コミュニケーションのとり方講習会
 高塚人志先生in盛岡

   レクリエーション授業で心を開く
   2004/1/21 new

     始めに最近経験した2症例をお話しましょう。
 症例1.
マキちゃんは小学一年生。 真綿でくるんで、そっと箱にしまっておきたい
ような優しく美しいお子さんです。ある日の問診表に「三日前から学校で
お漏らしをして、濡れていても分からないようです」と書いてありました。
本人はしょんぼりと座っています。お母さんも沈んでいます。どうしたので
しょう。よく聞いてみると、「友達に万引きするように言われて断れなくて
やったそうです。その後受け持ちの先生から呼び出しが来ました。
その翌日からお漏らしが始まりました。」という事でした。
  かわいそうに。  どんなに毎日緊張してすごしているでしょう。
「おうちの人も、クリニックの人たちも周りの人はみーんなマキちゃんの味方
よ。お友達にはいけないと思ったときは、いけないとはっきり断りましょうね。」
マキちゃんはいっぱい涙をためてうなづきました。
気持ちをやわらげるお薬を少し処方しました。一週間してお母様がいらっ
しゃいました。「お漏らしもなく、元気に学校に行っています。」との事でした。
  友達関係が昔と違ってきているなーと思いました。
  












 症例2.
 道子さんは中学一年生。剣道部に所属して活発に毎日を過ごしています。
ある日顔面蒼白でお母様に抱えられながら入室しました。とてもただ事では
ありません。そのまま診察ベットに崩れるように横になりました。お母様の長い
お話によりますと次のようになりました。「仲の良いグループ9人だったので
す。ところが一人を対象にしてシカトする。参加しないと今度はその子をシカト
するというじわじわしたいじめが始まりました。外から見ると別にたいしたいじ
めではないけれど,この子はパニックになって、ここ二、三日何も食べられま
せん。食べさせると吐いてしまいます。具合が悪く眠ることもできません。」と
いう事でした。この日の道子さんの症状は脱水症状が強いので、グルコース
などの点滴静注をしました。三時間もかかったでしょうか、明るい話し声が聞
こえるのでそっとのぞいてみました。そこにはほほをピンクに染めたいつもの
道子さんがいました。 翌日道子さんとお母様がいらっしゃいました。
見違えるように元気になっていました。
 問題は学校の友人関係です。
 どうして本音を出し合える強い友達関係ができないのでしょう。

きっと子どもたち全員が緊張しきった学校生活を送っているのではないでしょうか、何とか相手を
良く知って信頼できる温かい関係が作れないものでしょうか。小児科医のどなたも似たような症例
に遭遇していて、同じような思いを抱いていらっしゃるのではないかと思っておりました。
 そんなある日盛岡の小児科医、三浦義孝先生からFAXが入りました。FAXは十枚以上にも
およびました。要約すると、赤碕高校の高塚先生を盛岡にお呼びして、レクリエーション授業を受
けて、人間関係のあり方について学びましょう という事でした。
高塚人志著「17歳が変わる!」を注文して読みました。読み終えて「これだ!」と思いました。 
 そして「高塚人志先生in盛岡」に参加申し込みをしました。



「高塚人志先生in盛岡」

....人との関わり方を学ぶ人間関係体験学習....
    「コミュニケーションゲーム」「気づきの体験学習」で
                      人間関係の基礎を学ぶ

 鳥取県立赤碕高校保健体育科教諭
 鳥取県レクリエーション協会理事長
 鳥取県学校レクリエーション研究会会長
学校、高齢者施設、保育園、その他
たくさんの施設で指導。レクリエーション
を通じて、心を開き心を結ぶ人間関係づくり
に活躍中。


小学館     1600円
日本の多くの子どもたちは、恵まれた環境に、健やか
に成長しているように見えますが、同時に、いじめ、
不登校、学級崩壊、少年事件、人の話が聴けない、
人間関係がうまくとれないなど、教育現場の様々な
事象は、もはや国を挙げての重大な問題です。
これら一連の事象は決して個別的なものではなく、
根底には子どもたちが「より良い人間関係の築き方
を知らない」「人との良い関わり方を知らない」という
人間関係の未熟さが病的な症状として出ているの
だと考えます。様々な、生活体験、人間関係体験
が不足していると考えます。このことが今日の種々の
心の歪みを生んでいるのではないでしょうか。
                     高塚先生 記

 赤崎高校でのレクリエーション授業について。
 高塚先生のお話をまとめてみました。
子どもたちの心の問題が深刻化しています。何とかして子どもたちが本来持っている、
のびやかな生命力を取り戻したい。そのためには、学校と地域のハーモニーが不可欠
です。学校が楽しい場所であること、自分の心を開放できるところであること、本来子ども
たちは、役に立つ力を持っているのを、学習によって気づかせて、さりげなくしっかり
実行できるように育て上げる授業をしよう。イベントではなくて継続的に授業に取り入れる
ことです。指導要綱には無い為、苦労をしましたが、赤崎高校では大変な努力の末、
八年前に実現しました。2001年2月、NHK教育テレビ「教育トウディ」で「人間関係づくり
を学ぶ」と題して放映されました。その後全国の教育現場から、問い合わせや見学が
続いています。総合学習や道徳の時間を利用すれば実行可能ではないかと考えます。

高校三年間毎週一回二時間の正規のレクリエーション授業があること、
下記の四段階になっていることを話されました。
    1.基礎編...........いろんな楽しいレクリエーションによって、自分を開示し、相手と
          共感し、相手が怖い人ではなく親しみの持てる人であると理解する。
          相手を思いやる心、どの相手の話もよく聞くことができる、ありのままの自分
          を知る、自分を開示して相手に見せることが自然にできるようになる。

    2.応用編..........
      2−1  二年生は一定の保育園に毎週一回でかけ、正規の授業として、
           子どもたちの相手をする。遊び、入浴、食事の世話泣く子のあやし方、etc.
        子どもが好きになり、かわいいと思い、相手を思いやる気持ちが自然に芽生える。

      2−2  三年生は一定の老人施設に毎週一回出かけ、正規の授業として、
           入所者の相手をする。話し合い、食事の世話etc.
         いのちの重さを認識し、また共にいる人から喜ばれて、役に立ったと言う
         「役立ち感」が生徒たちを 成長させているようだ。

       2−3 まとめ
          最後にそれぞれに作文を書いてもらう。自分自身への手紙。
          自分がこんなに役に立つ人間であったことを実感する。
          人とのかかわりが 楽しくなり、クラスが思いやりのある楽しい集団になる。 

 
「高塚人志先生in盛岡」
....人との関わり方を学ぶ人間関係体験学習....
    「コミュニケーションゲーム」「気づきの体験学習」で
                      人間関係の基礎を学ぶ
開会の言葉 小児科 三浦義孝先生
今、子どもたちは心の問題にゆれています。いじめ、不登校、学級崩壊、
無関心、親しい友人関係ができない、将来に希望が見出せない、など、
急がなければならない問題だと思います。外来小児科学会の集まりで
二度ほど鳥取県赤碕高校の高塚先生とお会いする機会がありました。ぜひ
沢山の人が、高塚先生の研修会に出て、技術と心意気を学んで帰られ
ますよう。この企画について、市県関係、教育関係に働きかけましたが、予算
がない、勤務時間外だなどの理由で進展しませんでした。それならば自分
でやるしかないと、今回の研修会を企画したのでした。皆さん、各地域、職場
にもどってぜひリーダーとして、子どもたちのために頑張りましょう
第一日 11月23日(日) 18:00〜19:30 研修会 場所はプラザおでって
          医療関係者、保育師、保健師を対象とする
          11月23日(日) 20:00〜 懇親会   場所は ながさわ
 第二日 11月24日(祝日) 9:30〜12:00 昼食 13:00〜15:30 場所はプラザおでって
          上記に加えて、教育関係、行政関係、学生、生徒だれでも対象とする    
    第一日 40名くらいの受講者でした     第二日 70名くらいの受講者でした

 まず先生独特のアイスブレーキングから始まりました。
アイスブレーキングとは、アイスのような冷たく堅い雰囲気を」粉々に打ち砕いてしまうという
意味との事です。リーダー(高塚先生)が『セーノ!』と言ったら、みんなが全員で拍手を一つ
する。まずやってみましょう。『セーノ!』受講者『パン!』未だ皆さんの堅さが解けません。
「また、私がセーノ!と言ったらセーノが二回だから拍手は二つ、又セーノをかぶせたら三回
だから拍手は三回ですよ。又かぶせたら四回、又かぶせたら五回ですよ。」
『セーノ!』『パン!』、『セーノ!』『パンパン!』、『セーノ!』『パンパンパン!』、『セーノ!』
『パンパンパンパン!』『セーノ!』『パンパンパンパンパン!』不思議です。こんな簡単なこと
で楽しくなってきました。次は一回、二回、三回、四回、五回までいったら、四、三、二、一回と
戻ってくるのでした。ここまで来ると、うまくいく人、間違える人、思わずみんなが大声で参加し
ているのでした。みんなが同時に声を出して、同じ動作をすることが、共感する基礎になるの
でした。

リーダー『セーノ!』、受講者『ヨイショ1』と言いながら右手を前に出して開く、同時に左手は
握って自分の胸にあてる。次のセーノでは右左反対の仕草をする、と言うパターン変化もあり
ました。できそうな仕草なのに失敗することもあると言うのが面白く、徐々にいろんなゲームを
しながら、あちこちから笑い声が上がっていきます。




「セーノ ヨイショ!」「ヒューマン・チエアー」
    「いのちみつめて」高塚 著  より

 次に、今まで全く知らなかった人との出会いです。みんなで歌を歌いながら机の間を縫っ
て歩きました。曲の終了とともに近所の人とご対面です。私を振り向いてみてくださった方の
なんと素敵な方だったでしょう。本当にこぼれる様な笑顔の方でした。優しく、しかもベテラン
の保育師さんだったのではないでしょうか。
二人が組になったところで、じゃんけんが始まりました。
左手と左手をつなぎます。右手で掛け声とともにじゃんけんをします。勝ったほうには相手の
左手をたたく権利があります。負けたほうには左手を引いて逃げる権利があります。 ところが
実際やってみるとなかなか規則どおりにいきません。間違ってしまいます。 「あらっ」とか「いや
だー」とかあちこちで大騒ぎになりました。 お互いに触れ合って、視線を合わせてじゃんけん
遊びをしたのはいつの事だったでしょう。こんなに真剣にじゃんけんをしたのは本当に久しぶり
です。じゃんけんは無数のバリエーションがあるようでした。
この組み合わせであんたがた何処さもやりました。だれでも知っているわらべ歌あんたがた
何処さです。二人で歌いながらせっせっせをします。そして“さ”の音を聞いたら二人の手が
上からと、下からと叩き合うわけです。上からたたいた人は次は下から上に向かってたたきま
す。つまり交互の仕草になります。しかしこのなんでもないことが、やっているうちにこんがらか
ってきます。二人で何回笑ったでしょうか。不思議です。さっきまで全く知らなかった人なのに、
ずいぶん前からの知り合いのような気持ちになりました。


 その後はグループワーク・トレーニングでした。第一日目は四人で、第二日目は六人で
擬似家族を作りました。誰かの話を心から共感して聴くことができるか、自分の話を心を開いて
みんなに分かってもらえるように話すことができるか、の練習でした。 このことについては
まだ私は納得できませんでした。擬似家族が心から“仲間だ”と感じるには、今回は少し時間
が足りなかったと思いました。講習会は数日間にわたって行われたほうが、本物だなーと感じ
ました。又次の講習会があったら、ぜひ参加したいと思っています。
   付記: 日本医師会主催 平成15年度乳幼児保健講習会  対象は 医師
       平成16年2月15日(日) 10:00〜16:00   日本医師会館にて
         高塚先生も講師の一人です


富士 書店    1524円
鳥取県立赤碕高校で実行している 「人との関わり方
を学ぶレクリエーション授業の様子が、沢山の写真と
ともに紹介されています。基礎編では子どもたちが
生き生きとレクリエーションで楽しんでいる様子が、
応用編では地域の保育園や、高齢者施設に毎週
授業として出かけていって真剣にかかわっている
様子が紹介されています。
高校生がこんなに自分をさらけ出して、楽しんでいる。
そして小さい子、又高齢者に優しく真剣に向き合って
いる姿を見ると、無限の感動でいっぱいになります。

                 三浦義孝 先生へ
とても素敵な、楽しい講習会でした。本当にありがとうございました。まず始めのFAXも、
医療関係、教育、福祉関係者あてに数100人以上と伺いました。 先生の疲れを知らない
バイタリティーに感動です。
                 高塚人志 先生へ
素晴しい講習会をありがとうございました。鳥取から岩手へ、こんなに気軽に飛んでいらして
いただいて、心から感謝申し上げます。みんなでこの方式を日本中に広めていけたらどんな
に良いか。 赤崎高校のある高校生が「小学校の時からこの授業があると良かった。
そうしたら僕はもっと良い人間になっていただろう」 と感想文を書いていました。
本当にそうなるよう願ってやみません。 この方式が全国に広まりますように。

高塚 著 
 「いのちみつめて」
         より