■シャルルマーニュ伝説 |
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つっこみルネッサンス
…そんなわけで、いらんことしぃなロジェロは折角自由になれたのに、ヒッポグリフに攫われて空の彼方。行方不明になってしまった。
ここから物語は、そのロジェロのほうへズームアップ。
ようやくヒッポグリフが降りたのは、見ず知らずの場所だった。ヒマラヤスギが生えていたり、泉が湧いていたりと、なかなかに良さげな場所だった。見たカンジ、危険な場所ではなさそう。
とりあえず、乗って来たヒッポグリフを手近なミルテの木にくくりつけ、休憩しようとするロジェロ…と、そのとき、ミルテの木が突然喋った!
「ああ、君。お願いだ、この縄を解いてくれ。ボクをいためつけるこの獣を遠ざけてくれ」
「誰だ?!」
「ボクだよ、ユー。君の目の前にいるじゃないか」
当たり前だがロジェロはびっくり。木に向かって謝りながら、ヒッポグリフの手綱を解いた。
「すまない、まさか木が生きて…いや、木の中に生き物がいるとは気がつかなかった。……ええと…君は何者かな?」
「ふふ、聞いてくれるのかい我が友よ。僕に起きた悲劇の数々を。そう…あれは、ボクが旅から帰る途中のことだった・・・。」
「(まだ聞くとか言ってないんだけど。まいっか)」
カンペキに自分の世界に陶酔してしまったミルテの木は、打ち明け話を始めた。
それは、恐るべき内容だった。
「ボクはアストルフォ…そう、天下に名を轟かせた、あのアストルフォさ。父のオトはイングランドの国王だよ。僕自身はシャルルマーニュに最も信頼された勇士ってわけさ。フフ、驚いたかい? 驚くのはまだ早いよ。そんな高貴なボクがどうしてこんなところにいるのかってことさ。それは…おお、今考えてもおぞましい。…アレは僕が、マイ・フレンズとともにフランスへ帰ろうと旅をしていた時だった…。」
「ちょっと待て」
「なんだね?」
「…あんた、ブラダマンテのいと…い、いや、あのオルランドゥやリナルドのイトコなのか?」
「そうさ。彼らは、ボクの素敵な血縁者たちだよ。まあ、美しさはボクには劣るけどね」
さあて。回想してみよう!
思い起こせば、あれはかれこれ10章くらい前のこと。
確か、妖精モルガナから解放されたフランスの勇士一同は、シャルルマーニュからの召還命令に従って国に帰ったはずだよね。その時、リナルドとアストルフォは一緒だったはず。
だが、その後の戦いのシーンでは、確かに、リナルドしか出てきていない…。
と、いうことは?!
「…帰り道ではぐれたのか?」
ストレートに聞いてみるロジェロ。
「おぉ! 君。なんてことを言うのだね。このボクに限ってそんなことがあるはずないじゃないか。魔女アルシナの城の近くを通りかかったのさ。魔女は海から魔法で品物を吊り上げてみせた。そして、大きな鯨の背を指して、こう言ったのだ。”ちょうどあそこに人魚がやってきて、美しい声で歌う時間なのですよ。私と一緒にいらっしゃいませんか”と。…そこでボクは彼女のお招きに従ったというわけさ。」
「(その結果がこれかい←ツッコミ)」
魔女の誘いに乗ってイイことなんかあるはずもなく、あっさりだまくらかされたアストルフォは、身包み剥がされて木に変えられてしまったのだった。
女性問題でイヤな目に逢いまくってたリナルドは、「やめとけ、行くな」と止めたのだが、アストルフォは聞かなかったらしい。
「魔女といえば、蛙に変えるのがお約束ではないのか」
「フ…。この美しいボクに蛙になれなんてそんな無粋な。他の連中はヤシだの岩だの美しくもないモノに変えられたが、ボクに相応しいのは優美なミルテの木さ! 魔女もよく分かっているのだよ」
この島を支配する魔女・アルシナは、あのモルガナの姉妹である。
彼女たちは3人姉妹で、父の王からそれぞれ財産を継承したが、ふたりの姉はうそつきで淫ら、末の妹ロジェスティラだけは正直者で、姉たちの国とは山脈で隔てられた、島の端に王国を持っているのだという。
「助かりたいのなら、君、ロジェスティラの国にゆきたまえ。」
と、アストルフォは道を教えてくれた。
「こんな馬鹿でもブラダマンテのいとこには違いない…。どうにか助けてやれないものか」
人のいいロジェロは思案した。そして、結局、安全なロジェスティラの国ではなく、魔女アルシナの城へ突っ込んで行くのである。
行く手には罠がいっぱい、ゴブリンもいっぱい。障害の数々を、闘って乗り越えていくロジェロ。――と、そこに、ユニコーンに乗った美しい乙女たちが!
彼女たちが現れると、怪物はみな引き下がった。
「ようこそ、さあこちらへ」
何かあからさまに怪しいけど、ついていかないとイベントが進まないので(笑)、ロジェロは用心しながらついていくことに。
行く手には壮麗な宮殿が姿を現し、美しい女性たちが歓迎の準備をして待ち構えていた。
「いらっしゃいまし。類稀なる勇者よ。われらが女主、アルシナ様が、あなたにご挨拶なさいますわ。」
「…!」
ちゃらりら〜り〜♪
美人だった。
・美しい貴婦人からのお誘いは断ってはいけない(騎士鉄則)
・美しい貴婦人とは仲良くしなくてはならない。(騎士条件反射)
今やロジェロは、アストルフォが語った魔女の悪行なんか、すっかり忘れてしまった。
「あいつは、きっとウソをついたに違いない。こんな素晴らしい美女が、男を弄ぶ魔女だとは、到底思えない…!」
かくて、王子様は再び、とらわれの身。いやあ、こんなに頻繁にとっつかまる勇者も珍しい^^;
――そのころのブラダマンテは、行方不明になったロジェロを探して、必死の旅を続けていた。
何しろ空の彼方に消えてしまったものだから、手がかりなんか何も無い。だが、どこかに墜落すれば、きっと噂が聞こえてくるはず。彼女は恋人が生きていることを信じて探し続けた。
とても健気なようだが、今、本国フランスはアグリカン王の軍勢とイッパイイッパイの戦いを繰り広げているところなので、要するに職務放棄である。
「ダメだわ…、見つからない。ロジェロ、一体どこに…。」
途方にくれるブラダマンテ。そんな時にはお助けキャラが登場するお約束!
「わが娘よ。」
「あなたは…、魔法使いマーリンの祭壇に仕える巫女、メリッサ様!!(←説明的セリフ)」
”この二人をくっ付けるとイタリアが富む”というマーリンの予言により、ブラダマンテとロジェロをなんとしてもくっつけたいメリッサは、既に独自の方法でロジェロの行方を探っていた。彼がアルシナの城にとらわれていることも知っていた。
「私が行って、幻にとらわれたロジェロの目を覚まさせましょう。ブラダマンテ、そなたの持つ指輪が必要です。」
ブラダマンテは、指輪をメリッサに渡した。もとはカタイの王女・アンジェリカが持っていた、あの魔法の指輪、あらゆる魔法を無効化し、口にふくめば姿を消せるという超便利な指輪である。
「これさえあれば、魔女の城にも入り込めます。」
言うなりメリッサは、すちゃっと馬に飛び乗った。この馬がとんでもない馬で、一晩のうちにアルシナの城へと辿りつく。
チョット待て、アルシナの国は地中海の島にあるんじゃなかったっけ、間の海は? と、いうツッコミは今や、ちっちゃな問題だ。
指輪の魔力で姿を消したメリッサは、魔法の城に入りこみ、アルシナの魔法で骨抜きにされていたロジェロを見つけた。アルシナに与えられた豪奢な服を着て、悦楽に浸りきったロジェロからは、かつての精悍な面影は失われている。魔法を打ち破り、正気に戻すためには強烈なインパクトが必要! そこで彼女は、かつてロジェロの教育者だった、魔法使いアトラントへと変・身★
「こらロジェロ! 何をサボっとるんだ、このバカ者が。わしがお前を教育したのは、こんなところでいかがわしい魔女とダラダラさせるためではないぞ!!」
「はっ…、し、師匠?!」
一瞬で正気に戻るロジェロ。ううむ、やはりジジィの仕置きは強烈か。
アルシナの与えた、偽りの快楽から目を覚ましたロジェロが見たのは、見知らぬ女性。
「ようやく気がつきましたね。私はメリッサ。貴方に思いを寄せる魅惑的なアマゾン(=女戦士。っつか、せめて”女騎士”とか呼んでやれよ・・・。)からの贈り物をお持ちしましたわ。さあ、この指輪を」
メリッサは、ブラダマンテか預かってきた魔法の指輪をロジェロの指に嵌めた。
「さあ、急いで逃げるのです。装備を取り戻して」
「え、戦うんじゃあ・・・」
「アルシナには勝てませんから。(キッパリ) あなたは魔女の目を引き付けつつ、ロジェスティラの国へ逃げなさい。困ったときには、あなたが持つ、魔法使いアトラントの盾が役にたつでしょう。私は、アルシナの目が外へ向いたすきに、木や岩に変えられた騎士たちを元に戻しましょう」
とどのつまり、魔法には勝てないので尻まくって逃げよう、と。
何だか納得いかないけど、木に変えられたアストルフォ他、人質もたくさんいる状態なので仕方がない。
魔法が解けたロジェロは、すべてを知った…。
あれほど美しく見えたアルシナが、実は醜悪な老婆であったということも、この宮殿自体、めくらましの産物であったことも。
美人だと思ってたのに! 整形美人ですらなかったなんてー…!
「オレの青春を返せ!!(号泣) ああブラダマンテ、すまなかった。一瞬でも、こんな醜いバアさんに心奪われるなんて。オレは、オレはなんて酷い男なんだ…。」
ロジェロ、青春真っ盛り(笑)
戻ったらブラダマンテに謝ろう、と心に誓い、必死で宮殿から逃げ出すロジェロ。それに気づいた魔女アルシナは、軍勢を率いて追いかける。からっぽになった宮殿にひとり残ったメリッサは、そのスキに、こそこそと魔法の護符を壊して、木に変えられた人々の救出に当たっていた。
こうして、なんとか追っ手を振り切って逃げ出すことに成功したロジェロ&他の騎士たち。
ロジェスティラの国に逃げ込むと、そこから、めいめいの国目指して帰っていった。胸に、「魔女には関わらないほうがよい」「光合成で生きていた日々を忘れるな」という教訓を抱いて。…
別れの時が来て、ロジェロは、ブラダマンテの託した魔法の指輪と、アトラントの盾を持ち、何とか乗りこなせるようになったヒッポグリフに乗って、ブラダマンテのもとへ。さあ、これで二人は出会えるのかって? イヤイヤ。^^;
恋は障害があるほど燃え上がるもの、と、いうか、下世話なほど人の恋路に邪魔を入れたがるのがこの物語。
まだまだ続く、恋人たちの受難! まっすぐ故郷を目指すロジェロの行く手に立ちふさがったものとは…?
[次回はロジェロの放課後大冒険−道草は危険の香り−。]