<分岐点>




俺は今日、一つの決意を胸にしていた。
これからの俺とルフィの関係が変わってしまったとしても、もうそうすることでしか、自分の欲望を押さえる 事ができなかったから・・・。

深夜に、俺はルフィに話があると船首に呼び出した。
ルフィの方が先に来ていて、あいかわらずのお気に入りの場所で、のんびりと暗い海を眺めながら風に吹かれている。
「ルフィ。」
俺が呼ぶ声にややゆっくりと振り向くと、ルフィはにっかりと笑う。
「よぉ、ゾロ。遅かったなぁ。」
ある思惑の為にしなくちゃいけない事があったからとは言えず、
「あぁ、悪かった。」
一言だけ呟くと、俺はルフィの座る場所の真下にきて、ルフィに手を差しのべる。
ルフィは、笑顔のままで俺の腕の中に落ちてくると、クンと鼻をひくつかせて言った。
「いい匂いすんな。」
俺は、瞬間頬が染まり、それを見せない様にそっぽを向いた。
ルフィは『まぁ、いいけど』とか呟きながら、俺を見て笑う。
「そんで、何の話なんだ?」
言いながら、俺の首に手を巻きつける。
至近距離の笑顔にドキドキする心を押さえようとして、一つ息をつくとルフィの耳に囁いた。
「ここじゃなんだから、格納庫にでも行かないか?」
その言葉が、お前が欲しいと言えない俺の精一杯の誘い文句だと気付き、ルフィは掠めるような口づけをする。
「いいぞ。んじゃ、行こうか。」
ストンと腕の中を出て、今度はギュッと手を握りしめながらルフィがスタスタと歩き出す。
その腕に引かれるように、俺も後を付いていく。


格納庫に入り、まず鍵を降ろす。
こんな時間に誰かがくるとは思わないが、もしサンジにでも 乱入されたらと思うと気が気でない。
特に、この頃のサンジが俺を見る目はちょっと普通でなくなっている気がする。
イヤ、もちろん原因を作ったのが自分であることも理解はしているのだが、俺の目にはもはや、 ルフィの事しか見えていないから。
切れた時のルフィが何をするかと思うと、頼むからあきらめて欲しいと願わざるを得ない。
独占欲も嫉妬欲ももしかしたら人一倍強いだろう恋人の、怒りを目にした時のサンジを思うと俺の心に暗雲が宿る。
それだけはイヤだから、何とか自分の所で押し止めたいのだ。
それに、これからする事がルフィにとって良い事なのか、悪い事なのか、俺には判断が付かなくて、 でももうこれ以上、自分の欲望を押さえていることなど出来ないから、だから欲しいものは欲しいのだとはっきり わからせなければいけない。

ドアの前でこれからの事に思いを馳せていた俺を、ルフィはクイと腕を引く。
「どうしたんだ?ゾロ。」
不思議そうな顔で見つめられ、何でもねぇ、と頬を染める。
まさか、このルフィが人の思考を読み取れるほど賢くはないと思いながらも、こいつの直感は侮れねぇし、とも思うのだ。
ルフィは、ふーんとつまらなそうに呟くと、何かを思い出したように、ニヒャッと笑って俺を見る。
「ゾロ、話しながらでもヤルこたぁヤレるだろ。」
そのまま唇を寄せてきたから、俺もゆっくりと唇を合わす。
ルフィの舌が俺の口腔内を滑り、俺の舌を捕まえる。
強く吸われ、絡ませられ唇を離す頃には、二人とも荒い息を吐いていた。
「ゾーロッ。」
ルフィの腕が誘うように俺の背中を捕まえて、自分の方へと引き寄せる。
倒れ込むようにルフィの上に圧し掛かると、俺達はまた深いキスを繰り返す。
「んっ・・んんっ・・・ル・・フィ。」
圧し掛かったままの俺を、ルフィが少しだけ持ち上げると俺のシャツを捲りだす。
ルフィの手が背中を撫でる快感に、俺は一つ吐息を漏らす。
「ゾロ、俺も脱がせろよ。」
言われるままに手を延ばし、ルフィの服を脱がしていくと、満足そうに俺を見る。
その視線に引きつけられるように、ルフィの首筋にキスを這わす。
そのまま、下へと降りていく俺の頭をルフィは片手で捕まえて、気持ちよさそうに身をまかしている。
首筋から胸へ、胸から腹部へ、そして俺はその下で脈うちはじめているルフィのモノを取り出そうと、ズボンのボタンをはずし、 チャックを唇で引き降ろす。
目の前にもたげて来るルフィのモノを、待ちきれないとばかりに、下着ごとルフィの衣服を取り去ってしまう。
上半身をはだけられ、下半身をすべて晒されながら、ルフィは薄く笑って俺を見上げてくる。
その目に俺の中の欲望が頭をもたげ、俺はその欲望に忠実に、ルフィのモノを口にした。
チュッと先端にキスをし、括れに添って舌を這わす。
その舌が根元までたどり着いた時にはルフィのモノはすでに硬く勃ちあがっていた。
それを今度はパクリと口に含むと、上下に頭を動かし出す。
「んっ、いいよ、ゾロ。すげぇ、気持ちいい。」
頭に軽く手を添えられ、ルフィの声を聞きながら、俺は自分の欲望が首をもたげているのを自覚する。
それを考えない様にして、夢中になってルフィのモノをくわえていた俺の顔を掴みあげると、ルフィが視線をあわせてきた。
「なぁ、ゾロ。俺ばっかりイッテも気持ちよくねぇだろうが。お前も準備してやるから、落ち着けよ。」
言いながら、俺のモノに手を延ばしやんわりと扱きだす。
すでにもたげていたモノに、直接的な刺激を与えられ、俺はクッと唇を噛む。
俺の反応を楽しむようにルフィは俺を扱き上げ、張りつめさせると手を離した。
そのまま倒れ込むようにして、自分の足を開き、手を俺の腰にまわしてくる。
「来いよ。ゾロ。」
だが、俺はルフィの手を掴むと、腰から引き剥がした。
驚いた顔でルフィは見上げる。
「ゾロ?」
不思議そうな顔をするルフィを無視して、俺はルフィの腕を下へと誘導する。
「・・・???・・・」
まだ、意味がわからないルフィに業を煮やすと、俺はルフィの指を掴み後ろへと添わせる。
ルフィの指が触れたところから、体の中にゾクリとしたものが走り、思わず甘い声をあげる。
「あっ・・んんっ・・・。」
そんな俺を下から見つめながら、ルフィがやっとわかったと言うように、大きく頷いた。
「なんだ、ゾロ。お・れ・が・欲しかったのか?」
そのストレートな物言いに俺の顔が真っ赤に染まる。
だが、これで躊躇ってはいけないのだと必死に自分を励まして、ルフィを見つめてコクリと頷く。

だって、しかたないじゃないか。
あの、特別の日以来ルフィは俺を抱かなくなった。俺に抱かれる事を望んだ。
それは、俺とルフィの思いが同じ場所にあるのだと俺の体に刻み込む為。
そして、例え俺に抱かれていてもルフィは変わらないのだと俺に教え込む為。
最初はそれでも良かった。
抱きしめて、ルフィの中に自分を放つ。
だが、満足したはずの欲望が俺の心を責め苛む。
足りない、足りない、これじゃ満足できない。
そんな思いに急かされるようにルフィの体を抱きしめるうちに、俺はハッと気付いた事があった。
(いつから見ていない?)
それは、衝撃。
忘れていられた自分が信じられないくらいだった。
ルフィの中にいるもう一人のルフィ。
俺を縛り、俺を魅了し、そして残酷なまでに俺を支配する、夜のルフィの顔。
それを思い出した瞬間、俺は何が物足りなかったのかようやく気付いた。
俺が欲しかったものは、夜のルフィの激しいほどの束縛。
だが、それに気付いた時、俺の体はあいつによって変えられてしまっていた事も、同時に知ってしまった。
抱きしめるだけじゃ足りない。
ルフィのモノを受け入れ、壊れるくらい抱きしめられ、意識がなくなるほど愛して欲しい。
そんな、浅ましい体に成り果てていたのだ。
一度気付いてしまえば、もう忘れる事などできはしない。
どんなことをしても、それでルフィに呆れられたとしても、体に灯った情欲の火は、もうあいつにしか消せはしない。

だから、俺が頷いたあと、ルフィがふと下を向き、次に俺を見た時の喜びは体が震えるほどの至福。
目の前にいたのは、会いたかった男。夜の顔のルフィ。
ルフィは俺を絡め取る瞳で、微笑んだまま言葉を紡ぐ。
「自分から誘うくらい、俺に飢えてたんだな、ゾロ。」
言いながら、少し乱暴なくらいに腰を引かれる。
そのまま俺を自分の腰の上に跨らせると、
「いいぞ。お前が望むなら、いくらでもやるさ。」
言葉と同時に、俺の後ろにルフィの指が侵入してくる。
「ひゃうん・・・あぁ・・・あっ・・・。」
久しぶりに感じたルフィの指の感触に、俺は理性が壊れていくのをしった。
ルフィの腰に手を掛け、もっと奥へと誘導するように腰を揺らす。
「っあ・・・んんっ・・・・あん・・・ル・・フィ。」
「なんだ、久しぶりなのにそんなによがっちゃうほど気持ちいいんだ。」
意地悪くそう囁かれ、俺は羞恥で全身が染まる。
そんな俺を追いつめるようにルフィは指を二本に増やし、俺の感じる場所を的確に暴いていく。
「ひぃっ・・・あ・・・あぁっ・・・んっ・・・あぅっ・くぅ・・・・・。」
止めど無く溢れる矯声が、よりいっそう俺を狂わせていく。
ルフィの上で媚態を演じながら、俺はうっすらと涙する。
「泣くほど、感じちまったか?そんなに後ろが気持ち良い?」
椰楡するように言うルフィの言葉にカッとして、俺は思わず怒鳴り返す。
「てめぇがこんなにしたん・・だろうが。」
瞬間、首元を空いていた手で掴まれ、ルフィの顔面へと引き降ろされる。
目の前で笑う絶対者の微笑みに魅入られたように動けなくなる。
ルフィは後ろの二本の指を引き抜くと
「そうだよな。俺がゾロをこんな風にしたんだ。じゃぁ・・・・・・。」
グイと腰を掴み上げられ、一気にルフィのモノに貫かれる。
「うあああああああぁ・・・・・・。」
「責任はとらなくちゃな。」
俺の悲鳴と同時にルフィの台詞が耳に響いた。
いきなりの挿入に目眩がしそうになった俺を間髪入れずに揺さぶり出す。
「つぅ・・あっ・・・ううっ・・・・くぅん・・・んんっ・・・」
だが、最初の痛みが徐々に消えてゆく頃、俺の放つ声は矯声と喘ぎ声だけになってゆく。
「はっ・・ひぃっ・・・あっ・・ル・・・ィ・・ル・・・フィ・・・」
俺の腕は無意識にルフィの体を抱きしめており、俺の欲望もルフィの腹に擦られて耐えがたい快感をもたらす。
それに気付いたルフィが手を伸ばし、俺のモノを握り込むと自分の律動にあわせて扱き出す。
前後をルフィに嬲られて、俺は急速に追いつめられていく。
「ル・・フィ・・もっ・・んんっ・・もっ・・や・・だっ。」
濡れた音と、俺の発する声だけが空間を埋めてゆく。
ルフィのモノで穿たれた場所は、ルフィが己を引き抜くたびに絡みついてもっと奥へと飲み込もうとする。
「ひぐっ・・あっ・・ああん・・・い・・い・・・あっ・ル・・フィ」
止めとばかりに俺の頭を引き寄せたルフィは耳朶を甘噛みしながら囁いた。
「ホラッ、イっちまえよ。」
言葉が耳に入った時。
一際強く、突き上げられ、同時に前をギュゥッと握られ、俺の意識は飛んだ。
前後するようにルフィも欲望を俺の中へ、解きはなつ。
ルフィの腕にしっかりと抱きしめられながらも、俺の意識は浮上することはなかった。


その後の俺は、ルフィが俺の髪を軽く梳きながら、嬉しいような困ったような顔で微笑んでいたのを知らない。
俺の耳元で、小さく『愛してる』と、言ってくれた言葉も知らない。
ただ、ルフィがホーッとひとつ、ため息をつくと。
「ヤッパリゾロって受けの方がいいのか?」
とため息をつきつき、一人頭を抱えていたことは知らなくて良かったのかもしれない。



UNDERへ

戯言:ノーコメント!!というか、この前に一本お話入ります。
内容は、一応ルフィの初受けって感じになるんですけど、いつもと違う内容に、
頭が付いていかないらしくて、どうしても進んでくれないんです。
それが書き終われば、うちのお話、くっついてくれるんですけどねぇー。
ということで、そのお話はまたのお楽しみってことで・・・。(早く書けるようになりたいなぁー)