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<特定商取引法について>
15.特定商取引法における業務提供誘引販売取引について(2)
司法書士 小楠展央
今号は、前号に引き続いて特定商取引法における業務提供誘引販売取引に
ついてご紹介します。
1 前号に掲載した相談例について
前号に掲載した相談例は、とても興味深いものでした。相談の内容について、
少しだけ分析しておきましょう。
相談者は、求人広告を見て「月収30〜50万円以上」の収入を得ることが
できると思い、広告主の事務所を訪ねました。そして、事務所で説明を受けた
時に、運送の仕事を紹介してもらうことができると言われました。ただし、
仕事を紹介してもらうには、広告主に入会金や月払いの会費を納めなければ
なりませんでした。また、相談者は、運送の仕事をするために、広告主から
紹介された自動車販売業者で軽貨物自動車を購入しました。
つまり、相談者は、広告主が紹介する運送の仕事をすることによって収入を
得ることができると誘われて、広告主に入会金などを支払い、自動車販売
業者に軽貨物自動車の購入代金を支払ったことになります。したがって、
相談者が広告主や自動車販売業者との間で取り交わした一連の契約が
業務提供誘引販売取引に該当すると考えてよいと思います。
2 広告に記載すべきこと
ところで、特定商取引法は、業務提供誘引販売業を行う者に対して様々な
規制を設けています。紙幅の都合上、その規制のすべてをご紹介することが
できません。そこで、広告に関する規制を採り上げて、それを簡単にご紹介
しようと思います。
特定商取引法は、業務提供誘引販売業を行う者に対し、業務提供誘引
販売取引に関する広告をする際に必ず表示すべき事項を定めています。
そして、その表示すべき事項は、とても細かく定められています。相談例の
広告の内容を例にとってお話ししましょう。
例えば、相談例の求人広告には「開業費」がかかる旨の表示があります。
しかし、具体的にいくらかかるのかは表示されていません。この点について、
特定商取引法は、単に経済的な負担がある旨だけではなく、その金額を
明示しなければならない、と定めています。
また、相談例の求人広告には「月収30〜50万円以上可」の表示が
あります。しかし、特定商取引法は、そのような月収例を表示する場合には、
それだけの月収を得ることができると表示する具体的な根拠―例えば
それだけの収入を得ている者が取引した者全体の何パーセントいるのか
など―を示さなければならない、と定めています。
それら広告に表示すべき事項は、その広告を目にした者にとって、広告主に
連絡をするか否か、あるいは取引をするか否かということを判断するうえで、
いずれも重要なものです。ですから、広告に表示すべき事項を適切に
載せていなかったり、誇大な内容を載せていたりしたときには、その広告主に
対して行政指導や一定の制裁が加えられることになっています。
3 意外と身近にある取引
さて、筆者は、前号で、業務提供誘引販売取引は意外と私たちの身近に
ある、ということをお伝えしました。実は、この取引のことを内職商法とか
モニター商法などと紹介する冊子などもあります。しかし、この取引は、
相談例のように、内職商法のようなものに特有の問題というわけでは
ありません。
筆者がみなさんに特にお伝えしたいのは、新聞や求人誌、ウェブサイトなどに
掲載されている広告の中にも、この取引に関するものが含まれていることが
ある、ということです。
(以下、次号に続く。)
14.特定商取引法における業務提供誘引販売取引について へ
16.おわりに(最終回) へ
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