不滅の花 05




 ギルフォード軍曹は相変わらずマイペースで、休日は兵士達から煙草を巻き上げ、出撃命令があれば、杖を振り呪文を唱えた。爆砕魔法を撃ちまくり、天から炎を落とした。敵の意気を消沈させるどころか敵そのものを焼失させた。
 彼女の参加した戦闘は、決して負けなかった。
 それはそうだ。
 合戦のしようがないほど、敵兵数は激減――と言うか、ほぼ消滅するのだから。
 常に彼女を投入していれば、この地方の制圧はもっとずっと早かっただろう。
 此処だけではない。
 もしかすると、戦争の終結そのものが。


 何故そうしなかったのか。
 この点は酷く疑問だ。
 いくら強力でも規則上休みを取らせないわけにはいかなかったとしても。
 敵陣に攻属魔法士が配備されなくなっても。


 おそらく本国の上層部は怖れていたのだ。
 彼女1人の力で戦争が終わってしまう事を。
 彼女1人に栄誉が集中する事を。

 魔法使いを英雄として飾る事を。
 それによって魔法使い達が『力』を得てしまう事を。


 自分達の都合の良いように使っておきながら。


 戦えと命じられれば戦う。
 退けと命じられれば退く。
 一般兵にとって、上官の命令が至上だ。

 戦況が思わしかろうと思わしくなかろうと、正直、シュナにはどうでも良かった。
 守るべき相手を守る事こそが、先決だったから。

* * *

 4ヶ月が過ぎた。


 初冬の朝日の中を、彼女は片手に長杖を持って霜の降りた地を歩く。少し遅れてシュナも続く。
 降り注ぐ金色の光が降霜に反射して、小さな無数のプリズムを生んでいた。
 微かに旋律が聴こえる。
 謡っているのは彼女。
 焦土と化した大地に、再び緑が芽吹くように謡う。それも魔法士の仕事だ。
 耳慣れない魔法語の歌詞は、見た事のない遠い異国を思い起こさせた。
 平和だと、思った。
「……ふぅ、おしまい♪」
 寝癖なのか癖っ毛なのか解らない髪を揺らして振り返る。
「帰ろっか」
「あの軍曹、お訊きして宜しいですか?」
「何?」
「楽しいですか?」
「は? 何が?」
「この仕事です」
「……えーと、音痴は音痴なりに頑張ってるつもりです」
「いえ、そうではなく。攻属魔法士としての仕事全般、です」
 ずっと訊きたかった事。
 やっと……訊いてしまった。


 この人は、どうして戦場にいるのだろう。
 いつか訊いてみようと思っていた――









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