第二章 阪大生協事件の経過と内容

     第九節 暴力問題その二
                             −生協労組の立場から−

B、生協刷新委員会発行パンフレット

 暴力事件をめぐって真相は何か
 現在、「阪自連」、「デ学同」、「民青同」等の組織は、声を大にして、「暴力事件」をとりあげている。では、デ学同、民青同の主張する暴力事件の真相を事実でもって説明していこう。
 <事実経過>
 △去年11月末、学生理事クズノ君と、労組執行委員K(仕入係)氏との「話し合い」が喫茶店でもたれ、K(仕入係)氏が「生協問題の中へ政治的セクトをもちこんだら、大混乱がおきるから、クズノ君、ムチャなことはしないように!政治的セクト、組織的決定で労組の首切りを行えば、生協そのものの存在が危うくなる。良識ある態度をとってほしい」とクズノ君に要請したところ、「考えておく」ということで「話し合い」は終わった。
 △12月5日午後6時50分頃、生協組織部室で組織部が会議中、N(仕入係)君が訪れ「君達、食堂の生鮮食品の購入にいく車のキイをどこに隠しておいたのか。ボク達が毎日毎日生鮮食品の購入のために車が必要であることは君達も知っているはずだのに、どうしてキイを隠したり、業務の妨害をやるのか。ボク達がそのために徹夜してキイを探していたのを知らなかったのか。釈明してほしい」と追求したところ、クズノ学生理事は「ナカヤ君はどこにいるのか知らない。そんなことはオレに関係ない」とせせら笑った。「そんなことで理事がつとまるのか」とN(仕入係)君がさらに問うと、クズノ君は「何!」と言って立ち上がり威嚇した。そこで口論になり、互いに外に飛び出したところ、丁度通りかかったK(仕入係)氏にぶつかった。
 △12月6日午後5時頃、阪自連執行部、理事会側学生数名が学館前で労組を支持する学生数名をとりかこみ「従業員が六百万円を横領し着服したんだ」と断言し、一方労組側学生は「では釈明を求めよう」と外販責任者K(仕入係)を連れてきた。すると理事会側学生は口々に「六百万円を君が横領したんだ」とK(仕入係)氏に対して叫び始めたので、K(仕入係)氏はその一人の学生に「どこにその根拠があるのか」と問いただそうとした。ところがその理事会側学生がK(仕入係)氏を池の方に引きずりこんだ。そのため傍で見ていた労組員数名と理事会側学生数十名とが口論を始め、一部ではもみ合いになった。午後6時頃、反労組側とおぼしき学生達が外販用の牛乳ビン千本をてあたり次第にたたき壊し、さらに従業員個人所有の自動車のタイヤをパンクさせ、バンパーを破損させた。この時丁度傍に誰もいず、それを行なったのが誰かはっきりしなかった。その後、あるビラによると基礎工の集会で、T・G(労組員)両氏がその説明をし、あたかもそれが行われなかったのか、どうかはっきりしない、という具合になっているが、その時の発言の意味は「デ学同がそれこそあったのかどうかもはっきりしない暴力キャンペーンをやっているけど、我々はそれが確実に根拠もあり証拠もそろっているものでない限り、むやみとそんなことは言いはしないんだ」ということであったのだ。事実というのは、O氏、S氏二人の労組員が、打撲傷を負い、K病院より一週間の治療を要すという診断書を受けているのだが。
 午後8時頃、寮生の要求により、労組執行委K(仕入係)氏を始めとする十名の労組員がストライキ説明集会に参加する為、宮山寮を訪れた。その時、宮山寮には百名にも及ぶデ学同系学生が参集し、それを待ちかまえていた。そこでK(仕入係)氏は、ヨシタカ君に「君達はデ学同の組織決定として、六百万円横領のデマ情宣活動を本気でやる気なのか」と問いただしたところ、一切返答を拒否された。話は一向に進展せず、デ学同との話し合いは今は出来ないと判断し、一応労組員は引き払った。その時、一部ではデ学同系学生と労組員との間で小ぜりあいがあり、一人が一週間の治療を要すという診断書程度の負傷をした。
 午後9時、新聞会のN君の要請で労組執行委K(仕入係)氏は、ストライキ説明集会に参加するため、宮山寮を再び一人で訪れた。その集会が終わり、K(仕入係)氏は帰ろうとしたところ、突然、デ学同系学生百数名はK(仕入係)氏を取り囲み、寮の正面のカギをしめ、つるし上げ集会を開き始めた。ヨシダカ、ミヤモリ、ニイミ君等のデ学同系活動家はK(仕入係)氏に対し「ドロボウ」「恥を知れ」「暴力団め」「命が惜しくないのか、一人でのこのこやって来やがって」等々の罵倒を浴びせかけ、こづき回し、12時まで、約三時間集団リンチまがいの暴行を行なった。しかし一部良心的部分が「これは集団リンチと同じだ。我々はこんなことをする権利はない。とにかくここから出してあげよう」とデ学同系活動家のピケットをくずし、鍵を開けK(仕入係)氏を寮の外に送りだした。
 △1月13日午後1時頃、総代会に従業員を入れない、と阪自連の学生行動隊が労組員の入場を拒否し、押問答がくり返された。そして学生のスクラムの中で一人の学生がその押合の中で脳しんとうを起こした。理事会側の譲歩により労組員はその傍聴を許された。この間会場では労組の入場拒否をめぐって阪自連執行部学生とその反対派学生とのもみ合いが所々で行われていた。
 △12月から1月にわたって、ヤマミネ学生理事は[S労組執行委が生協の車(コロナ)を盗み私用に使っている」とI食堂主任、O(教授)理事の前で発言した。そしてデ学同系学生理事と同調者学生二十数名で何度もS労組執行委をつるしあげドロボウ呼ばわりした。しかし事実はS労組執行委が使用していたのは彼個人の車であることが判明し、ヤマミネ学生理事は、理事長からもS(労組執行委)君に謝罪する様勧告を受けていた。ところがヤマミネ理事は謝罪するところか「S(労組執行委)でなければ労組の誰かだ」と逆に開きなおった。
 △1月20日、S労組執行委にうしろめたさを感じているヤマミネ理事はS(労組執行委)君の顔を見るなり「バカヤロー」とどなりつけた。S(労組執行委)君は「君がボクのことをドロボウ呼ばわりしたことをどう思うか」と問いただした。するといきなりヤマミネ学生理事はS(労組委員長)君の顔面をなぐりつけた。そこで傍にいた労組員が止めに入り「ヤマミネ君謝ったらどうか」と謝罪を要求した。するとヤマミネ君はその労組員にも殴りかかり、こぜり合いとなった。
 △1月24日、デ学同系学生理事に扇動されたデ学同の学生及びその同調者三百名余はまず新館食堂に押し入り、「自主管理をやめろ」「S(労組委員長)を出せ」「K(仕入係)をつまみ出せ」「ここにつれて来い」等々口々に叫んだ。そして食事中の学生を追い出し、スズモト学生理事はテーブルの上に土足であがり「自主管理だから業務を止めさせろ」「S(労組委員長)やK(仕入係)をつまみ出し、つるしあげよう」等叫び始めた。彼らは販売口を封鎖し、施設のガラスをたたき壊した。さらに凶暴化した学生を引きつれたヨシダカ君等は食堂事務所に押し入り、S食堂副主任を外に連れだし、なぐるけるの暴行を加え、作業衣をズタズタに引きさき負傷を負わせた。気勢を上げた彼らは次に学館食堂に突入し、同様のことを行なった。さらにK(主任)、K(仕入係)、S(労組委員長)を脅迫すべく生協本部事務所にヨシダカ君や、ナカヤ、クズノ、スズモト、タカヤ、ヒラマ学生理事を先頭として押しかけた。「不正と暴力の張本人K(主任)を出せ」と怒り狂い暴徒化した学生は生協本部を破壊しようとした。業務部室をのぞきこんだヨシダカ、ワイ氏は「K(主任)がいるいる。新館にいる連中をこっちへ連れてこい」とデ学同の活動家に指示した。ツチイ、ナルヤマ、タマオキとおぼしき学生数名は総務部のドアを破り、窓ガラスをも破壊した。理性を失った他の数名の学生は従業員の制止も聞かず、ロッカーの中まで入り込み、従業員の私物までひっくり返した。近くにいた労組員I、Y、Tは学生理事ヒラマ君に「暴力での破壊はいけない。代表者を出して話し合おう」と申し込んだが彼らは無視した。ドアを破られ身の危険を感じた従業員は、書類ロッカーで入口を防いだ。しかし「さんをはずせ、ガラスを破れ」の罵声が増す中で、女子従業員四名(内妊婦一名)もいた事であり、やむなく入口を開けた。K(主任)氏は外に出たにもかかわらず「K(主任)を出せ、書類を出せ」と学生理事クズノ、ナカヤ、ヒラマ、スズモト、タキヤ、マガキらを中心とした暴徒化した学生は、室内に入り、机をひっくり返し、マガキ君は女子職員Yさんをこづく等の暴行を欲しいままにした。これには法学部大学院政治学研究室のメンバーも加わっていたことが明らかになっている。彼らは各学部主任をつるしあげ、鍵そして総務の書類を強奪していった。学生理事と各部主任の間で、理事長または監事の立会で、鍵、書類を引き渡そうと話がつきかけたが、ヨシダカ、ワイ氏が「そんな生ぬるいことではだめだ」と両者の話し合いをおしのけた。引き渡しについては、I(食堂主任)、K(主任)、クズノ、ナカヤ四名がO(教授)理事の家まで持っていくことで話が終わるや否や、ナカヤは鍵と書類を持って逃げ去った。その後、ヒラマ学生理事らが三寸釘で破壊した戸を打ちつけ、学生の暴挙も終わった。全く予定されていたかの様に。
 △3月9日12時頃、ナカヤ、ヒラマ学生理事が組織部に入って来、労組のビラ(内容・学生理事は即時書類を返せ等々)をはがそうとした。それを見た労組員S(労組委員長)、N、Y氏は「労組のビラを無断ではがすとは何ごとか。一月二十四日強奪した総務の書類を早く返せ。仕事ができないではないか…云々」と口論した。執ようにビラをはがそうとしたナカヤ君の手を止めた労組員に対して、彼は「やるのか!」と云って組みついてき、S(労組委員長)氏は床上に倒れた。そしてナカヤ君が「表へ出ろ、外でかたをつけよう」とケンカを売り、とっくみあいとなり、力の弱かったナカヤ君がより多くの傷を負ったというのが真相である。

 <暴力とは何か?>
以上が阪大生協暴力事件の事実経過であり、我々阪大の内部でこのような一連のこぜりあいがあり、理事会側、労組側相方に負傷者を出したことは誠に残念であり、相方に反省を促したい。しかしながら理事会と労組の対立をきっかけに起こった紛争に関連する事件は「第三者機関にその決定を依存する」と理事会と労組は互いに確認した筈である。ところが理事会はナカヤ学生理事の告訴、ヤマミネ学生理事の被害届等々の「国家権力」への働きかけを行ない、前述した理事会側の主張する第三者機関が「国家権力」であることが判明した。そして労組員十三名が不当に逮捕され、長期の拘留をうたれた。そして公安警察の活動が正面切って開始されたのである。理事会側の要請で「暴力事件」の真相を究明するはずの警察(公安)は逮捕した労組員に何をたずねたのか。「君達は70年安保斗争に勝算があると考えているのか」「君は今度の安保でどのように斗うつもりなのか」「君の所属する政治組織の力量はどのくらいあるのか」<暴力事件>については「君はその暴行の現場を見たことがあるのか」という唯一の質問であった。このことから次の様な結論に達する。
 12月22日から大阪府警本部警備課で三ケタにわたる人員を動員し、阪大生協事件と称して豊中警察署に捜査本部を置き、約半年もかかって調査している内容は逮捕理由である「傷害」事件とは何の関係もない70年安保に向けての思想調査であった。
 労組側と理事会側の両者に負傷者を出し、互いに「ケンカ」をしているにもかかわらず警察の不当逮捕、拘留は一方的に労働組合員であるのはなぜか。まず第一に理事会側の学生の組織(デモクラティック学生同盟といわれる)の中に、公安調査局に関係している学生が数名いて警察権力と密通していること。第二に不当逮捕された労組員がデ学同系の学生の「暴行」の事実を警察に一切売り渡さなかったこと。このことは取り調べの刑事の怒りをかった。「人間とはな、一方的に人は殴れるもんじゃない。きっと殴られているはずだ。誰に殴られたのか言え。言えばお前に有利になる」と刑事は情報を要求したが、労組員は全員それを拒否し、捜査に協力しなかった。即ち、労組の見解「理事会と労組の紛争を警察権力に委ねるべきではない。警察権力の目的、担当している部隊をみれば明らかだ。暴行事件を担当する刑事ではなく、公安警察である以上思想弾圧であり、批判勢力のとりしまりである」と。第三に公安調査局のK(元)学生課長の計画的陰謀にデ学同系学生諸君がまんまとひっかかったと言うこと。「被害届、告訴を警察に出せ!」という挑発に無節操にも協力したこと。もしこの告訴、被害届が否認されたならば警察権力の大学への介入は防止できたのだが…。要するに警察権力(暴力装置、支配機構の実体)と一線を画する労組と自己の利益のためには警察権力を利用しようとするデ学同理事会という現実が労組側の一斉逮捕という結果を生みだしたのである。
 ここで我々は「暴力」とは何なのか、「権力機構」とは何なのかを考察してみよう。デ学同のビラによれば若い労組員がドロボウ呼ばわりされ、つるしあげられ、集団リンチをうけ、激昂し、デ学同系活動家の挑発にまんまと乗せられ、「殴られたから殴ったんだ」と単純にも対応するまさにその労組員が「暴力」をふるったと記載している。確かに殴られたから「殴った」ということは絶対的に正しいとは云いきれない場合もあるだろうが、純粋な、真面目な労働者を、ドロボウ呼ばわりし集団的に取り囲み、罵倒をあびせかけ、こづきまわすことは何ら「暴力」でない─ましてや「暴力を誘う行為」でも断じてない、と主張する。「良識と知性に強くささえられた行動」と主張するデモクラティック学生同盟・阪自連執行部は今一度人間の倫理的存在、人間が動物から区別され、人間独自が開発した分野、そこでの人間の存在を再度考えなおすべきではないだろうか。デ学同、民青同諸君による「労組の集団的計画的暴力行為、系統的暴力行為」と主張するその政治的陰謀はまさにデ学同諸君、ヨシダカ君を始め、ナルヤマその他の活動によって行われた系統的組織的暴力、自己の党派、理事会側学生による系統的暴力行為を全くさかさまの、まったく逆の「事実」として「労組の系統的暴力」にすりかえている。
 もちろん、「生協の不正使用」云々とかいう問題にも同じようなことが言える。理事会側の無断使用、組合員によって運営されている生協の公的な金をレンタカーとか自己の党派(デ学同)、そして自己の私的なものに使用しているという事実を後で具体的に明らかにするが、事実は彼らが、不正と暴力の張本人はまさに労組であるとすりかえていたのとは逆に、不正と暴力の張本人は理事会側学生であり、理事会側学生と共同行為をとったデ学同、そして阪自連執行部の活動家であったのではなかろうか。このような事実はほり返せばほり返すほど明らかとなり、それに関しては単に学生理事だけではなしに、教職員理事、例えばK慎一法学部教授(理事長)なども共同行為をとっている。昨年12月11日当時一年生であった医学部学生A君と理学部学生B君はヨシダカ・デ学同委員長以下約十数名によって、文法経控室(ここはデ学同系活動家のたまり場である。)につれこまれ、軟禁され、こづかれ、つばをはきかけられ身体の自由を奪われた。その時、生協理事長であるK慎一法学部教授は学生部からカメラを借り、即ち公安警察、公安当局のカメラによってそのデ学同の諸君、ヨシダカ君らの手によってとり押さえられている二名の学生の顔写真を自らの手で写しとり、そのネガを学生部公安当局に売り渡しているのである。この事実に関しては、理事長自身五月四日の労組との団交で認めている。学問の自由とか、大学の自治とかを一応語る大学教師自身が自らの行動で破り、そしてこういう暴力即ち少数の人間を多数の人間がツルシ上げ、身体的自由を奪い、罵倒をあびせかけ、そして恥ずかしめを負わせ、その上にその資料を学校当局、学生部、公安調査局に売り渡す、全く大学教師として恥ずべき行為をしているのだ。しかしながら教授自身は何ら反省の色もなく、学校側の要請だから当然だと開き直っているありさまである。
 私達はこのような事実からこのような事実が次から次へと明るみに出てくる中で阪大という国立大学の中には自治意識が学生教職員の中に殆ど存在しておらず、歴史的に権力から奪取しかちとってきた自治の権利がまさに現在の阪大の学生、特に自治会執行部そして大学教官の一部右翼分子によって自己の手から権力の手に素直に放棄する形で売り渡されているのが現実である。暴力をふるったとデッチ上げられている労組員であり、かつ文学部に籍を置いているK(仕入係)氏に関して、文学部自治会委員長キウラ君はK(仕入係)氏の学校からの処分、退学とか謹慎、停学とか、とにかく何らかの処分をしてほしいと学生部長に再三会見を申し入れている。公安調査局の息がかかっているものが主流をなしている学生部権力に、自分と同じ学生を売り渡そうとしているのである。己れに自治能力がないという前提に立って、己れ一人、デ学同だけのものでは決してない「自治権」を犯罪的にも放棄しようとしているのである。その根拠はといえば、K(仕入係)氏が検察庁から起訴されたならば─それは大学としても好ましくないし、だからそれ相方に処置をとってくれ、というのである。しかしながら事実は前述したようにK(仕入係)氏は宮山寮において学生に全治一週間の打撲傷を与えた様な事実はなんらないのである。全く事実無根の理由をもって、ただそれが警察権力によってデッチ上げられ(その根拠はデ学同のデマ宣伝だ!)起訴されたという事実をもって、K(仕入係)氏を処分の対象にするというのである。デ学同系学生であり、文学部自治会委員長キウラ君らは「起訴」を全く政治主義的に利用し、文学部教授会、さらにありとあらゆる大学の管理機構に対して自己の党派的利益のために積極的に大学の存立にとって基本的に重要な自治権を放棄するべく必死の努力をしているのである。
 この悲劇的情況の中にあって私達学生はいかになすべきか。まず第一に私達の自治会活動としての「大学の自治」はあくまでの私達独自のものであり、私達自身が創り守り通すべきものであって決して他に譲り渡すことのできないものである。しかし現実には、ビラはり、掲示板使用、教室使用から、サークル活動、寮自治、生協等福利厚生施設の貧困奨学金等々学園生活の基本にかかわる事柄に実に多くの規制がかけられているといわねばならぬ。これらはすべて大学の自治を現実のものとしていく私達の斗いの現実的諸課題である。ましてや今回のようにかかる自治を自治会活動家(デ学同)自らが国家の末端権力としての学生部(阪大の学生部といえば全国的に見て極右である)に対して放棄するということは根本的に誤りである。特に生協問題でとった行動、すなわち一九七○年安保斗争にむけての政府批判勢力への思想的弾圧と調査を現実的に行っている中で、キウラ文学部自治会委員長を始め、デ学同系諸君によって行われた自治権の放棄は決定的である。我々学生としては少なくとも学生の自治はどんなことがあっても、ましてや権力(警察権力)に自己と同じ学生を売り渡すということは最悪の事態であり、たとえ政治的な党派の見解の違いがあるにせよ、そのようなことは断じて許してはならない。
 そして教授会、学生との関係。大学教授といえどもやはり学問研究の自由、真理の探究のためには国家権力とはきっぱりと一線を画すべきだと考える。なぜなら、国家権力というのはまさに人の命を合法的抹殺できる唯一の機関であり、そしてそこで行われる死刑の執行は全国民が承認の下という名目でもって公然と行われる。たとえそれが事実であろうがなかろうが、ただ権力機関によってその決定がなされれば、人の命は簡単に合法的に抹殺されるという、まさにその恐るべき権力の行為とは学問の自由、真理の探究とは無関係であろう。そしてましてや自己の利益を目的とする商業新聞で大々的にセンセーショナルに発表された「元暴力団員が学内を横行」という記事は、大学当局、公安調査局員によって意識的に報道されたとしてもその様な事実は今のところ全くない。彼らが元暴力団員だと主張するのは、実際にはN(仕入係)氏がかつて土建業、いわゆる間組とか奥村組とかいうような土建業である大塚組にいたということをもって、彼らが暴力団、ヤクザだと主張し、デッチ上げているにすぎない。そして暴力団によって学生がやられたのだというような、一つの奇妙なカラクリをつくり、センセーショナルに問題をおこし、肝心の生協問題、生協の再建の問題は全く学生に示されずに、一切が暴力問題という形で、問題をすりかえていったのが今度の生協問題における阪自連執行部、デ学同、民青同諸君による行為であった。彼らが主張する暴力事件、暴力によって学生自治が守られない、我々の自治が暴力によって脅かされて守られない、だから大学当局は従業員四名を生協の施設からたたき出せ、追い出せという主張は全く学生の自治、大学の自治の内容を理解していない表現であろう。
 大学の自治、学生の自治は与えられるものではなく、まさに自治とは自分達で自分達の力で作りだすものであって、その中で問題を解決していくものである。自分達自身の力で誰の力も借りないところに自治の特色があるのだ。ましてや彼らの主張する暴力とは自分達がドロボウ呼ばわりし、つるしあげ、こづき回した挙句に手を出した若い労組員がその手を出したという瞬間をとらえて暴力暴力と呼号するのであって、彼ら自身が行なった、いわゆる真の暴力は何ら問題にされていない。真の、本質的な暴力を隠ペイするために「擬似暴力」を持ち出すのは国家、支配者階級の常套的抑圧手段ではなかったか。「暴力」「公務執行妨害」「器物破損」「凶器準備集合罪」等々、反権力、反政府の斗争において国家の直接権力、暴力装置(機動隊、留置所、拘置所等々)と敵対するとき、これらの「罪状」すべて、国家の真の暴力を隠ペイするものとして周到に準備されているのである。このことを充分に見極めなければならない。
 私達はこの「生協紛争」をふりかえって、一体「真の暴力」とは何であったのかを考える際、次の三点にまとめることができる。即ち12月1日、1月19日の不当な「懲戒解雇」、12月6日、1月24日にみられた「集団リンチ」、さらに一面的、非本質的な「暴力批判」を権力を背景に行なった総長告示、総長談話、以上である。私達は今デ学同、民青同が行っている「暴力」宣伝が「擬似暴力」を意図的に宣伝することによって、自己のなした「真の暴力」を隠ペイするものであることを正しく見ぬき、彼らを理論的にも実践的にも批判しつくさなければならない。彼らは自己の無能、誤りのゆえに「擬似暴力」宣伝が失敗するやいなや今度は恥ずかしげもなく大学当局になきついたのである。「大学の自治」を自ら創り守りぬくためには、いかなる事態といえども権力とは一線を画し、自らの言葉で斗かわねばならない。デ学同、民青同の行なう「擬似暴力」宣伝が支配者階級、国家権力の言葉であることは今や明らかとなった。私達は自らの力で自治を斗いとるために、先の「真の暴力」に対して批判を集中し、「大学の自治」を「教授会の自治」に矮小化する見解をも排し「大学の自治」をまず「学生の自治」運動として展開しなければならないと考える。生協は学生教職員の学園生活を基本のところで擁護するものとして「大学の自治」の物質的礎の一つである。生協労働者に関しても、かかる観点からその大学における地位と位置を再検討しなければならないのではなかろうか。「生協再建」はあらゆる意味で焦眉の課題である。
 今回の「生協紛争」に端を発した「暴力」問題は学生組合員に「真の暴力」とは何かを考えさせ私達に運動を提起し、「大学の自治」の創造、生協再建を強く訴えている。

執筆者よりの追記
  理事会派の学生の告訴により、後に生協労組員の4人が起訴された。事件が終わった後、裁判だけはその後2年間も続き、結局は4人に数千円の罰金刑が科された。たとえ執行猶予付きであっても懲役刑が科せられるなら戦うつもりであったが、罰金刑ということ、そして何よりもへとへとに疲れていて、裁判を続けるよりも、新たな生活に向かうべきだとの苦渋に満ちた選択により、その判決を認めることとなった。(当然その頃からこの事件は忘れ去られようとし、訴えた学生のある者は大学を卒業し、何事もなかったかのように社会人としての第一歩を歩み始めていた。)


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