■シャルルマーニュ伝説 |
サイトTOP>2号館TOP>コンテンツTOP |
つっこみルネッサンス
物語は、かなり前まで遡る。
君は覚えているだろうか。リナルドとオルランドゥの奪い合いから逃れ、隠者の助けを借りて逃げた、カタイの王女・アンジェリカのことを。
美しく勇気があり賢い姫君だが、その美貌で騎士たちを手玉にとる最強のマジカル・プリンセス。
その彼女の身に、今、かなり自業自得だと思われる悲劇がふりかかる…!
二人の男から逃れるために助けを借りた、あの隠者は、なんと本物の隠者ではなく、邪神に仕える魔法使いだったのだ!
そもそも隠者とは、人里離れたところで神に祈りを捧げるカトリックの司祭のことをさすわけだが、同じ司祭でも宗教が違いました。ハイ。
邪悪なる魔法使いは、自らの手のなかに飛び込んできたアンジェリカを、逃がしてやるとだまくらかして馬に乗せ、心の中でこう呟いた。
「わが主…邪神ゼウス様の御心のままに…!」
馬は美しい姫君をのせたまま海へザンブラ!
「きゃああ、何! 何なの?!」
そういやこんな話、ギリシア神話にもあったよね。そう…確か牡牛座の伝説だ。牛に変身したエロ親父な主神・ゼウっさんが、エウローペ姫を攫って海の向こうへたどり着くという話。
でもね。だからって、ゼウっさんが邪神ってどうだろう(笑)
ここからはギリシア神話テイスト全開のストーリーだ。覚悟するように。
馬に攫われ、アイルランドの海岸線はエビューダ島へとたどり着いたアンジェリカ、戻るに戻れず、ひいどい運命に涙しながら、浜辺に疲れた体を横たえる。
そこは、かつてはたくさんの人間が住んでいたが、海神プロテウス(英語ではプローティアスと発音する。プロメテウスとは別モノ)の怒りによって、今、ほろびの危機に瀕していた!
最近あんまり人間が拝みに来ない。
おそなえも少ない。
…と、怒り出したプロテウスが、海の魔物オルクを送って、人間たちを苦しめていたのだ(器のちっちゃい神だな)。
住人は海から遠い首都に立てこもり、ガタガタ震えているだけ。
「ど、どうすればいいんだ?!」
ギリシア神話的展開。海の神の怒りを静めるには? ――答えは美女を岩に鎖でくくりつけ、生け贄にする。コレだ!(アンドロメダ伝説)
と、いうわけで、島民全員がイケニエを待ち望んでいるところへ、やってきたのがアンジェリカなのである。
誰だって、自分の娘はイケニエにしたくない。
だけど他人の娘ならオッケー! ましてや縁もゆかりも無い異国人なら。
ハッと目を覚ましたアンジェリカは、既に縛り上げられたあと。暴れようが泣き叫ぼうが、自分たちの存亡がかかってる人々は、アンジェリカに情けなどかけなかった。
姫様の運命は急転直下! だが、この後、さらなる「お約束」が待ち受けているのだった。
ヒッポグリフに乗って故郷を目指していたロジェロは、ちょっとばかり、行き過ぎていた。着いたところはなんと、イングランド。おいおい、どこまでいっとんねん君は(笑
イングランドってことはアストルフォの故郷なわけだが、ここでは今、シャルルマーニュの要請に応じた騎士たちが、戦のために出陣しようとしているところだった。…そういえば、フランスは今、大変なことになっているのでした…。
自分のいる場所がどこなのか気づいたロジェロは、大急ぎで引き返す途中、アイルランドの海辺を通りかかった。
もうお分かりだろう。
アンジェリカがアンドロメダの役だから、ロジェロがペルセウスの役だ! 丁度、魔法使いの盾とか持ってるし、怪物退治にもうってつけ。
「くらえ! メイド・バイ・アトラント…めくらましの盾ッ!」
ぴっかーん!
海魔オルクが気絶したとろで、あとは姫を攫って逃亡。うーむ。強いんだか卑怯なんだか、それでいいのか。
「さあこれで大丈夫。お怪我はありませんか、おぜうさん?」
「ええ…ありがとう…」
怒涛の運命に翻弄され、さしもの姫様もちょっと弱っていた。よろよろしながら、ふと見ると…なんと、その手に見慣れた自分の指輪が?! 何故!
それは、魔法の盾を使うとき、ロジェロがアンジェリカを巻き込まないため、その指にはめたものだった。アンジェリカは回想する。かつて、自分がその指輪を持っていたときのこと…。
・カタイの城で、盗賊ブルネロがアンジェリカから盗んだ。
↓
・その指輪を使って、魔法使いアトラントの城からロジェロを連れ出した。
↓
・そのロジェロが再びアトラントに幽閉されてしまったため、ブラダマンテがブルネロをぶん殴って取り上げ、使用。
↓
・助け出されたロジェロ、こんどは魔法使いアルシナに捕まってしまったため、メリッサがブラダマンテから借りて助けに行く。
↓
・メリッサがロジェロに託す。
↓
・そして今――ロジェロが元の持ち主・アンジェリカの指にはめた。
はるばる、人の手を渡って戻ってきた魔法の指輪!
その威力や効果を一番知っているのは、もちろん、アンジェリカ本人である。
らっきー!
助かった途端、元の性格に戻ったマジカル・プリンセス。指輪を口に含むなり、さっと姿を消し、命の恩人の目の前からとっとと逃亡!
「えぇ! マジ?!」
マジです。
ペルセウス・ロジェロ、姫君を助けたのに甘いアヴァンチュールとかなんも無し。しかも、その間に乗っていたヒッポグリフも綱を切って逃げちゃった、という二重の罠。
もはやコイツの不幸は天性のもののようだ。
「…帰りたい…。(涙)」
その気持ちは最もだ。ロジェロ。
さあ今度こそおうちに帰ろう。道草なんか食わずに、真っ直ぐに。な?
「あっ」
ってコラ! 言ってる先から余所見すんな!
「あそこに誰かがいるぞ…」
ロジェロが見たものは、巨人と戦う騎士だった。騎士は劣勢。見ている前で、巨人に殴り倒され、気絶してばったり倒れてしまう。
その頭から、綱の切れた兜が外れて飛んだ。ふわりと広がる髪…、あれは…、あれはブラダマンテ…?!
「貴様! なんてことを!!」
頭に血が上ったロジェロは、憎っき巨人めがけて剣を翳して突進した。だが巨人は、もう一人の騎士が向かってくるのに気づくや否や、ブラダマンテと思しき人物を肩に担ぎ、スタコラさっさと逃げ出したのだ。
いや、気づこうよロジェロ君。
ブラダマンテ、そんなに弱くないよ(笑
そう、それは、凝りもしない魔法使いアトラントの罠だったのだ。
幻影によってまんまとおびき寄せられたロジェロは、自ら魔法の檻の中…、そして、そこには、懐かしい人たちが囚われていたのだった。
それにしても、よく捕まるなあロジェロ君。
もはや助けに行くのもイヤになるくらい、某ゲームのヒロインくらいなんかどーでもいいんスけど、助けないとストーリーが進まないのですよ。やっぱりね。
[帰らぬ恋人を待つブラダマンテ。やっぱり君が行くしかないようだ。]