トイレがこわい
   2004/9/29  new
夏休みは旅行中のお客様がしばしばいらっしゃいます。
 今日は小学生、中学生でおなかの痛い方が数人いらっしゃいました。
ゆきえさんもその一人です。悲しい、苦しい、そして初めてのところなので
緊張でいっぱいいう表情で、お母さんと一緒に入ってこられました。
この年齢ですと虫垂炎のこともありますので、こちらも緊張します。
ベッドに寝ていただいて、おなかを静かに診察しました。
とても硬い石ころ状のものがどっさり手に触れました。
  私 「毎日ウンチが出ていますか?」
  ゆきえさん 「...........。」

私 「宮古のおばさんの家のトイレは水洗でしょうか?ポッチャントイレでしょうか?」
お母さん 「はい。ポッチャントイレなので、怖くてできないと言ってます。
  今日は龍泉洞まで行きましたが、その帰りにトイレを借りようとしました。
  そうしたら、便槽の上に板が二枚渡してあるだけで、大きな虫もぶんぶん
  飛んでいますし、この子はびっくりして飛び出してきました。」
私 「今ここで浣腸してウンチをだして良いでしょうか?それともおばさん
  のうちに戻ってからお母さんがかけますか?」
お母さん 「こちらでお願いします。」
ということになりました。  結果は予想通り、びっくりするぐらいの量でした。
一番の診察室に、少し経ってから行ってみました。
今度のおなかは、ソフトでゆったりして、気持ちよさそうでした。
「どうでしょうか?楽になりましたか?」と聞きますと、ゆきえさんは黙って
うなづきました。安心して、落ち着いた表情になっていました。
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お母さんが席をちょっとはずした時に言ってあげました。
あなたがたの世代は世界に羽ばたいてお仕事をするようになるでしょうね。
中国やインドやアフリカでは、トイレの無い地方もありますよ。  そこでは
野っぱらで御用を足さなければならないかもしれませんね。きっとゆきえさん
は丈夫な方だと思います。だから今度は心を強く持つようにしましょうね。
どんなところでも心を強く持って、御用が足せる人になりましょうね。
ゆきえさんはにっこり微笑んで、しっかりうなづきました。

一日の最後にカルテを全部見直します。
ミスが無かったか、説明が足りていたかどうかの確認をします。 
ゆきえさんのカルテにメモがはさんでありました。
「こんな先生が東京にも居ると良いのにね!」とお母さんに話したそうです。
「よろしく」との事でした。と、事務スタッフが書いたメモなのでした。
そのメモ用紙が、なんだか表彰状のように見えました。