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<新しい貸金業法>
2. 上限金利が変わります
司法書士 青島学海
「連載〈新しい貸金業法〉第2回は金利の制限についてです。
金利は、お金を借りた場合の対価、言わば利用料です。金利は借りた元金に
対する割合(利率)で定められますが、幾つかの法律で上限利率が制限されています。本稿では、クレジット会社やサラ金業者のような貸金業者から「お金を借りる」場合に適用される金利の仕組みを解説していきます。今回の連載は、新しい貸金業法についてですが、新法をより理解していただくために、まず改正前のことから説明をしていきたいと思います。
さて、金利を定めた法律というのは幾つかありますが、その一つに出資法という法律があります。出資法は、この法律に定められた金利を超える金利で貸付けを行うと刑事罰の対象となる、つまり刑事上の上限金利を定めている法律です。もう一つ、民事上の上限金利を定めた法律が、利息制限法という法律です。この法律は、借入れの残元本に応じて民事上有効な金利の上限を定めています。
これに対して、改正前の貸金業法(旧貸金業法)は、前述の出資法や利息制限法とは別に、クレジット会社やサラ金業者等が貸主となる場合の、刑事上・民事上の上限金利の特例を定めていました。特に民事上の上限金利については、一定の条件を満たしている場合には、年利29.2%を上限としていました。利息制限法が定める上限金利が年利20%(残元金が10万円未満の場合)であったことから、この差をもって「グレーゾーン金利」等と呼ばれるようになりました。
そこで、サラ金業者やクレジット会社は、こぞって上限金利やそれに近い金利で貸付を行っていました。仮に年利29.2%で50万円を借りた場合、1ヶ月後に支払う利息はいくらになるでしょうか。利息だけで、実に1万2000円にもなるのです。つまり、1ヶ月後に2万円を支払ったとしても、元金は8000円しか減らないのです。
それでも、二度と追加借入をせずに返済だけをしていれば、3年あまりで完済することができますが、想定外の出費のためにやむを得ず追加借入をしてしまうことも珍しくはありません。そうなると、残高は50万円から一向に減少しない、ということにもなりかねないのです。
ところが、裁判所は、こうしたサラ金業者等の取引にストップをかける判決を出しました。その判決は、サラ金業者等が、法律の定めた一定の条件を満たしていないにもかかわらず、高金利での貸付をしている、と判断しました。また、併せて「一定の条件」を満たすかどうかの考え方も示され、その考え方に従えば、サラ金業者等が一定の条件を満たす取引をすることは、極めて困難な状況となりました。
そこで、今回の貸金業法の改正に際し、ほぼ存在意義のなくなったグレーゾーン金利は廃止されることになり、サラ金業者等が、利息制限法の上限金利を超える金利を取ることは不可能になりました。
一方、法律の改正前からグレーゾーン金利で取引をしていた場合には、依然として高金利が適用されていることがあります。また、現在は利息制限法内の利率に変更して取引を継続されている方も、過去にグレーゾーン金利での取引をしていた場合には、利息制限法の金利で利息を再計算すると、借金の額が減少することも少なくありません。心当たりのある方は、一度法律専門家に相談することをお勧めします。
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