不滅の花 10




 戦う事は怖くなかった。

 消去法で残った選択肢だった。
 探せばもしかすると他にもあったかもしれない。

 そのまま故郷に居続ける事も出来ただろうとも思う。
 小さな村だったから、周囲の誰もが顔見知りだった。
 だからこそ、出たのかもしれない。

 諸々を言い訳にして。

 あのまま故郷に居たら、どうしてただろう。
 少なくとも、1つだけ解る。
 あの人には会えなかった。
 街や野ではなく、戦場でしか会えなかっただろうと思うから。
 他の場所で見かけたりはあったかもしれないけれど、多分すれ違ってそのままだ。
 隣を行き過ぎるだけの見知らぬ人間で終わっていた。

 ――除隊前にあの戦争は終わった。
 しばらくの間は復興支援に携わった。
 道路の補修とか、公共設備の復旧と整備とか、そんなものだ。

 支援隊解散後は、別の土地へ行った。
 開墾を手伝って日々の糧を得た。
 貧しいけれど皆優しく、親切だ。

 噂は何も流れてこない。
 それはそうだ。
 こんな辺境には普通の時事すら伝わってこない。

 除隊前に聞いた話では、あの後、わりと直ぐに弟子を取って、魔法士は引退したらしい。
 何処に行ったのかは知らない。
 戦場に居ない事だけは確かだ。

 戦場外で生活している様など想像できないのだけれど。

 硝煙と、
 砂埃と、
 カード。

 元気だと良い。



 開墾地から家路につく途中。
 掌に馴染んだ鍬。
 あの初夏の草原や、降霜の朝の地に立ってみたいと、時折、今でも思う。









END



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【閉じ込められた魔女】(空耳お題)
魔女ルルの兵士時代の話。
戦争中なのである程度予想してましたが、暗めですかね……
卯月くんは出てきませんでした。
最初は居た筈なんです。いつのまにか居なくなってた(爆)


2006/09/27
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