大人用音楽
YUMI'S CD REVIEW

 

山崎まさよし 『アトリエ』 6th Full Album 2003.6.25

 

愛読書TV BROS。私はこの雑誌のCDレビューが大好きなのですが、その『アトリエ』のレビューの第一声が、「シュギョク!」でした。さてはて。シュギョクってなんだ?私は、すごく良くて、思わずシュギョクイイ!って叫んでるのかと思いました(笑)。「珠玉」でしょうか?「珠玉の作品」のシュギョクでしょうか?ってどんな意味だったっけ?辞書引いちゃいました。

珠玉=美しいもの、立派なものをほめたたえていう語。特に、詩やあまり長くない文章などについていう。

ふむふむ。美しくて立派!詞も楽しみ!!私はこの時、「どうなの?アトリエ?!」の状態です。先行シングル2曲「全部、僕だった。」と「未完成」しか知りませんでした。ラジオでアルバム曲を聴くこともこれまでなかった。でも、ピリピリはしません。(スガ『SMILE』の時のように(笑)。) 過剰な期待感に溢れすぎちゃうことはないから。いいに決まってる!想像がぐるぐる回ってた…。

『アトリエ』、すぐに開封することもできず、しばらくジャケを眺めた。ちょっと手が震えてる感じ…。CD聴くのにこんなにドキドキしちゃうなんてねぇ…。意を決して開封。CDを取り出してトレイにセット。ヘッドフォンをつけて、あらかじめ大音量にセット。部屋の明かりを消して、姿勢を正して、いざプレイ。あっ、ヤマちゃんの音だ……。

そして、『アトリエ』第一聴の感想は。しゅぎょく いい…。よすぎです。パッと言葉にならないくらい…。じ〜んと感動した。なんだろう、この鳥肌。時折もれちゃう感嘆の小さな声と溜息…。特に泣かされる曲はない。涙が出ちゃったりはしないんだけど、うるうるしちゃって、ずっと下睫が湿ってた。そんな第一聴でした。まさに「珠玉の作品」。

「とてもいいです。一人でよくぞここまでと。すごく沁みるなぁ。じわじわくる。今までのアルバムと比べても、深いなぁと思う。」というのは、「音楽と人」インタビュー冒頭のインタビュアーの言葉です。この方は、のっけからこう簡単な言葉で賞賛することって少ないです。大抵、何がどういいのか、具体的に話します。だから、私は単純に、そのレベルを超えて、トータル的に素晴らしい作品なのだろうと感じてました。そして、そのまま、私の第一聴の感想にもさせてほしい。そのとおりでした。

一聴する前、空腹時においしいエスプレッソを、マグカップで1時間かけて、じっくり味わうような、そんなイメージを漠然と抱いていた。かなり間違った飲み方だが、それほどに苦く、香ばしいのでは、と。そして、そのとおりになりました。濃いいエスプレッソ。お酒なら何が合いそう?シングルモルトなんていいんじゃない?全部ひとりで紡ぎ出してるだけに、単種のうまさ!でもヤマちゃんはすっかり焼酎派。本格焼酎ね!(笑)

ヤマちゃん、すごいところに行っちゃった。デビュー当時「天才より凄いヤツ」と言われてた人は、それを本当にしちゃったんだ、そうなったんだ、って思った。ずっと聴いててよかった…。感激だ…。

その後、何度も『アトリエ』を聴きました。なんだかすっかりヤマちゃんモードで、過去作も聴き入っちゃったりで。彼はいつも今がうまく行ってなくて、過去を振り返ったり、未来を想ったりしてますねぇ…。基本的には変わりませんね。でも、焦燥感がなくなったかなぁ。これがオトナになった感じがする所以かしら?

『アトリエ』は、実に味わい深い作品で、やはり彼の人生観が垣間見ることができる。普通、人生観なんて語るのは、中年以降だし、確立するのは高年以降のような気がします。人生観と断言するのは、31歳の彼にはちょっと早いと思いますが、常に完成度の高い作品を送り出し、オヤジ化も進んでる山崎まさよしには、早くない。しかし、まだまだこれから、ずっと続けて進んで行かなければならない。誰もが多くの人の中で、とりあえずひとり自力でがんばっていくしかない。そこにはいろんな感情があり、誰もが、いろんな経験を通じて、いろんな喜怒哀楽を一人で抱えている。そんな〈僕〉と〈君〉の思いが詰まっているから、彼の歌はいろんな人の心に届くのではないでしょうか。

『アトリエ』にある現在の山崎まさよしの赤裸々な心情告白は、「未完成」。今もまだ通過点、TRANSITION。いつまでも完成してしまうことはない、ヤマちゃんの現在完了形が詰まっています。すべての悩める未完成人間に贈る!

ともかくこれは、『ステレオ』の真性進化盤である。アトリエの入り口に自画像。かなり本格的な感じです。間違いなく濃縮ヤマ汁100%。すごくいい音、質感だと思います。その情景をも思い浮かばせるような…。(ヤマちゃんの曲には、そういうの、多いですけどね♪) 先に歌詞寄りの感想を書きましたが、私は歌詞よりもサウンドに惹き込まれました。できすぎな感じもしないでもない。が、しかし、すごい、いい…。

もうすでに、弾き語りがすごい楽しみ!泣きそう…。

『アトリエ』全曲レビューに続く。

 

 

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