82 わが欲りし野島は見せつ底深き阿胡根の浦の珠そ拾はぬ
私が見たいと思っていた(美しい)野島は見たが阿胡根の浦の深い底に潜む(美しい)真珠は
まだ拾っていないよ (中 皇 命)(1-12)
この歌は658年紀の湯行幸の際の歌であり,作者の中 皇 命(なかつすめらみこと)については斉名天皇の娘、間人皇女(はしひとのひめみこ)、中大兄皇子の妻、倭大后(やまとのおおきさき)等諸説があるが斉名天皇説が有力。
阿胡根の浦(あこねのうら)、現在場所不明、珠-鰒珠(あわびたま)ともいい、真珠のこと。古代、珠は霊魂(たましい)に通じ、行幸の5ケ月前に亡くなられた斉名天皇の孫、中大兄皇子の嫡男の魂をこの美しい深海の阿胡根の浦に求めた鎮魂の歌でもあるといわれています。恐らく船上から詠まれた歌であるといわれている。
御坊市名田町野島の浦 2002/02/15