|
<特定商取引法について>
16.おわりに(最終回)
司法書士 小楠展央
今号は、いわゆる「送り付け商法」とか「ネガティヴオプション」などと呼ばれる
問題について、特定商取引法の規定を踏まえてご紹介します。
1 送り付け商法とは
その言葉のとおりです。つまり、注文もしていないのに商品を送り付けてきて、
その商品代金の支払を請求するというものです。筆者が最近耳にした典型
的な送り付け商法は、食用のカニを宅配で送り付ける、と いうものでした。
2 受け取っただけで契約が成立してしまうか
宅配で商品が届いたとき、注文した覚えがなかったり、差出人を
知らなかったりしても、ついついその商品を受け取ってしまうことがあります。
販売業者の中には、「受け取った時点で契約が成立した。」と言い、代金の
支払を請求する者がいます。しかし、宅配で届いた商品を受け取った
だけでは、その商品を買ったことにはなりません。
3 梱包を解いたら契約が成立してしまうか
商品を受け取った後、梱包を解いて中身を見たくなるのは人情でしょう。
では、梱包を解いたら買ったことになってしまうでしょうか。このようなことまで
法律に書いてあるわけではありません
が、法学部の教授(法学者)・裁判官・弁護士・行政(経済産業省)は、
よほどのことがない限り梱包を解いただけでは買ったことにはならない、と
言っています。
4 黙っていたら契約が成立してしまうか
梱包を解いてみると、商品と一緒に「購入する意思がない旨の通知を
しなければ購入したものとみなします。」とか、「購入しないのであれば
返送せよ。返送しなければ購入したものとみなす。」などと書かれた紙が
入っていることがあります。しかし、「購入しない」旨の通知を送らなかったり、
商品を返送しなかったりしても、その商品を買ったことにはなりません。
5 商品を使ったら契約が成立してしまうか
商品を使ってしまったり、傷をつけてしまったりしたようなときはどうでしょうか。
このようなときは、ケースバイケースで結論が異なります。一般には、商品を
使用したり、消費したりすると、買ったことになってしまうと言われます。
なお、この点について、筆者の私見を述べておきましょう。
まず、送り付けられたカニを食べてしまったような場合は、買ったことになって
しまったとしても仕方ないように思います。しかし、そもそも一方的に商品を
送り付けてきた販売業者が異常と言えます。したがって、カニを食べて
しまったとか、受け取った人が自分のものではないことを承知で商品に
傷をつけるなど、よほどの事情のない限り、買ったことにならないように
考えるべきだと思います。
6 いつまで保管
以上のとおりですので、注文していないものが届いたときは、できるだけ
傷つけないように梱包の中にしまっておくのが無難でしょう。
しまっておくことにしたとして、いったいいつまでその商品を保管すれば
いいでしょうか。誤解を恐れずに言えば、商品が届いた日から14日間
保管するのが無難です。
そして、宅配の受取伝票など、受け取った日を調べることができるものを
なくさないようにしましょう。その間に、送り付けた業者がその商品を
引き取らなければ、法律によってその業者は商品の返還を請求できなく
なります。
7 最後に
この連載は、今回が最終回です。人のやることに「絶対ということはない」と
いってよいでしょう。誰でも契約トラブルに遭う可能性があります。この連載を
読むことで、読者のみなさんにとってそのようなトラブルの回避にすこしでも
役立つとしたら、筆者にとって望外の幸せです。
15.特定商取引法における連鎖販売取引について(2) へ
|
|
|
|
|
|
|