ペロリと耳元を這った舌先。
耳朶を甘噛みされて、たまらず零れる吐息。
「んっ・・・く・・・・・・ハッ!・・ぁァ・・・・」
「いやらしいな、ゾロ。」
笑い声と共に囁かれ、ゾクリと肌が粟立つ。
・・・楽しそうに、しやがって・・・
見上げた視線の先に、奴の黒髪。
踊るように跳ねるその動きは、まんま自身へと喰いこむ抽挿のリズム。
「ヒッ!・・ぁ・・・あぅっ・・・。」
仰け反る首筋に、奴の唇。
蕩けそうな程、熱い。
火傷しそうに熱くて、なのに、その熱は緩やかに身体に蓄積される。
解放の時を求めて、縋りつく手が一層の力を増す。
「ゾロ・・・」
呼ばれて、戦慄く身体。
激しさを増した行為に、下半身は暴走し、無意識に腰が擦り寄ってゆく。
・・・あぁ、やべぇ・・・
・・・もう、とまらねぇ・・・
身体に残された包帯が、紅く、紅く染まっていく。
その様さえお前は楽しそうに見下ろすから、俺は、朦朧とする意識の中、たった一つを望み。
・・・狂えよ・・・俺に・・・
なぁ、狂っているのは、オレ?
・・・俺の血で、お前の魂まで染め上げて・・・
意識が飛ぶ。快感と快楽の狭間で。
・・・ルフィ・・・俺の、海賊・・・王・・・
奴の肌を染める紅。
あぁ、お前には赤がよく似合う。
太陽のような、温かなオレンジに似た赤も。
夕日のような、海すらその色で染め尽くす鮮やかな赤も。
そして、何もかもを焼き尽くす紅蓮の炎のような赤も。
でも・・・
一番似合いの色は・・・
薄く笑んで、奴の肌に散った紅を引き伸ばす。
「は!・・・っ・・・ぅ・・・」
ギリと握られる自身。
これでもかと突き入れられて。
「ゾロ・・・ずりぃぞ、俺ばっか。」
狂気のような愛。
狂った瞳に映るのは、互いの姿だけ。
紅に染まるお前の身体と、紅で染まる俺の心。
まるで名人が手がける錦絵のように、深い、深い真紅に染め上げて。
「っっ――――ゾロっ!!」
深い突き上げで揺さぶられて。
「やっ、ああっ!!ル、フ――――ッ!!」
身体の奥に迸った熱に、高みへと追い上げられる。
同時に散った白濁が、アイツの身体で紅と混ざり鮮やかな色を濁す。
縋り付く手が無意識に背に痕を残し。
痛みを、僅かに紅が滲んだ爪先が伝える。
フゥと零した吐息を飲み込む口付けを最後に。
狂宴が…終わる――――。
「あーぁ、またチョッパーに怒られっかなぁ…。」
真っ赤に染まった包帯を手にして、ルフィが大きくため息を吐いた。
「バカ野郎、いったい誰のせいだと思ってやがる。」
じろりと睨みあげれば、ウーンと唸りながら首を捻り。
「そりゃ、やっぱゾロが色っぽいせいだよなぁ…すっげぇ気持ちよさそうで、ってぇっ!!!」
ニシシッと、どんな顔を想像したのか、聞くも虚しい程のにやけ顔に、俺はまた頭をもたげてきそうなモノをギュゥッと握りこんでやる。
「いてぇっ!いてぇっ!!ゾロッ、千切れるっ!!!」
「ゴムのくせに千切れるかっ!伸びてるだけだろが!」
「…うーっ、いてぇものはいてぇんだぞ。」
先刻までの暴君ぶりはどこに行ったのか。
涙目で見下ろすルフィは、年相応のガキに見える。
その瞳の奥に燻る、紅の揺らぎにさえ気付かなければ…。
ポンと一つ、背中を叩いて。
「もう寝ようぜ。明日も早い…。」
「んー…そだな。…チョッパーに本気で怒られんのは、マジ怖ぇしな。」
傷口の開いた俺の身体から、ルフィの舌が新たに沸いた生き血を舐め取る。
「んっ!…ル、フ…。」
紅く染まった唇を、チロリと舌先で舐める仕草にゾクリとさせられ。
僅かに頬を染めた俺に、ルフィは満足そうにニッと笑う。
「舐めときゃ治るだろ?お休み、ゾロ。」
そうして、宣言どうり、コテンと寝息を立て始めるルフィ。
俺の、身体の上で。
「っッ――――っ!たくっ、バカ野郎!!」
ゴツッと殴りつけても、ルフィはもう夢の世界の住人で。
俺はルフィの舌先が這った傷痕に、疼く熱を多少持て余しつつ。
「…お休み、ルフィ。」
触れ合う素肌の温もりに、ゆっくりと意識を闇へと溶かして――――。
新陳代謝の活発な俺の身体。
ルフィの触れた傷痕も、全身につけられた朱色の華も。
そして、滲んだ包帯に願った、浅ましき欲望も。
アシタニナレバ、スベテガ、ヒトヨノユメモノガタリニ、ナルトシテモ・・・
今はまだ二人、静かに、紅の褥で眠ろう。