■シャルルマーニュ伝説 |
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つっこみルネッサンス
…とかなんとか、恋のコント大会が繰り広げられていたまさにその時、シャルルマーニュの国めざして侵攻して来た軍があった。セリカン(中国の古名。つーことはアンジェリカの近所の国の人か…。)の王、グラダッソである。
例によって、なんで中国人が”グラダッソ”なんて名前なのかはツッコミいれてはいけない。
絵を見るとさらに哂えます。甲冑来た中国人。
グラダッソは言った。「我輩は地位も名誉も金も持っている。そんな我輩に足りないものは何か? それは他でもない、名剣と名馬であーる。すみやかにオルランドゥの剣ドゥリンダナと、リナルドの馬バヤールを寄越しなっさい!」
…宣戦布告なんだが、シャルルマーニュの首級も領土もどーでも良くて、ただ単に剣と馬が欲しかっただけ。
まあそうだろう、中国のほうが広いしさ、今さら余分な土地も要らんて。
だが、このグラダッソ、とても不思議な行動を取る。
まっすぐフランスに攻め込めばいいものを、何でかスペインから攻めて行ったのである。中国とアフリカを間違えてんじゃないのかと言いたいところだが、そこには、恐るべき作者の事情があったのだ。
中国人=異教徒。異教徒といえばサラセン人。サラセン人は、アフリカからスペイン経由でヨーロッパに攻め入って来た人々である。
…と、いうわけで中国人もサラセン人と同じルートで攻め込んでくるモンだと思ってたらしい。中国が何処にあるのか、実はよく知らなかったんじゃないのかと思ってみたり。
ともあれスペインがサックリ滅ぼされてしまったので、シャルルマーニュとしても戦わなければならなかった。宴会終了、模擬試合から実戦へと気持ちを切り替えて戦闘準備である。シュルルマーニュは、アンジェリカをフッて戻ってきたばかりのリナルドに軍をつけ、グラダッソ討伐に行かせる。グラダッソは、欲しい馬に乗ってるリナルドを見て「よっしゃ、我輩と勝負せい! ぬしが負けたら馬は我輩のもんじゃい」と、ヤル気満々。
リナルドは、もちろん勝負を受けた。だが、その時、一騎打ちに臨もうとする彼を物陰からコッソリ見ている不審人物が…。
何を隠そう。例のマラジジさんである。
愛の泉ですっかりヤクづけになってしまったアンジェリカ姫から、「命が惜しくば、私の愛しいリナルド様を攫っておいで!」と、かなりエゲツナイ取引を持ちかけられ、命惜しさに応じてしまった彼は、今まさに従兄弟の貞操を売り渡そうとしていた…。
「! グラダッソ?」
いきなり目の前に現れたグラダッソに、驚きつつも勝負を挑むリナルド。
だがそれは、マラジジの変身した偽グラダッソだった。アニメで言うと、服の色がちょっと薄いとか、目つきが違うとか、額に変な模様があるとか、そんなカンジ(笑)
偽グラダッソは、最初のうちだけは戦っていたが、すぐに身を翻し、逃げ出してしまう。
「待て! あんだけメンチきっといて、もう逃げるのか?!」
リナルドはおっかける。従兄弟だから、この熱くなりやすい性格もバッチリ分かっている。ああ、マラジジよ。今なら間に合う…。
素直にだまされて追っかけてったリナルドは、これまた素直に船に乗ってしまい、船は自動操縦でどこかへドンブラコ。
「マジで?! と、…とまれーー!」
止まりません。
リナルドの行く手には、なにやら立派なお城。お城の中では歓迎の宴。豪華なご馳走と美女と歌、まさにこの世の楽園である。
何がなんだか分からないまま、もてなされてしまうリナルド。
「驚くことはありません。この城の主である姫様は、それはそれはあなたのことをお気に召しておられて、どうしてもお持て成ししたいと仰っているのですよ。」
「さあごゆっくりおくつろぎください。ここにあるものは何でも、思うままにしてくださって結構です」
…うーん…。
ただ、呆然としているだけのリナルドだったが、さすがにまるっきりの馬鹿ではなかった。元はええとこの坊ちゃんなので、贅沢には慣れているのだ(笑)
「ちなみに、ここのご主人は一体誰?」
「あなたを心よりお慕いする、アンジェリカ様です」
「!」
(※ちなみに、リナルドはアンジェルカとは逆の「嫌悪の泉」の水を飲んでしまっているので、アンジェリカが死ぬほどキライである。)
リナルド真っ青。
この世でいちばん嫌いな女の館に来ちゃったよ。
彼はさくっと立ち上がりダッシュで逃げ出すと、貴婦人たちの言葉に耳も貸さず、それはそれは凄まじい勢いで船に飛び込み、水平線の彼方へと逃げ去ってしまいましたとさ。
…で、そのころ、シャルルマーニュの軍は、というと。
リナルドが決闘すっぽかして逃げたせいで戦局が悪化し、大敗。
シャルルマーニュ王が捕虜にされてしまっていた。
・その頃のリナルド…追っかけてくるアンジェリカから必死で逃げている。
・その頃のオルランドゥ…アンジェリカを探してはるばる東の中国へ。
・その頃のバヤール(馬)…ご主人がいなくなったので、リナルドの弟・リッチャルデットが預かり、パリに送り返されている。
戦力半減。そりゃ負けるよ^^;
シャルルマーニュの国を破滅させるというアンジェリカの目論見は、見事達成されたわけである。
敵さんは剣と馬が欲しかっただけなのでシャルルマーニュは逃がしてもらえたが、部下たちがてめぇ勝手な行動とったせいで捕まったんだから、悲しいよなぁ…。
[アンジェリカ物語は、ひとまず終了。だが、彼女の恐るべき支配は、まだまだ続く…!]