<DRUNKER>



「お〜い!ゾロ。悪いけど、格納庫から修理用の道具を持ってきてくれないか?」
そう、ウソップに言われてゾロはわかったと小さく頷き、トコトコと格納庫への階段を降りて行った。

この船の修理を全般で受け持っているのはウソップで、いつもならガーガーと高いびきで寝ているゾロだったが、 今日はたまたま目の前をフラフラと歩いていたせいもあって、少しくらい使ってやれと思われたらしい。
(まぁ、このくらいはしてやらなくちゃな・・・)
そう思いながら格納庫の奥に進み、一番奥にある戸棚の前で修理用と書かれた箱を探し始める。
「・・・と。コレかな?」
ウソップの言っていた修理用の道具を取ろうとして、隣りにあったモノに手が当たりカチャンと何かが落ちる音がした。
「し、しまった・・・コレ、なんだったかなぁ・・・?」
足元を見ると薄茶色の瓶が割れていて、中身のほとんどが床へと零れシミを作っていく。
「うわっ!なんだ・・この匂い・・・」
嫌な匂いと言うよりは、頭の中まで染みとおってくるような強烈な臭気にゾロは片手で口元を覆った。
暫らくそうしていたゾロはホウッとため息を付く。
匂いに頭が割れそうなくらい痛んでいるが、それ以上にコレをこのまま放置するわけには行かないと思い至ったからだ。
「たくっ、ついてねぇ。」
立ち上る臭気に顔を顰めつつ、それでも証拠隠滅を画策する当たり、ちと姑息かと思いはするが、 船の備品物を無駄にした場合のナミの嫌味が頭の中で点滅していたから。
とりあえず、臭気に気付かれないよう開け放してあったドアを閉め、ゾロは床に散乱する瓶の破片を拾い集めていった。


「何やってんだぁ?」
いつの間に来たのやら、ルフィが必死になって金槌を振るうウソップの後ろから声を掛けた。
「見てわかるだろうが!お前たちが船を壊しまくるから俺様が修理してやってんだ!」
ウソップのムゥッとする顔を見てもルフィはしししっと笑って
「おうっ!俺は壊す専門だからな!」
と、ウソップにとってまったく救いのない言葉を吐き出してくれる。
ハァ〜・・・とため息を付いたら、ルフィはあたりをキョロキョロと見回してから少しだけ寂しそうな口調で聞いてきた。
「なぁ、ゾロ何処行ったか知らねぇ?」
ルフィの台詞にウソップは心の中で呆れかえる。
何故なら、ここは海の上を航行中の船の中。
こんな所で人一人、消え去れるわけがないというのに。
ましてや、それなりの大きさはあるとはいえ、大声を出せばいやでも船中に響き渡るであろう限られた場所で、ただ姿が見えないと言うだけで何故そんなに不安そうな声になるのか。
もうひとつ付け加えれば、お探しの剣士様はこの船長にベタ惚れしているのが見え見えだと言うのに、それでも不安になるのかと恋の恐ろしさというものをヒシヒシと実感させてくれる。
(ま・・・それでもキライにはなれねえし・・・)
自分が色恋沙汰に巻き込まれ、とばっちりを喰うのはゴメンなのだが、二人とも仲間としては最上の部類であると自覚しているので ウソップは内心の呆れを外に出さないようゾロの居場所を教えてやった。
「ゾロなら格納庫だろ。俺様が頼んで・・・」
道具を取りに行ってもらったと言いかけて、ウソップはハタと考え込む。
ただ取りに行っただけなのに、えらく戻ってくるのが遅くはないだろうか?
けれど、
「ゾロ、格納庫に居るのか?」
パッと表情を変えたルフィがあまりにも嬉しそうで、ウソップは自分の疑問を飲み込んだ。
「あ、あぁ。そのはずだ。」
この時点で何となく嫌な予感はあったのだが、ソレを振り切る様に首を振ってからウソップはコクリと頷いた。
「そっか、なら俺も行って来る!」
すでに疾風の如く格納庫への階段を下り始めたルフィの背中を見つめながら、ウソップは何故か神に祈っていた。
「どうか何事も起こりませんように・・・」


「ゾロー!いるんだろぉー!」
ウソップに教えてもらった通り、格納庫の前まで来たルフィはドアが閉まっているのを見てアレ?と思う。
中にいるのならば、ルフィが声を掛けた時点で「うるセェ!」だの「何か用か?」だのと言う言葉が即座に返って来るはずなのだ。
行き違いになったのかと、心配しながらルフィはそっとドアを開けた。
「なっ、なんだぁ?!!」
部屋の中を充満する匂いにルフィは鼻を抑える。
ツンとくる刺激臭は鼻のいい者でなくても堪えるだろう。
ましてや、この匂いはただ臭いだけでなく頭の中が真っ白になって行きそうになるのだ。
(まさか・・・この所為でゾロ倒れてんじゃねぇだろうな・・・)
あまりにもキツイ臭気に当てられて倒れ臥したゾロの姿が目に浮かび、ルフィは大きく息を吸ってから格納庫の中へと進んでいった。

「ゾロ?」
口元を抑えている所為で、くぐもった様な声が格納庫に響く。
「ゾロ、いるのか?」
明かりの少ない格納庫に目が慣れてきた頃、やっと探していた人物を見つけた。
「ゾロ、ゾォーロ!」
気絶でもしているのかと、駆け寄って必死で声を掛けたらピクンと肩が震え、
「ルフィ・・・ルフィ?」
どこか茫洋とした声が返ってきた。
「たくっ、心配させんなよなっ。」
安堵と怒りがルフィの中でグルグルと渦巻いている。
だが何故か酷くなっていく頭痛にヤバイモノを感じはじめ、急いでゾロの腕を引き上げようとした。


「くっくっ・・・ルフィ・・・」
どこか嬉しそうな声で笑いながら、グイと引っ張り上げた腕を逆に引かれた。
何事?と思った時には床の上に転がされ、ゾロはルフィを押さえつけながらズリズリとルフィの上に跨り始めた。
「ルフィ・・・ルフィ・・・」
ゾロはクスクスと笑いながら、ルフィの名を何度も呼ぶ。
間近になった匂いにルフィが顔を顰め、口元を抑えようとした手をゾロがそっと捕まえにくる。
ダイレクトに嗅がされる臭気に辟易しながらもルフィはゾロを見上げた。
「ゾロ、ここくせぇよ。」
「ん?」
無邪気に見下ろしてくるゾロをルフィは一瞬、とてつもなく可愛いと思ってしまう。
この臭気さえなければ今の体勢はルフィにとって大歓迎であるのだ。
多分、このまま押し倒して事に及んでしまうのにもやぶさかでない。
けれど、この匂いはそうしてしまうにはあまりにもきつ過ぎる。
頭の芯がくらくらして、なんとなく自分のしている事がわからなくなってきそうなのだ。
もったいねぇ、と思いながらもルフィはゾロを自分の上から退かして、立ち上がろうとした。
だがゾロは、ルフィの身体をもう一度床へと押し付ける。
「なぁ、ゾロ。外出ようぜ。俺、頭痛ぇんだ。」
正直な感想とともに押さえつけてくるゾロの両手を軽く捕まえて、ルフィは困った顔でゾロを見た。
ゾロは捕まえられた両手をルフィの頬へと伸ばしながら、またクスクス笑う。
「だめだ。どこにも行かせねぇ。」
「ゾ・・・・・・」
言いかけるルフィの言葉を遮って、ゾロはフイにキスを仕掛けてきた。
「ん、んんっ・・・」
舌を差し入れ絡ませてくる濃厚なキス。
触れるだけならまだしも、こんなキスを自分からなど滅多にしてくれない筈なのに・・・。
あまりにもな展開にルフィは硬直してしまった。

ツツゥーッと銀の糸を引きながらゾロの唇が離れて行く。
呆然としたままのルフィを見下ろしながら、ペロリと舌で唇を舐めてゾロはクックッと笑っている。
「な、しよっ。」
「なっ、何言って???」
ルフィは本気でパニックに襲われた。
まるで、自分にとって都合の良すぎる夢をみているようだ。
けれど、
「するんだって言ってんだろ!わかったらさっさと脱げよな。」
アワアワと何故か逃げ腰になるルフィの衣服に焦れたように手を伸ばし、ゾロはボタンを外し始めた。
「ちっ、ちょッ・・・・ゾロ?」
「んだよ、早くしようぜ。なぁ・・・ルフィ。」
妖艶な微笑みを向け、ルフィを惑わせながらゾロはルフィのシャツを開け放つ。
普段は隠されているルフィの胸板の逞しさにゾロはホウッと吐息をつき、スルスルと両手で撫で始めた。
「ゾロッ!」
パニックのまま叫ぶルフィにゾロはほんの少し唇を尖らせる。
「何だよ?」
「いや、だから・・・その・・・」
なんと言っていいものやらわからないルフィは、言葉を濁し頭をガリガリと掻き毟る。
「・・・俺としたくねぇの?」
「したい!!・・・じゃなくて、だからその・・・」
間髪いれず返してしまう自分を恨めしいと思いながらもゾロの嬉しそうな笑顔にルフィの言葉が途切れてしまう。
「したいんだろ?なら、しよう。」
もう一度キスを仕掛けてくるゾロにルフィの僅かな理性は砕け落ち、もうどうにでもなれとばかりにゾロの頭を引き寄せた。
いつのまにか頭痛が消えていた事にもまるで気付かないまま、ルフィはゾロに溺れていった。


舌を絡めあい、身体中を撫で回す。
触れ合う部分がどんどん熱量を増し、欲望を更に深めてゆく。
「ん・・・ふゥ・・・ン・・・ル・・・フィ・・・」
衣服の上から触れてくるルフィの腕がもどかしいとばかりに、ゾロはルフィの両手を捕まえてシャツの下へと潜り込ます。
「どこ、触って欲しい?」
判っているくせにゾロの口から言わせようとするルフィの目はゾロから一秒たりとも離れない。
視線にさえ感じてしまうとばかりに身体中を震わせながら、ゾロは小さく呟いた。
「んふ・・・ア・・全部・・・」
「ん?」
「あ・・・全・・部・・・触ッ・・・て・・・・」
ニッと笑いながらゾロの胸の突起をグイと捻り上げる。
「あうっ!」
痛みとも快感とも言える衝撃が走り、ゾロは自身が急速に勃ち上がってくるのを感じた。
「あ・・・ン・・・気持ち・・・い・・・」
いつもよりも敏感に反応を返すゾロにおかしいと心のどこかが囁いてくる。
けれど、ルフィにもそれが何故なのかと考える力が低下していて、
「あぁ、ちくしょう!」
一言吼えて、ガバリと起き上がるとゾロの衣服を脱がせ始める。
シャツと、腹巻を取り去ると胸の傷跡に唇を這わす。
対面座位のまま、ゾロのボトムに手を掛けるとゾロはルフィの頭を抱えるようにしてほんの少し腰を浮かせた。
ピクピクと先走りを滲ませて勃ちあがっているゾロのモノを取り出しルフィはゆっくりと扱き始める。
「はっ!あぁっ・・・」
ルフィの頭に頬を擦りつけるようにして、快感を味わっていたゾロは不意に身体を引いた。
「ゾロ?」
ルフィの手を自身から引き剥がすようにして床へと押し付けると、ゾロはルフィの身体を押し倒す。
「ちょ、ゾ・・・?」
「俺がするんだ。」
「???」
「俺がしてやるんだ!」
言うなり、ルフィのズボンに手を掛けボタンを外す。
窮屈そうに収まっていたルフィのモノを取り出すとリズムをつけて扱き始めた。
「お、おいっ!」
「うるせっ!黙ってろ。」
それでなくともゾロの全てに煽られているというのに、直接的な刺激まで加わってはたまったもんじゃない。
ギリと歯を食い縛って開放を耐えると、ルフィはゾロのモノに手を伸ばした。
「あ、やだっ!触るなっ!」
「やだ!」
「俺がするんだ!」
「俺がゾロにしてやりてぇ!」
なんだか子供の喧嘩のようになってきて、二人とも意地のように手を動かしていて・・・。
「あ・・・ンッ・・・やぁっ・・・」
「くッ・・・・・・」
小さな呻き声とともに互いの手の中へ放った時には、双方恨みがましい目で相手を見つめていた。

肩を小刻みに震わせながら、ゾロがルフィを見下ろしてくる。
「俺がするって・・・言ってるのに・・・」
「ゾロがわりぃ!俺がゾロを気持ちよくしてやりてぇ!」
ムゥッとした顔でまだ見ているゾロにルフィは本音を叩きつけた。
「だって、ゾロの方がいつも無理してるじゃねぇか!」
「無理・・・?」
「そうだ!ゾロだってちゃんとした男なのに・・・」
「・・・・・・。」
「俺がゾロに惚れちまうから・・・俺なんかをゾロが選んじまうから・・・」
(俺、なんでこんな事まで言ってんだろ?)
霞がかかったような頭にゾロへの不安が首をもたげ、ルフィの身体中を縛り付けていく。
好きで好きでたまらなくて、いつでも触れ合っていたくて。
けれど、ソレがゾロの負担になるとわかっているから、少しでも気持ちよくさせてあげたい。
一度だってこんな事、口に出しては言わなかったけど。
「俺はゾロを手放せねぇ。だから、俺はゾロを気持ちよくさせなきゃいけないんだ!」
漠然と思ってきたことがスルリと口から零れ出る。
まるで熱に浮かされてでもいるように、胸の奥に潜んでいた言葉が溢れ出て。
「そう、思ってても俺は我慢が効かねぇから・・・」
だから、不安で・・・いつも、不安で・・・。
クシャリと頭を撫でられる。
フワリと微笑んだゾロがルフィを優しい瞳で見つめていて。
「俺もそう思ってた。」
「え?」
「気持ちよくさせてやりたいって・・・いっつも・・・」
同じ気持ちを抱えて、それを表に出す術を知らず不安だけを膨らませている。
なんて不器用なんだろうと思いはすれどそれが自分たちなのだから・・・。
「・・・一緒か?」
まだ瞳に不安の色を滲ませながらルフィがゾロに聞いた。
「ン・・・一緒だな。」
「・・・なんか、夢見てる気がする。」
どこまでも自分に都合の良い夢。ずっと、そう思っていたけど。
「そっか?・・・でも、俺も夢見てる気分だから。」
ゾロがクスクスとまた笑う。
いつもよりも無邪気で、妖艶で、それでいて何もかもわかっているような・・・。
「二人で見てんなら、いい夢かな?」
「そうだな。お前となら・・・いい夢だろうな。」
ゾロの顔が近づいてきて、ルフィの唇を塞いだ。

「なぁ・・・気持ち・・・い・・い?」
ユルユルと抽挿を繰り返しながらゾロが見下ろしてくる。
「んッ・・・・・気持ちいい・・・ゾロは?」
「ふぁ・・・あっ・・・良いに・・・んっ・・・決まって・・・あぅッ・・・」
穿たれた場所がチュクチュクと淫らな音を響かせながらルフィのモノを飲み込んでゆく。
緩やかな動きがいつしか速度を増してゆき、ゾロは深く銜え込むたびに甘い喘ぎ声を上げる。
「あフッ・・・うあっ・・・・あんッ・・やぁっ・・・気持ち・・い・・」
ゾロの痴態をうっとりと眺めつつ、どこか夢見るような心地のままルフィは限界を感じる。
「んんっ、俺・・・もっ・・・」
「あぁっ・・・ル・・ィ・・・ルフ・・・・ィ・・・」
ビクリと身体を震わせ、最奥に叩きつけられる熱に、ゾロはふと微笑んで自らもまた迸りを放った。

ハァハァと荒い息の中、二人ギュッと抱きしめあう。
「な・・・ぁ・・・ル・・フィ・・・」
「・・・ん・・・な・・・・に?」
荒い息を整えようと必死になりながらもゾロに答えて。
「もっかい・・・スル・・・か?」
啄ばむようなキスを落としながら、ゾロが甘い誘いをかけるから。
「・・・・・・やっぱり夢かな?」
クスクスと笑う声が耳元で聞こえてくる。
「夢でも、かまわねぇんだろ?」
「・・そ・・・だな。」
ゾロの頭を引き寄せながら唇を合わし、舌を絡ませあい・・・。
そうして再度甘い営みが開始された。


「・・・・・・・で、いつまでかかりそうなわけ?」
ナミがジロリとウソップを睨みつける。
「そ、そんな事、俺に言われたって・・・・・・多分、あと半日くらいしたら・・・」
ウソップは自分の所為ではないというのに、何故かオドオドと答えた。
「半日!!!あと、半日もあのバカップルを聞いてなくちゃいけないって言うの?」
ナミの剣幕に押されそうになりながらも、ウソップは必死で言い返した。
「し、しかたねぇだろ?あそこは換気が悪いから・・・」
ナミがイライラとキッチンを歩き回り、サンジがとりなす様に横からハーブティーを差し出した。
「ありがと、サンジくん。・・・なら、せめてドアくらい閉めて欲しかったわね。」
ナミの言葉は最後に格納庫に近づいたウソップに向けられており。
「でっ、でも、そうしたら半日たったって抜けねぇと・・・」
綺麗に揃えられたストレートの髪をクシャクシャと掻き毟りながら、ナミは心配そうな顔で見つめているサンジに目を向けた。
「ネェ、サンジくん。いっそ、あいつら気絶させてくれない?」
「ナミさんのご命令とあらば・・・と、言いたい所なんですが、いくら俺でも、今あそこに近づくのは・・・」
サンジの言葉にガックリと肩を落としつつ、ナミが誰言うともなく叫んだ。
「もうもうもう!!!大酒のみのくせに、なんでシンナーなんかでラリッちゃうわけ?」
それは関係が無いのではと思いつつも、延々と開いたドアから漏れ聞こえる、 嬌声と喘ぎ声にゴーイングメリー号の船員たちは盛大なため息を吐き出した。
そして、直接の原因になったであろう修理用のシンナーを、二度とこの船には持ちこむもんかと全員が心に誓っていた。





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戯言:いや・・・ただゾロが酔っ払ったらどうなんのかなって、思っただけなんですが・・・。(爆死!)
な〜んで、こんなになっちゃったのかなぁ〜?ゾロ、壊れすぎだぁ〜〜!!【><。】ウエーン!!
ちなみにロロさんが上に乗りっぱなしなのは、Tさまに火種をつけられ、Iさまに煽られた結果です♪(笑)
しかし、襲い受け・・・どうしてこんな言葉が頭に浮かんだんだろう?(謎です・・・)