2005年 編集後記 「珠音へ」 2005年4月15日
あなたが居なくなって19年がたちました。お父さんが家を出て5年がたちました。
そして、唯一の伴侶だった愛犬ランランがこの3月28日に息を引き取りました。
広い家に、全く私独りがとり残されました。音も無い、臭いも無い、体温も無い
がらんどうの空間です。とてもつらいです。
「ランランはあなたに似ていた」と思います。いつもお母さんを思いやってくれていました。
この3月には、耳も眼も悪く、後ろ足が麻痺していて、歩けなかったのですが、乳母車に乗せ
るととても嬉しい 表情をしました。近くのお店にも乳母車に乗せて行きました。買い物を
持って出てきますと 動けない身体を何とか片側に寄せて、荷物ののる空間を作ろうとする
のでした。「ランラン、心配しないで良いのよ。ポケットが付いているのよ!」と思わず
大声で呼びかけてしまいました。ほかのお客さんが、こちらを振り向くのでした。
あなたもいつもそうでしたね。お母さんが疲れていないか、困っていることが無いか、
まるであなたの方が保護者のように気遣っていてくれたのでした。
でも、お母さんも優しい人になろうと決心しています。クリニックには毎日新しい赤ちゃん
がやってきます。悲しみを忘れるぐらいの大きな声で泣きます。それから、昔々子どもだった
人が、お母さんになって、赤ちゃんを抱いて現れることもあります。時は流れていきます。
自然の流れのままに、もうしばらく小児科医で居たいと思っています。
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