大人用音楽
YUMI'S CD REVIEW

 

山崎まさよし 『アトリエ』 全曲レビュー

 

01. 君とピクニック

イントロで響くハワイ産ワイゼンボーン(アコースティック・スティール・ギター)。独特な
甘苦い香りを醸し出している山崎らしい音色。ずらり並んだ体言は何を意味してる?
私は佐野元春の「情けない週末」が浮かんだ。永遠に不安な中でのピクニックよ…。

 

02. 未完成

先行シングルでアルバムの命題が詰まってる。ひとりバンドグルーヴ、緩い8ビートで
困難だと推測するが見事。一人多声コーラスはキレイすぎ。慣れないはずのオルガン
は巧い。山崎の不透明な現在と未来を歌った詞。共感しない同世代はいないだろう。

 

03. 神様も知らない午後

神になりたいスガへのあてつけ?神も万能ではない。打ち込み&ベースレスアコース
ティック。不思議な感触が美しい。天気は良さそうだが、心模様は曇ってるか。明確な
サビはないのに、聴き手を掴んでしまう、このメロディー力はすごいね。静美な佳曲だ。

 

04. レイトショウへようこそ

レゲエビート珍しい。どうして?なんか不穏な曲。AメロとBメロの間の山崎らしい多彩
さが聴き所。レイトショウと聞いて都会の大繁華街の大映画館を喚起したが、場末の
小さな映画館が舞台、名画座であることが歌詞に伺える。孤独な夜に映画が似合う。

 

05. 僕と不良と校庭で

非常に美しいハーモニクスの学校のチャイム。これがあるなら、授業は退屈でも学校
は退屈じゃないぞ。この詞は本当に高校時代を思い出してのことじゃないか?美メロ。
バンドサウンドだが生の弾き語りに期待。今も昔も未来が不明なのは変わらない…。

 

06. Doubt!

唯一の勢いファンキー曲。これがなくっちゃね!ヤマ汁満載のお得意曲。これも一人で
できちゃうの!ライヴ曲、マキゲで生で踊りたいね。アドレナリンではなくドーパミンだ!
中毒になるよ、絶対。机上の空論?耳が痛いわ。だけど疑ってばかりいないで行動を!

 

Corridor

トラックナンバーなし。では曲目じゃない?でもタイトルはあり、意は廊下。これを境に
A/B面に分かれ、ちょうどレコードひっくり返す間のBGMになってるらしい。特別CDに
こんな仕掛けをするなんてA/Bで趣が違うということ。どっちが好き?私はBが好き。

 

07. サマエルの記憶

アコギテク満載のイントロ…あれっ?南佳孝?(笑・失礼!RSRで競演です)。パーカッ
ションにボッサギターのラテン歌謡曲。とても気持ちいい、好き。間奏が聴き応えあり。
歌詞も80年代的AORの匂い。互いのしがらみが絡み合ったグレーな大人の恋愛歌。

 

08. オモイスゴシ

思い過ごしも恋のうち?ううん、これが現実。『TRANSITION』にも入りそうな曲。これが
一人でできた成長進化の証。気持ちいいリズム、弾き語りライブではどうなるの?私
は是非、マキゲで聴きたい!ドキドキしちゃう?今すぐ君になって抱きしめられたいよ!

 

09. 最後の海

スガ「夕立ち」と同じテーマが浮かぶ。情景描写だけで訴えてくる心象風景。特別なこ
とは何もなかったが、ずっと忘れられない思い出。リズムボックスをバックに弾き語る
シンプルなサウンドだけで、映像が見える。ライブで是非、その海に行ってみたい…。

 

10. アトリエ

暖かそうだなぁそこ。ヤマちゃんのアトリエに行きたい。私も通っていい?アルバム
タイトルが決まってから創られたそうだが、まさにこのアルバムの空気を表すタイトル
チューン。〈いつになってもいいから〉いいえ、いつの時代にも愛される普遍的音楽。

 

11. untitled

私がタイトルをつけてあげよう「名前のない川」。山崎・和曲シリーズ第何弾目だろう?
やわらかい月に照らされて、ひとりぼっちで歩いてるとなぜか水辺にたどり着いている。
名前のない鳥も帰ってくるでしょう。こんなに観念的な詞も今までになかったよなぁ…。

 

12. 全部、君だった。

心情と音像が完璧一致した名バラード。じんわりと沁みる…。孤独で静寂な夜を越えて
朝を迎えてしまった、その次の新しい物語が欲しいところだが、消え入りそうな心底の
叫びはフェードアウト。ラストに相応しい重い過去へ思いを寄せる超切ないラブソング。

 

※ マキゲ=山崎まさよしライブでのパーマネントな3ピースバンド。ライブ盤は超オススメ!
マ=山崎マさよし(Vo&G)、キ=中村キタロー(B&Key)、ゲ=江川ゲンタ(D&Per)

しかし、このアルバムは、山崎まさよしがすべて 《ひとり》 で演奏した渾身の作である。

「アトリエ」ロングレビューも合わせてお楽しみください。

 

 

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