種の起源:第4章の概略的なメモ

自然選択(自然淘汰)natural selectionに関する章

第0段落

遺伝する変異、存続をめぐる争い、自然選択、

これらがあれば生物は

自律的に種分化を起こし

無限に種を生み出し続ける。

そしてそれは生命の樹:Tree of life を作り上げる

 

 2008.08.03

 もろもろあってノート以前に検討課題を概略的にメモ。おいおいメモからノートへ展開の予定。以下はメモ

 

 段落01

→:有益でも有害でもない変異には自然選択の力がかからない、ということについて

 ダーウィンがこの章の冒頭で、

Variations neither useful nor injurious would not be affected by natural selection, and would be left a fluctuating element, as perhaps we see in the species called polymorphic.

有益でも有害でもない変異は自然選択の影響を受けないだろう。そしてそういう変異は変動的な要素のままだろうし、おそらく多型的な種において見られるものがそれなのだろう。

と述べていることは、現在でいう中立遺伝ということになります。さて、この記述は第4章ではあまり展開しておらず、むしろ第5章で意味を持ち始める様子。現在の私たちは中立遺伝が確率的に固定されうるということを知っていますが、ダーウィンはもはや必要のなくなった器官が退化して痕跡的な器官になってしまったのはなぜか? という点において(逆説的に?)この知識を使っているように感じました。必要がないというだけなら退化まではしませんからね。そうした内容はおいおい検討の上、第5章のノートで展開の予定。2008.08.03

 

 段落01のおまけ:ダーウィンの言うcommunity と訳文について→ 2009.03.31

 

 段落02:Sexual Selection 雌雄選択

→:もろもろ論ずるにしても雌雄選択は存続をめぐる争いよりも結果が厳しくないので、雌雄選択を受けて発達した形質はかなり変異が大きい(選択の圧力が弱いから)、というダーウィンの見解は注目。以上の段落01における中立的な変異に関する見解も関連しています。しかしそのあたりの話はむしろ第5章で展開→ 2008.08.06

 

 段落03:Illustrations of the action of Natural Selection 自然選択の作用の例、自然選択の働きを例証する

 段落04:On the Intercrossing of individuals 個体間の交雑について

→:侵入植物に見る存続をめぐる争い、系統や生態の違いによる存続をめぐる争いの程度の違いに関して

 第4章でダーウィンは侵入植物の観察から、他国に侵入した植物はお互いに異なる属であることがしばしばであり、かつまた現地にいる植物とも異なる属である、という結論を出しています。属という分類単位が系統なり生態なりをおおむね示すとした場合、彼によるこの指摘は存続をめぐる争いがある以上、近縁のもの同士は共存することが困難であること、生態が異なっているものほど共存が可能であるという、彼自身の考えを実証しています。

 このことは日本に侵入してきた数多くの侵入植物を観察することでかなり実感がもてるのではないかと思うので、その件に関してノートを展開の予定。2008.08.03

→:雑種強勢とその説明、およびこの現象から予測、あるいは説明できる事実に関して

 ダーウィンがこの章でかなりページをさいたのが、異なる血統なり品種なり集団なりを交配させた時、それによって生まれた子孫の背丈が高かったり、成長が速かったり、種をたくさんつける現象、いわゆる雑種強勢(ヘテローシス:heterosis)。雑種強勢という現象をもとに考察すると、例えば植物が自家受精を避けること、多くの植物で昆虫に花粉を運ばせるような適応をとげていることを説明できます。ではなぜ少なからざる種類の自家受精植物がいるのか、そもそも自家受精植物の花はなぜわざわざひらいているのか? そうしたことに関する考察はダーウィンの別の著作「植物の受精」も含めて考える必要があります。もちろん、現在の論文も。というわけでノートに展開の予定。

 ところでスミレが閉鎖花をつけるのは知っていましたが、咲いている花が何の昆虫によって送粉されるのか知らないんですよね。同様のことはツユクサについても言えます(まあ、これは北村個人が知らないってだけの話なのですが)。送粉昆虫の種類や閉鎖花も含めて要観察。2008.08.03

 なお、雑種強勢という利益が昆虫による花粉の送粉という適応をもたらしたこと、そこから花と昆虫の共進化の道が開けたこと、こうしたもろもろの考察に関しても要検討。2008.08.06

 

段落05: Circumstances favourable to Natural Selection  自然選択にめぐまれた環境

→:どのような環境が種の形成に関して有利か?

 ダーウィンはこの第4章におけるひとつの段落、Circumstances favourable to Natural Selection において小さな集団よりも大きな集団の方が新種の形成に有利であると主張しました。しかし実際には、あるひとつの変異が定着する時間でいうと小集団の方が速いので、これをもってダーウィンは間違っていたと評価されることがあります(文献/発言の出典はうろ覚えなので要調査)。ダーウィンはメンデル遺伝(発見 or 再発見)以前の人ですから現代の私たちとは変異の定着に関する考え方が違います(詳しくは第5章も参考のこと)。彼が小集団よりも大集団の方が新種形成に有利であると考えた理由のひとつはそれでしょう。

 しかしダーウィンが種形成に関して論じていることは時間が速いというだけではなく、たくさんの種が生成されて、なおかつ存続をめぐる争いで有力になり分布を拡大する種が誕生するか? という主旨のものです。それを考えるとこの段落の題名も”自然選択が効果的に働く環境”とでも解釈するべきなのかもしれません。2008.08.06

 また、彼は混合遺伝で考えていたので(典型的には赤+白=F1世代はピンク)、現代人と比べると相対的に自然選択の効果を弱く考えていたようです。実際、理論的にはそうなるでしょう。自然選択を相対的に弱いと考えていたらしいのは、混合遺伝に基づいた理論的な帰結であるらしいへ 2008.08.06→ 

段落06:Extinction 絶滅

段落07:Divergence of Character  形質の分岐、あるいは系統の放散(意訳)

 

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