■シャルルマーニュ伝説 |
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つっこみルネッサンス
この時点で、主要キャラのほとんどが私事のため出払ってしまっている。もしくは、戦争とは全然関係ないところで行動不能になっている。
フランス陣営で残っているのは、リナルドと弟たちくらいだ。
君たち。もっとマジメに戦争しようよ…。
リナルド「くそ。誰もいないし。そもそもこの戦いは何で始まったんだっけ!」
リッチャルデット「アフリカの王アグラマンが、何だか知らないけどウチの王を気に入らないからって攻めてきたんじゃないですか。」
リナルド「そうだっけ?! ああー、なんかもう、そもそもどうしてアフリカの軍にヘクトルの子孫とか中国人(グラダッソ)とかいるんだよ! オレたちは一体何と戦ってるんだ、なあ?」
リッチャルデット「そんなこと僕にいわれても分かりませんよ…とにかく戦わないとまずいんですから…」
アラルド(弟その2)「どうします? ブラダマンテ探しに行きますか?」
リナルド「いや。いい。多分、今までのパターンからして、いなくなった奴を探しに行くと二次遭難になる危険性が高い。」
そう。探しに行ったら帰ってこない。これがお約束。
物語の登場率を上げるためには、何が何でも事件に巻き込まれなければならないため、騎士出歩けば事件に当たる、とでもいうべきか、まず無事には帰ってこられないのであった…。
だが出歩かなくてもイベントは向こうからってくるもの。
マンドリカルドが死に、ロジェロが瀕死の重傷を負って倒れた今、名剣ドゥリンダナはグラダッソの手にある。かつてグラダッソは、名剣ドゥリンダナと名馬バヤール欲しさに、は〜るばる中国から戦いを挑んできた男である。(そもそも、この人、一国の王のくせに、まだ国に帰らずウロウロしてるってのがすごいよね)
求めるものの片方が手に入れば、残るもう片方を求めるは必定。
かくて、男はリナルドに一騎打ちを挑んだ。このクソ忙しいのに 騎士の誇りと名誉をかけた戦いを挑まれては退くことあたわず、いざ、尋常に正々堂々の勝負!
と、いうわけで、一騎打ちも騎士の仕事のうちなので、リナルドは、以前マラジジのお陰でおあずけになっていたグラダッソとの勝負にケリをつけるために出かけていった。戦いは苛烈を極め、真剣勝負は何時間にも及んだ。グラダッソの持つオルランドゥの剣の恐ろしさは、当然リナルドも知っている。
鉄をも切り裂くその名剣、当たったら負けだ!
だが、当たらなかったら恐るるに足らず。
グラダッソ「くッ…なぜだ、何故、私の剣が…」
リナルド「ふははは。貴様の攻撃など、ハエが止まって見えるわ!!」
鎧つけたまま身軽にひょぃひょぃ避けてるリナルド君を想像すると、何だか笑ってしまうのはオレだけだろーか。
そうして戦いがかなりの時間に及んだときだった。
鋭い馬のいななきで振り返った二人は、木につないでおいたバヤールが、何か得たいの知れないバケモノに襲われているのを見た!
「な、なんだありゃ?!」
何だったかはわからない。それは作者にも分からなかったらしい。
とにかくバケモノだった。鳥のような…、翼の生えた生き物である。
バヤールはびっくりして、その自慢の駿足で逃げ出してしまった。
リナルド「ああ! こら、待てっ」
グラダッソ「チ…、賞品が逃げては、戦いはおあずけだな。ここはひとまず休戦だ!」
戦っていた男たちは、剣を収めて馬を追っかける。もちろんこの決闘は、どちらの騎士が名馬バヤールを手に入れるかを争っているものなんだから、バヤールがいなきゃ始まらない。バヤールをなだめて回収してきたら、また戦いが始まる、はずだった。
ところが――。
運のいたずらか、バヤールを先に見つけたのはグラダッソ。それまで、もとめて手に入らず、フランスに侵攻して失敗していた類稀なる名馬が目の前に。
彼の胸に、悪がささやいた。
「このまま、バッくれちゃえ。」
ちなみにバッくれるとは、若者用語で「ごまかして逃げる」という意味です、お父さん。
そんなこととは露知らぬリナルド。
セリカンが船に乗って帰国してしまったことを知ったときには、あとのまつり。友人の剣と自分の馬は、はるか彼方の海上にあったのだった…。
※シャルルマーニュ伝説の法則 ―騎士道に正しく振舞った人ほど理不尽なメに遭う
さて、その頃、ブラダマンテはロジェロのいる陣営を目指していた。
乗っている馬はアストルフォが置いていったラビカン、手にしているのはアストルフォの置いていった魔法の槍。どちらも元はアンジェリカの弟・アルガリアの所持品だったものである。
てくぽく馬で進んでいると、彼女の前に涙にくれる貴婦人が。
「あら、フロルドリ? お久しぶりね。こんなところで何をしているの」
「ああ、騎士様!」
…フロリマールとフロルドリはいちどフランスに戻っているので、オルランドゥ以外のフランスの騎士たちとも面識があるような気がするのだが、ブラダマンテとも知り合いだったかどうかは定かではない。(もしかしたら全然知り合いじゃなかった可能性も…)
ま、鎧見れば味方かどうかの判別くらいはつくだろうし。
フロリマールは懇願した、この先の橋に立つ騎士が捕らえている、自分の夫を解放してください、と。これまでの経緯も話した。本当は、狂ったオルランドゥを助けに行くつもりだったんだけど…。
「オルランドゥがねぇ。(リナルドのいとこ、ということは、彼女にとってもオルランドゥはいとこに当たる) …ったく、あの男はひとに迷惑ばかりかけているな。まあ、いいだろう。どのみち橋は通らねばならんし、私も、そのテの男は大嫌いだ」
「ありがとうございます!」
ブラダマンテは槍を構えて堂々と橋に差し掛かった。待ち構えていたロドモンがかかってくる。
「わしが殺した婦人の墓にそなえる馬と鎧を寄越せ。」
「愚か者が、自分の罪は自分で償え! 貴様の鎧兜こそ、唯一にして最も献花に相応しいものよ」
一撃必殺。
アストルフォから預かっている魔法の槍があるので、ロドモンはもんどりうって馬から転げ落ちた。
「ぐ・・・、ぐはッ?! ばかな、この、わしが…」
振り返ると、そこには金髪美女が。
「どう? 女に負けた気分は。これに懲りたら、二度と他人に罪の肩代わりをさせないことね。」
「………。」
ロドモンは観念した。
自分は負けた…。そう、本当は、誰かにコテンパンに打ち負かしてもらいたかったのかもしれない。自分で自分を罰することができなかった臆病者は、誰かに叱ってもらいたかったのだ。
手に入らなかった恋のことは、諦めよう。
過去よりも今、鮮やかに、目の前に輝く強き手の美女がいる。女たちは、本当は男よりも強い者なのだ。(ナレーション字幕)
「わしの、負けだ。捕虜はすべて開放しよう…さらば!!」
涙をこらえロドモンは去っていった。
だが、そのときすでに、フロリマールを含む捕虜たちは遠くアフリカに送られていたのだった。日本でいったらロシヤ送りくらいキッツいですよ、奥さん。開放されても、帰ってくるのにものすごく時間がかかるんじゃぁ…。
「ありがとうございました。」
「いえ、大したことではないわ。あとは夫が無事に帰ってくることを祈るしかないわね。」
「はい…」
「じゃ、頑張って。あなたなら大丈夫よ。」
ブラダマンテは、馬にまたがってその場を後にした。
旅は続き、ロジェロが看病されている陣営の近くまで来たとき、彼女は求めていた、噂の真相を知ることが出来た。ロジェロの看護をしていた美女マルフィサは彼の妹であること。怪我は既に治りつつあること。
ほっとすると同時に、彼女は、この旅をしてよかったと思ったのであった。
―――本国は、それどころじゃないのだが…。
まあ、本人が良いと言っているのだから、取りあえずは…めでたし・めでたし?^^;