お注射 こわい
          2005/6/12 new
 喘息発作のお客様が、相談したように沢山やってくる日があります。
たいてい急に気温が下がった日です。
4才のタックンはいつもはクリニック中走り回り、お母さんに怒られる
ことを次々しまくるのですが、今日はあまりにも静かでした。
「昨夜は苦しがって眠れませんでした」とお母さんが言いました。
聴診しますと立派な喘息発作でした。息を吐き出す時にゼーッゼーッ
と苦しい呼吸になります。生後4ヶ月からいらしていますが、今までで一番
辛い呼吸です。吸入をしてもらいましたが、まだ苦しいのでした。
「お尻にお注射をしましょう」とこっそりお母さんの耳元で話しました。
ベットに腹ばいにしたとたんに、タックンにばれてしまいました。
「オレ、注射はニガテナンダー!」と顔を伏せてさめざめと泣きました。
いつものすごいタックンとは別人になっていました。
 お注射のあと5分後に再び聴診しました。とても良い音色に変っていました。
決して私もお注射はしたくないのですが、止むを得ない時もあります。
 ユージ君は小学2年です。以前自家中毒症になった時、血管注射をしたこと
がありました。 今日は3番のお部屋で待っているはずです。
「こんにちは」と入りましたら、顔はバスタオルにうずめて、身体を丸くしています。
「どうしたの?」と聞いても返事をしません。息を止めているようです。
「どうしましたか?」と今度はお母さんに聞きました。
「死んだふりをしているのだそうです。」とお母さんが言いました。
「だって先生はクマじゃないから、死んだふりしても通じませんよ」と言いました。
大丈夫、今日のオシッコは合格でした。だからお注射は必要ないのでした。
第一、今朝は、ご飯もおかずもお味噌汁もしっかり食べましたとの事、自家中毒症
のはずはありません。ユージ君の考えすぎでした。
 軽い気管支炎があっただけでした。
昔々(昭和45年)、医学部を卒業したての頃は、お注射をする機会が結構あり
ました。その後、解熱剤、鎮吐剤、抗けいれん剤などの便利な座薬が開発
されました。 めったにお注射はしなくなりました。 泣いたり、あばれたり
するお子さんを、なだめながらお注射をすることは、私達にとっても辛いことです。
できたらしたくありません。 でもやっぱり止むを得ない時もあるのです。