第三章 生協紛争から学園紛争へ

  第二節 学生間の対立 ─生協問題関係資料より─

 新しい年度に入ってからの「阪大生協事件」の様相は一変してしまい、当事者である生協理事会と生協労組はあまり表面に出なくなり、それぞれを支持する阪大学生組織がその斗争の代行をするようになった。正直な話、当事者はこれまでの斗争により、その力と意欲をまったく喪失してしまったのに対し、学生側は新たな新陳代謝をうけ、無内容に従来の問題点をむしかえすことであってさえも、その力と意欲を保持しつづけていた。しかしそれを記録するにあたっては筆者のペンを通すよりも、彼らの発行するビラを直接、紹介する方が、その進行が生々しく感じとられると思われるので、本節でもこの方法をとろうと思う。

資料1 五月二○日付 教養部自治会執行委員会発行ビラ
 暴力と不正によって生協に巣食う不良従業員を阪大から一掃しよう
 理事会は不正と暴力の不良従業員に屈せず最後まで全力をつくせ!
 本日より生協業務ストップ!
 生協崩壊、益々、深まる

 生協関係七十業者の連名による納品ストップ通告(五月一四日)が総長、理事会、大阪府民生部に出され、生協業務は完全にストップした。納品ストップがもたらした業務の停止は、生協崩壊の危機が益々深まり、生協の再建がほとんど不可能になっていることを示している。一従業員が理事会の意向を無視し、生協法、定款に違反して独断で行なった外販活動に端を発した生協斗争は、不正(外販活動、不法スト、サボタージュ、自主管理)と暴力事件の中で益々長期化した。外販活動、自主管理、暴力は、生協が本来有している<よりよいものをより安く>の原則を葬り去り、全大学人による大学自治に対して公然と挑戦するものであった。今や「生協」は、一部従業員の度重なる不正と暴力により学生生活と大学自治を守る上での最大の敵対物になっている。

 現在の生協は阪大全体の敵対物に転化す!
 不正と暴力の吹きだまり=生協

 生協一従業員の不正と暴力は生協活動に重大な支障をきたしていることのみならず、大学の自治を内部から破壊し、阪大の社会的信用をまったくおとすものであった。現在の問題点としては、第一に元暴力団員を含む元従業員らが中心となって生協施設に居すわり実質的な自主管理が行われていたこと。第二に約二千七百万円の負債をかかえていることから生協の民主的再建を語ることは不可能同然である。それは納品ストップ、業務停止によって決定的になった。生協斗争は、はじめから単に「メシが食いたい」から斗いを行なったのではなかった。生協の一部従業員の生協の食いつぶし(当時は外販活動)を防止し大学の民主的機関運営を確立し、平和的秩序を守りぬく斗いとして組織されたものであった。暴力団員を含んだ暴力に対して全大学人が暴力を根絶する斗いとして組織されたものであった。学生、教官全体は、一時的困難にも耐え不正と暴力に反対する方向を組んだのである。総代会(一月一三日)の六百名参加の圧倒的成功、暴力糾弾集会に学生は自ら参加して、そのことを示した。(一月二四日、学生千名参加)長期にわたる生協斗争の過程で、石橋地区の従業員約百名は現在二十から三十にまでなった。従業員の良心的部分は非民主的労組を脱退し、残りの十数名の従業員は、ほとんど外販活動の経験者である。系統的に組合員の資金を食いつぶしていたのである。解雇された従業員は勿論、残りの部分も又完全に腐り切っている。理事会は自らの責任=不正と暴力の従業員を徹底的に排除することによって、全組合員に信を問うべきである。我々はそのために全力をあげるだろう。暴力と不良従業員の一掃なくしては、生協の存続はありえないのだ。暴力、不正を阪大から排除する道は全組合員、学生、教官の総意をもとに、大学の管理責任者(学生部長、総長)が責任ある態度を示すことである。大学の社会的信用をおとし、大学の自治能力が問われている時、責任ある態度の公的発表以外にはない。

資料2 五月二四日付 生協刷新委員会発行ビラ
 本日生協再建への大衆団交に参加しよう
 生協危機の唯一の解決策
 △解雇のタナ上げ
 △理事会と労組の協力
 △総代会改選即時実施を!
 △理事会はクラス決議を無視せず団交に出席せよ!
 生協全組合員諸君、阪大生協の生死を明日までにわれわれは決定しなければならない。われわれは現在の生協危機の唯一の解決策を以下に求め、今日まで理事会に要求してきた。(1)四人の解雇のタナ上げ
(2)理事会、労組の一致協力
(3)総代改選の即時実施
 そして文1−1、文1−2,法2−1,法2−2,医1−1,工1−10、基1−6、医2−1等のクラスにおいても、同趣旨の決議がなされ、組合員としての要求を明白に理事会につきつけてきた。にもかかわらず理事会はわれわれのまったく正当な要求に対して冷笑し耳さえ傾けようとしなかった。現在の生協が納品ストップの状態にあり、一般組合員がかなりの迷惑を受けているにもかかわらず、理事会は、四人の解雇のみを叫び続けてこの事態に対する責任ある処置を行ってこなかった。一般組合員が真剣に生協の事態を心配し、解決策を示してきたにもかかわらず、理事会は無視し続けてきたのだ。われわれ組合員は、定款にもあるように「その出資口数、出資額の多少にかかわりなく平等の議決権、及び選挙権を有し、組合の事業の利用については平等の利益をうける。何時でも理事会に対し組合に対し、組合の備え付けの帳簿その他の閲覧を求めることができる」存在なのだ。組合員の意見通りに理事会が運営されるべきなのだ。その様なわれわれの権利を無視し、われわれを代表していないにもかかわらず、代表としてふるまっている理事会をわれわれは断じて許す事はできない。われわれの唯一の意思を表明できる総代選挙さえも、定款に違反してまでも、行わない理事会に対してわれわれが一体何をできようか。
 われわれに残された唯一の道は、大衆団交であり、それ以外にはあり得ない。不当な理事会に対しては、組合員はその意思を団交によってしか反映しえないのだ。総代改選を延ばし、自己の無責任と無能振りをインペイしようとする理事会に対し、われわれの要求をつきつけ、認めさすのだ。われわれ組合員が大衆団交の席に出席するかぎり、理事長はわれわれに説明すべきなのだ。欠席し、逃亡することは断じて許されない。理事会は、大衆団交に出席し、われわれの要求を認めよ。われわれ組合員はそれを要求する権利があり、理事会は従う義務がある。

資料3 五月二五日付 生協刷新委員会発行ビラ
 昨日の理事会との大衆団交五○○名参加す!
 理事会の出席拒否=無責任と組合員との対話拒絶を我々は許せない
 本日、昨日の団交出席者の名に於いて再度団交を要求する
 再建案を何ら持っていない現理事会を大衆的に批判して、総代改選を通じて全組合員的  に生協防衛、再建の意志と方針を確立しよう!
 本日の業者と理事会の会談を全組合員が監視しないと生協は潰されてしまう!
 
 あくまで団交出席を拒んだ理事会の意図は何か。ここ一週間の業者の納品ストップによって、終に行くべきところまで来た生協危機を全組合員的に打開するべく、我々は団交を呼びかけて来た。又、各クラスに於てクラス決議等の形でこの団交への積極的な取組が行なわれた。しかし理事長、学生理事等理事会側は、この大衆的な動きを無視して、あまつさえ暴力を振ったり、学生部に会場使用取消しの圧力をかけたりの妨害に出てきたのだった。だがこの卑劣な策動も、会場に、理事会批判の意志の下に参加した五百名余の組合員の理事会に対する不信と怒りをメめただけであった。
 本日の業者と理事会の会談は阪大生協の岐路である。こうして、生協再建の一切の努力を放棄し、組合員の前から必死で逃亡していた理事会も、今日は業者との会談に応じなければならない。何故なら今日彼らが何らかの再建案を業者に提示しない限り、生協にとって取り返しのつかない事態の生ずることは必至なのだから。しかし我々は理事会が業者と組合員に対して説得力のある再建案を出すかもしれないという幻想を持つことは最早全くできない。すでに今日までのすべての事実が彼らにその能力も意志もないことを明白にしているのだ。だから、我々が今手をこまねいていれば、理事会は生協を潰してしまうに決まっている。もう彼らに生協をまかせておくことは指の先程もできないのだ。
 昨日の団交参加者の名に於て我々は今日再び団交を呼びかける。今こそ、組合員の決起が切望されている時はない。生協は我々のものであり、この危機を打開できるのも、又我々だけである。理事会は団交に応じる義務がある。それ以上に我々には彼らの責任追及をする権利と責任があるのだ。阪大生協再建と防衛の為に、総ての組合員が本日の団交に再度参加されんことを呼びかける。

資料4 五月二七日付 自治会ニュース・教養部自治会執行委員会発行ビラ
 反戦者会議、生協刷新委の暴力行為を全学生の名で糾弾する!
 一昨日〜昨日、暴力学生数十名が学生理事、自治会役員、教官を軟禁、暴行す
 ○他大学を含む暴力学生、学友、教官に暴力を振るう
 一昨日から翌朝に渉って、阪大「反戦者会議」、生協「刷新」委員会の学生数十名は、学生理事、阪自連の役員に対して集団的テロル、リンチを行なった。十二月生協斗争以後不正を隠ペイする為に使われてきた暴力を、彼ら一部暴力学生はまたも公然と行ない、しかも止めに来た教官に対しても暴力を加えるありさまであった。大学の自治を内部から破壊する彼ら一部学生の行為は、全学生の名で断固糾弾されなければならない。一昨日の昼、反戦者会議、生協「刷新」委員会の学生数十名は理事会を行っているところに殴り込み、学生理事ヤマミネ君を引きずり出し、数時間にわたって殴る、ける、引きずり回すの暴行を加えた。(ロー大講)監禁された学生を救助に来た学生に対してバリケードを築き、排除した一部学生は更に説得に来た教官に対しても、暴行をもって答えた。その後、彼らは自治会の役員を芝生に連れ出し、コン棒で武装した上に、延べ十数時間にわたって学友を監禁、助けに来た宮山寮生に対しても暴力で答えた。
  ○生協の不良従業員も暴力学生に同調
 この暴力事件に終始一貫同調し、暴力をあおっていたのは、K(仕入係)、K(主任)ら生協の不良従業員であった。解雇されたこれらの従業員が今もって大学に居すわりを続け暴力学生とゆ着していることは、この事実だけでしても明らかである。生協斗争の中で不良従業員と反戦者会議の学生は系統的に、且つ組織的に暴力を行なっている。今や、暴力学生、不良従業員によって、大学の自治は危機にさらされている。
 ○今こそ全大学人の手で、学園から一切の暴力を根絶しよう!
 十二月以降の生協斗争は、単に「生協」の内部問題では決してない。生協に巣食う不正と暴力の不良従業員を追放し、生協を大学の民主的機関に再構築するため、全学あげての斗いであった。不正と暴力を批判する声はますます高まりつつある。昨日の暴力事件の際教養を中心とする先生が、暴力排除のために積極的に行動された事は、教育者の立場からは当然であるとはいえ、このことを如実に示すものである。教官、学生の統一した力で大学から暴力を追放するために立ち上がろう!

資料5 五月二七日付 大阪大学反戦者会議発行ビラ
 生協再建に敵対する分子は誰か!
 ○デ学同系学生、大衆団交になぐりこむ!
 二十五日正午よりロ号館大講で開かれた<理事会と組合員との大衆団交>に、同夜七時頃、デ学同系学生三、四十名が、突如、トビラの鍵をぶち破り、止めようとした数名の学生を、押し倒し、団交を破壊するという全く破廉恥な暴挙に出たのである。当日の団交に我々は、やっとの思いで、学生理事(ヤマミネ常任理事)一人の出席を勝ち取り、理事会の再建案(当日業者に提出する筈の、阪大生協の死活にかかわるもの)を我々組合員の前に提示するよう要請した。だが彼、ヤマミネ常任理事は、再建に関して一切黙して語らず、聞く権利のある我々団交に出席した五○○名に対し、ふてぶてしい態度をとり続け、あげくの果てに、議長のT君をなぐるという、全く理事としての責任と義務を放棄したのである。彼ヤマミネ君の、否、理事会自体の組合員無視、非蔑視の態度(ヤマミネ君をある程度の強制力でもって団交の場につれてきたのは、正に連絡も十分おこなったし、又自発的に参加すべきその任務の放棄故のことで、全く、理事会として恥ずべきことではないか!)のため参加した組合員全員の怒りをかった。そのように、一向に進展しない団交の収拾をはかるため、生協刷新委員会、反戦者会議の呼びかけで、教官を介した妥協案を出して、教官がヤマミネ君を説得していたその真ただ中に、突如、デ学同系学生理事救出のためと称し、なぐり込んで来たのである。その場の混乱に乗じて、ヤマミネ君は逃亡してしまった。その後を追った反戦者会議諸君に対し、デ学同系学生は暗いことをいいことに集団リンチを行ない、我々は、なぐり込みの責任者と自称するヒロサキ、ナルヤマ、ニイミ君等(いずれもデ学同)の責任を追及し、自己批判をせまった。が、あくまでも拒否し続けるため、なぐり込みの際、現場に居あわせた教官に状況を大衆の前で、述べてもらい、確認事項とした。
 デ学同系学生によるこのような暴挙は、彼らの危機感=組合員大衆の生協問題参加への恐怖、故であることを我々は、はっきり見なければならない。この事は、同時にデ学同の従来の路線の完全な破綻を証明する事でもある。「理事会は完全な再建案を持たない」(デ学同ヒロサキ君)とか、「現在の生協は潰れてもかまわない」(殆どのデ学同発言)とか広言してはばからないデ学同を打倒しなければ、生協の再建を云々する余地は全くない。
 ○大学当局=国家権力の介入を阻止せよ
 大学当局にとって、生協の存在は極めて目障りである。それよりも権力に従順に従う業者の方が余程ましであろう。大学の自治と学生運動に対する弾圧が厳しくなる中で、かなりの大学(東京理科大、お茶の水大、千葉大等々)の生協が苦汁をなめさせられている。大学側の意図は、当面、デ学同、民青同の生協破壊に手を貸しながら、学生がキャンパスから消えた夏休みに、一挙にケリをつける予定であろう。(官憲の学内導入が休みであったことを想起せよ)(注・この予想は正しく、その年の七月、一つの生協食堂がとりあげられ、業者導入がなされた。)即ち、業者の導入か、大学事業部への改組という形であろう。現在のスケジュールはかなり進行していると言わざるを得ない。警察権力としては、公安部を総動員して、思想調査とどう喝を企てているといった所であろう。即ち、阪大生協の当面の敵はデ学同、民青同であり、真の敵は国家権力、大学当局である。
 ○現理事会の生協破壊を許すな!
 二十日からの納品ストップという事態を招いたのは、明らかに、理事会のその無責任、怠慢にある。納品ストップから一週間、理事会は事態の解決をますます困難なものにしてきている。八クラスのクラス決議、五○○名の組合員参加の5・24大衆団交無視、総代改選のサボタージュ、新入生の組合員の未獲得、再建への物質的基盤となる労組への敵対等々枚挙にいとまがない。このような組合員無視、無責任、無能の理事会、デ学同学生理事を通じておこわれるデ学同の党利党略にとらわれ、生協の再建(破壊と読む)工作に狂奔する理事会を即時解散し、生協再建の大衆的運動を展開していこうではないか!
 ○あらゆるデマと妨害をハネのけ連日の団交に結集しよう!
 二十五日、理事会が提出した再建案は再び業者によってケラれた。業者代表も出席率が悪かったため、三日後に、再度、理事会と業者が再建案を提出することになった。学友諸君、諸君の団交への参加によって理事会に具体的現実的再建案を押しつけ、生協問題を真に解決することは充分可能である。デ学同諸君の暴力行為、民青同諸君のデマと生協乗っ取り、大学当局の生協破壊工作をハネのけ、連日の団交に結集しようではありませんか。この敵の姿を鮮明に把握して大学の自治、生活防衛の拠点たる生協を守りぬこう。

資料6 五月二九日付 サンケイ新聞
 阪大生協の紛争
 教室占拠、講義もできず
 理事を軟禁騒ぎ
 大学側、“自治破壊”と処分検討
 大阪大学生活協同組合の紛争はその後、具体的な収拾策が講じられていないが、最近ではこの問題が学生運動の抗争にまきこまれ、デ学同系の生協学生理事を反対派が軟禁したり、三派系学生の教室占拠で講義がお流れになるなどの事態を引き起こし、大学はじまって以来の学園騒動に広がってきた。このため大学当局は二十八日、岡田実総長をまじえ、緊急部局長会議を開き、過激な学生行動は大学の自治を破壊する!との見地から、学生の処分を検討することになった。
 一部学生の動きが激しくなってきたのは、納品業者が約二千六百万円の売掛金の回収に不安を持ち、さる二十日から全商品の納品をストップしてからのことで、とくに石橋地区(豊中市)の大学構内では連日、集会やビラ合戦をくり返し、生協理事(定員=教職員、学生十人ずつ)の責任追及の声が強くなった。二十七日の昼休み、教養部自治会がロ号館大講義室で生協問題をめぐる討議集会を開こうとしたさい、生協刷新委員会、反戦者会議(三派系中心派)の学生がなだれこみ、夕方まで居すわった。このため午後からの国文学、保健体育の二講義が教官の説得にもかかわらず開けず、ついに中止された。また、二十六日には、生協理事長のK慎一法学部教授の部屋に学生が押しかけ、生協の学生理事ひとりを強引に連れ出し、同日夜から二十七日にかけ両派が学内の広場でこづきあうなどの小暴力が一晩中くりかえされた。理事会では、二十八日のひる休みに学生との団交を開き、K理事長が現状と再建案の説明をして学生の協力を要請したが反応はなかった。同大学は、ことしの入学式で岡田総長が「暴力学生は処分する」との強い態度を表明しているだけに、こんどの一連の騒動を異常事態とみており、さらに新入生が多数、騒動に参加した事実を重くみて、暴力や教室占拠事件は調査のうえ処分を考えるとともに、新入生には学生指導のキメ細かい対策をねっていく。また、生協の紛争がこれ以上長びけば学生の厚生面からも放置できないので、大学側が直接問題解決にのり出すことも検討されている。
 岡田総長の話「学生が教室を占拠して抗議をボイコットさせたことはもってのほかで、大学自治を破壊する行為は許せない。生協の紛争が長びいているのは大学としても残念なことだ。理事会が早急に態度を決めて善処してほしい」

資料7 六月二○日付 サンケイ新聞
 阪大の生協紛争
 暴力学生を“学内裁判”
 直接いい分きく
 処分を前に“親心”
 大阪大学(岡田実総長)は十九日、補導会議を開き、さきの大阪大学生活協同組合をめぐる暴力学生の処分を検討したが、加害者の学生を大学の調査だけで一方的に処分するのは教育上好ましくないし、誤認処分をする恐れもある─との態度を決め、近く“裁判”を開き、加害学生一人ひとりから、当時の行動やいいぶんを聞いたうえ、処分内容を決めることにした。大学当局が学生運動にからむ学生の処分について、事前に本人の陳述を聞いて行なうのは各大学でも例がない。
 同大学の生協紛争は、昨年夏からくすぶりつづけているが、五月二十五日、生協学生理事のA(ヤマミネ)君が、三派系学生から暴行を受け、同日よるから二十六日あさにかけ学生理事会派と、三派系が大学内で乱闘した。また、二十七日午後には三派系の学生が教室を占拠して一般学生の講義をボイコットした。この一連の事件について、学生部を中心に自治破壊の首謀学生や暴力学生の調査をつづけていたが、処分対象の学生がはっきりしたため、総長、各学部長の出席する補導会議に処分方法をはかった。同会議では、大学の秩序を破ったこれらの学生の処分には異論なかったが、欠席裁判のように一方的に決めつけると、さきの東大医学部紛争のときのように、紛争に加わっていない学生まで処分するようなケースが起こってくるので、再確認したうえで判定することにした。大学はこの機会に、学生のアリバイやいいぶんも聞いて、大学側の調査に誤りがあれば正し、逆に明らかな証拠があるのに事実を否定するような学生には反省の気持ちなしとして、慣行以上の重い処分にすることにしている。学生運動にからむ学生の処分は同大学でかってなかったことだが、他大学で学生による自治破壊行為があいついでいるため、同大学でもこの春の入学式で岡田総長が「暴力学生は処分する」と強い態度を告示しており、“教育裁判”が終わり次第、開校いらいはじめての大量の処分者がでそう。
 滝川春雄学生部長の話「紛争の現場に職員や教官がいても、どの学生が暴力をふるったか、いちいち細かい点まで確認しにくい。いま一度本人を呼んで事情を聞いたうえ処分の可否を決めていく。大学の自治を破壊する行為は許されないが、すべて処分するという一方的なことは大学としても良策とはいえない。学生のいいぶんも聞いてやるのが親心だろう」


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