたワイナミョイネンは、残りの船作りに取り掛かったのでありました。
 目的のためには手段を選ばない。
 ジジイ、もしかして…すんごい悪党ですか…?


{この章での名文句☆}

不自然な怪物め消え去らないか、
飼い主のない犬め消えないか、母なし犬め、離れないか

巨人アンテロが、ワイナミョイネンを追い出そうと唱える呪文のひとつ。ここまで言われるジジイって一体…。


ページ写真;ヴェルッティ・テラスヴォリ「アンテロ・ピブネンの腹の中のワイナミョイネン〜プレ・カレワラシリーズより」(1997)
著作権切れてないので見つかったらマズいというか。コソっと使ってるのでバラさないでね…

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