■アーサー王伝説-Chronicle of Arthur |
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年代 | タイトルと作者 | 作者 | 製作地域/言語 |
500 | 「ブリテン衰亡記」(529ごろ) | ギルダス | ブリテン/ラテン語 |
600 | 「ア・ゴドズィン」 | アネイリン | ブリテン |
700 | ブリタニア年代記(769) | ネンニウスNennius | ウェールズ語? |
800 | タリエシンの詩群 850〜1150年ごろ | タリエシン(自称) | ブリテン |
1100 | 「ウェールズ年代記」 「ブリトン人の歴史」(写本はともに1100年ごろ) |
*アーサーという名前が登場する最初の書物 *両者は同じ写本に含まれる |
残っている写本は 古英語 |
「ブリタニア列王史」(1135) | ジェフリー・オブ・モンマス Geoffrey of Monmouth |
ブリテン/ラテン語 | |
「キルルフとオルウェン」他 (マビノギオンより) |
− | ブリテン/ウェールズ語 | |
「マーリンの生涯」 | ジェフリー・オヴ・キマス | ブリテン | |
短詩「ランヴァル」「とねりこ」 | マリー・ド・フランス Marie de France |
ブリテン/古フランス語 | |
ブリュ物語(1155) | ワース | フランス/古フランス語 | |
「エレックとエニッド」(1172) 「イヴァンまたは獅子の騎士」(1177) 「ランスロまたは荷馬車の騎士」(1170-80頃) 「ペルスヴァルまたは聖杯の騎士」 (1180年頃、作者の死によって未完) |
クレティアン・ド・トロワ Crestiens de Troies |
フランス/古フランス語 | |
1200 | 「エーレク」、「イーヴェイン」 | ハルトマン・フォン・アウエ Hartman von Ouwe |
ドイツ/古ドイツ語 |
「パルチヴァール」(1210) | ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ Wolfram von Eschenbach |
ドイツ/古ドイツ語 | |
「トリスタン」(1210) | ゴッドフリート・フォン・シュトラスブルグ Gottfried von Strasßurg |
ドイツ/古ドイツ語 | |
フランス流布本サイクル(1215〜35) ランスロ関連のみで三部作とされることもあれば、五部作、六部作とされることもある。 |
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「ランスロ本伝」 ※流布本サイクルの一部(三部作その1) |
フランス/古フランス語 | ||
「マーリン(メルラン)」 ※流布本サイクルの一部に数えることがある |
フランス/古フランス語 | ||
「聖杯の探索」 ※流布本サイクルの一部(三部作その2) |
ゴーティエ・マップは作品完成時には死亡 末尾に名前が書かれているが完成は別人 |
フランス/古フランス語 | |
「聖杯の由来」 ※流布本サイクルの一部に数えることがある |
フランス/古フランス語 | ||
「ペレスヴォ」 | フランス/古フランス語 | ||
マーリン続編(1230〜40) ※流布本サイクルの一部に数えることがある |
フランス/古フランス語 | ||
「アーサー王の死」(1220−1230) ※流布本サイクルの一部(三部作その3) |
作者不詳 | フランス/古フランス語 | |
「トリスタンのサガ」 *この時代、フランス語からの翻訳でアーサー王関連の 「サガ」が複数、ノルウェー・アイスランドに輸入された |
修道僧ロベール | ノルウェー/ 古ノルウェー語 |
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「ランツェレット」 ※成立年代については諸説あるが、内容にヴォルフラムの影響を受けたと 思われる箇所があることから、ここでは最低でもそれ以降という説を採用する |
ウルリヒ・フォン・ツァツィクホーフェン Ulrich Von Zatzikhoven |
ドイツ/古ドイツ語 | |
「イーヴァンのサガ」 | ノルド語 アイスランド語 |
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1300 | |||
1400 | 「サー・ガウェインと緑の騎士」 | ブリテン・アイルランド | |
「アーサー王の死」(1470) | サー・トマス・マロリー | ブリテン・アイルランド /古英語? |
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1500 | 「妖精女王」(1590〜96) | エドマンド・スペンサー | ブリテン・アイルランド |
「狂えるオルランドゥ (オルランドゥ・フリオソ)」(1516) |
アリオスト | イタリア | |
1600 | |||
1700 | 「イーヴェンのサガ」 | 13世紀に輸入されたサガの紙写本版 | ノルウェー |
1800 | 「トリスタンとイゾルデ」(1885) | リヒャルト・ワーグナー | ドイツ |
「国王牧歌」(1856〜1885) | テニスン Tennyson | 英語 | |
「パルジファル」(1882) | リヒャルト・ワーグナー | ドイツ | |
「アーサー王宮廷に行った コティカネット・ヤンキー」(1889) |
マーク・トウェイン | アメリカ | |
1900 | 「薤露行(かいろこう)」(1905) | 夏目漱石 | 日本 |
1950 | 「王様の剣」(1963) | ディズニー映画 | アメリカ |
「キャメロット」(1967) | 映画 | ||
「モンティ・パイソン・ アンド・ホーリーグレイル」(1974) |
映画 | イギリス | |
「ペルスヴァル」(1978) | 映画/エリック・ロメール | 仏・西独・伊 | |
「エクスカリバー」(1981) | |||
「アヴァロンの霧」 (和訳版1988、ドラマ2001) |
小説/ドラマ | ||
2000 | 「キング・アーサー」(2004) | 映画 | アメリカ |
アーサー王の伝説は、少しずつ付け足されながら変容していったものなので、時代ごとに内容(ストーリー、家族構成、キャラクターの所持品など)が異なる。多く感じるかもしれないが、1900年以降に作られた、おびただしい数のアーサー王伝説にまつわる作品を見ていると、むしろ、いま残っているものが「これだけ」なのであって、消えていった作品は数知れないと思う。
現代人が持つ「アーサー王伝説」のイメージはおそらく、ヨーロッパが暗黒期に突入する直前の、「騎士」という職業が、権威あるものとして確立されていた時代の作品群だろう。華やかで、儀式的な騎士社会、よく知られた騎士の甲冑などは、16世紀あたりに形成されたものと考えられている。
中でも特に日本人が持つアーサー王伝説のイメージは、近代の映画に大きく影響されているような気がする。
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【注釈】
かつては、アーサー王伝説はケルト由来/ケルト起源だと語られることが一般的だった、2017年時点では「島のケルト」と呼ばれていたものは実はケルトではなかったという結論がほぼ確定となっている。そのため、このサイトではアーサー王伝説は「ブリテン島の古伝承の一部」として扱うことにする。(見つけたら随時修正…)
・考古学的に、ケルト人が鉄器時代の始まりにブリテン島やアイルランドに渡った証拠が出てこなかった。
・遺伝子調査をしてみたら大陸からケルト人が移住した証拠がなく、ブリテン島およびアイルランド人の大半は氷河期の終わりにイベリア半島から移住した人の子孫だった。
・ケルト語についても、本来のケルト人である「大陸のケルト」が話していたという根拠が揺らいでおり、言語学者によっては大陸のケルトはゲルマン系の言語を話していたのではないかと述べている。少なくとも、中央ヨーロッパに住んでいたケルト人の言葉がケルト人の拡散とともに広まったという説は今では否定されている。
※つまり今までに出版された多くの本は、前提の部分で間違えてたということである。これから書き換わっていくと思われる。