栃の木と おじさん
            2006/3/16 new


平成18年1月、枝が5本切られました
同3月「フューフャフョー」は「駐車場」ではなくて「中継所」でした
 
 ご近所に見事な竹、杉、いちい等に囲まれたお屋敷があります。普通のお宅の2〜3倍の広さでしょ
うか。そのお宅のお庭の北西の角に大きな栃の木があって、密かに私はマイツリーと呼んでおりました。
ある日気づきました。ぐるりの杉の木や、竹がどんどん切られていくのを見たのです。 あーどうしよう、
栃の木も切られるのかしら。おじさんに会わなくては、と思いました。昼休みに通りかかると、おじさん
(知らない人だけれど、おじさんと密かに決めているのです)が腕を組んで立っていました。
「あの、ここはどうなるのでしょうか?」おじさんは答えました。「フューフャフョー」と言いました。初めて
気づきました。おじさんには一本も歯がないようでした。TVの日本昔話に出てくるような感じです。
そこで勝手に「駐車場」と思い込みました。「あの、栃の木は絶対残して欲しいのですが」と勇気を出し
てお願いしました。するとおじさんは「俺も好ぎだがら、栃の木は切らねーがす」と言いました。ホッと
しました。それで垂れ下がっていた枝5本だけが切られて、栃の木は残りました。
毎日沢山の工事の人が入りました。水準器らしいもので、丁寧に測量したり、空き地の真ん中を深く掘り
込んだり、その中についに数十本の鉄柱が、円陣を描いて埋められました。おかしい、「駐車場」では無
いなーと考えました。すると今度は大きなコンクリートの筒状のものが7本運ばれてきました。下から上へ
太さが次第に細くなっていきます。20mでしょうか30mでしょうか、あっという間に搭が建てられました。
いくらなんでも了解しました。「中継所」とおじさんは言っていたらしいのでした。 ケータイの基地局が、
もう少しで完成です。 良かった。 栃の木は残りました。
5月にはヤマセが無ければ、白い花穂が木全体を被います
台風に落とされなければ、花の幾つかが実を結びます

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