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<特定商取引法について>
14.特定商取引法における業務提供誘引販売取引について
司法書士 小楠展央
今号は、特定商取引法における業務提供誘引販売取引についてご紹介
します。
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一般に「内職商法」とか、「モニター商法」などと呼ばれるもので、特定商
取引法では「業務提供誘引販売取引」と表現されます。この取引は、
(読んで字のごとくですが…)業務を提供すると言って誘い込んだところで
商品を販売する、というものをイメージしていただくとよいでしょう。
2 身近に
この業務提供誘引販売取引も、連鎖販売取引と同じように、意外と
私たちの身近に存在しています。特に、就職活動中の方や、これから何か
副業でも始めてみようという方は、気付かない間にこの取引を目にして
いたり、時にはこの取引の当事者になってしまっていたりすることも
あります。
3 相談例から
こんな相談がありましたのでご紹介します。
私は、今年の春までサラリーマンをしていました。残業や休日出勤が
減り、私の給料では生活費をまかなえませんでした。妻には持病が
あり、思うように仕事をすることができませんでした。また、一人娘から、
高校を卒業したら、専門学校に行きたいと言われました。私は、
このままではどうにもならないと思い、もっと稼ぎの多い仕事を探し
始めました。
そのような時、運送業らしき求人広告を見つけました。その広告には
次のようなことが書いてありました。
給与 : 月収30〜50万円以上可
仕事内容 : 軽貨物運搬。荷物は食品、事務用品、仕出し弁当など
様々。
資格 : 学齢・年齢不問、未経験者歓迎、要普通免許
勤務地 : 勤務可能な範囲で配達していただきます
その他 : ※手持ち車輌でも開業可(軽の1BOX、軽トラック、他)
応募 説明会随時開催。「ちょっと興味あるだけ」という方も歓迎。
開業費・車両費は分割払いも可。
私にとって、「30〜50万円以上可」という月収がとても魅力的でした。
私は、さっそく広告主の事務所を訪ね、担当者から様々な説明を受けました。要するに、私が個人事業主として軽自動車を使った運送業を営み、広告主が私に荷主を紹介してくれる(仕事を紹介してくれる)、
というものでした。入会金を約30万円、その他に毎月約1万円の会費を支払わなければなりませんでしたが、仕事は100%紹介してくれるとのことでしたので、私は、この仕事を始めようと決心しました。なお、運送業で使用する軽貨物自動車も、広告主の紹介で月賦で購入することにしました。
いろいろな契約の手続きを済ませ、納車や営業ナンバーの取得も済み、私は、「これから思いきり稼ごう!」と思っていました。ところが、広告主が紹介してくれる仕事は、いわゆるポスティングや荷物の仕分け作業などばかりでした。荷物を運ぶ仕事も紹介してくれましたが、その仕事では、購入した軽自動車を使うことはなく、紹介先の1トン車を運転しました。
どんな仕事でも、毎月30万円以上稼げればよかったのですが、半年ほどやっても、30万円以上稼げた月はありませんでした。今では「サラリーマンを続けていた方がよかった」、と後悔しています。 |
(以下、次号に続く。)
13.特定商取引法における連鎖販売取引について(3) へ
15.特定商取引法における業務提供誘引販売取引について(2) へ
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