■シャルルマーニュ伝説 |
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つっこみルネッサンス
森の中は、バトルロワイヤル状態である。
アルガリアを殺し、まだ興奮の収まらないフェローとばったり出会った不運な人は、やっぱりこちら、オルランドゥ。
「なんだテメェは、ああん?! あの女は、俺がもらう話になってんだよ。邪魔してんじゃねーよ」
「やかましい。貴様こそ、とっとと国に帰ったらどうだ。野蛮人に美姫は不釣合いだ。」
「ンだと? コラ。ちょっとツラかせや」
ガッキーン!
熱く激しく戦う二人の男。恋は力で奪い取れ。問答無用のバトルである。
たまたまその光景を目撃したアンジェリカは、殺気立っている男たちを見て、怯えて逃げてしまった。色恋沙汰になると容赦なし、それがここの騎士さんたち。
さて一方、幸運にも戦いを逃れたリナルドがどうしていたかというと。
「すかー…」
寝ていた。
オイオイ、リナルドさんよ、そりゃぁないだろう? なんで寝てんのさ?
――実は彼、眠りにつく前、喉が渇いて、側にある泉の水を飲んでしまっていたのだった。
その泉は、かつて魔術師マーリンが、不慮の事故から愛の水を飲み、互いに離れられなくなったトリスタンとイゾルデをムリヤリ別れさせるため、魔法で作り出した嫌悪の泉だった。(トリスタン・イズー物語については、こちら→別ウィンドゥで開きます。)
この泉は、言ってみれば、夫婦縁切りのためのもの。つまり、現在愛している人をキライになる魔法の水である。
飲んだリナルドは、アンジェリカへの心がすっかり冷めてしまった。そして、もうどーでもよくなって、昼寝してしまったのである。
…つか、どうでもいいからって、そこで寝るか? 普通。
君、適当すぎるんちゃうのん。もっとマジメに生きようや。<自分ツッコミ
ちょうどそこへ、アンジェリカ到着。
リナルドが静かに眠っていたため、彼女は全く気付いた様子もなく、やっぱり泉の水を飲んだ。
だが、彼女が飲んだものは、嫌悪の泉とは逆のもの。すぐ近くにあった、愛の泉の水だったのである!
嗚呼…!
マーリンよ。作ったなら作ったでもかまわないが、何故「この水を飲んではいけません」とか、立て看板くらいしてやらなかったのか。
なぜ、すぐ近くに正反対の効果を持つ泉なんか作っておいたのか。(自分も間違うだろう。)
しかもアンジェリカは、喉の渇きをうるおして立ち去ろうとしたその時、まったく本当にたまたま偶然に、そこで居眠りこいているリナルドの姿を目に止めてしまったのだ。
その瞬間、水の魔力が全身を巡り、彼女はすっかり恋に落ちた。
コントやんけ。^^;
「まあ! なんて素敵なお方。こんな素晴らしい人がいたなんて、思いもよらなかったわっ」
かたや、その女に嫌悪を抱く男。かたや、その男に熱烈な愛情を抱く女。
アンジェリカはリナルドの側に寄り、やさしく目覚めの時を待つが、その目覚めはリナルドにとって、ひどい災難だった。何せ、この世で最も嫌いな女が、目の前で微笑んでいるのだから。
アンジェリカがどんなに美人でも、かつてあれほど恋していたとしても、今の彼の心は数ミクロンさえ動かなかった。
アンジェリカの言葉に耳を貸さず、リナルドは馬に乗って冷たく去って行ってしまう。
「どうして…。」
悲しむアンジェリカだったが、もちろん彼女はただ悲嘆にくれるだけの無力なお姫様ではない。
そう。彼女こそ、最強の魔法のプリンセスなのだ。
アンジェリカは、魔力を秘めた指輪で本国へテレポートすると、とらえていたマラジジを解放。自由にしてやるかわりに、リナルドを自分のところへ連れておいで、と迫るのである。
マラジジは考えた。
「むむむ。姫様はアレ(従兄弟)が気に入ったと仰せ、悪意からでないのだし、命には変えられんし…。」
なぁに。殺したいわけではない。
アンジェリカにとっ捕まっても、押し倒されるだけだろうし。
だったら別にいいじゃん、アンジェリカ美人だし、身分もいいんだし。むしろやられちまえば、いい経験になる。
つまりマラジジにとって、リナルドの貞操なんかどうでも良かったのだろう。(笑)
+++
と、まあ、素敵にマラジジがリナルド拉致を計画していたその頃、戦い続けていたオルランドゥとフェローのもとに、サラセン人の使者が訪れていた。
それはフェローの主君、スペイン王マルシリウスからの使者で、フェローに本国からの召還命令が出たということを告げに来たのだ。
主が帰って来いというのだから、いつまでもケンカしている場合ではない。
「オラ貴様、首洗ろうて待っとけやコラ。次会うたら、ただや済まんけんのォ」
使者にひっぱられて捨て台詞残しつつ、フェローはしぶしぶと国へ帰っていった。
オルランドゥはもちろん、アンジェリカ探し。だが、本国に帰ってしまった彼女が見つかるわけもなく、結局は徒労に終わった。
かくして男たちは家路につく。
アンジェリカをおいて、さっさと帰ってしまったリナルドは、まだ知らない。恋する女の執念の恐ろしさを…。
[アンジェリカ物語は、なおも続く!]