英国の電力増幅管(多極管)

英国を代表するビーム管のKT88です。最近は中国製やロシア製、アメリカ製などが入り乱れて(悪い訳ではありませんが・・・)、残念ながら本家のMOVのものはほとんど見掛けません。いづれDA30やPX25のように幻になってしまうのでしょうか?アメリカの6550と同特性ですが、こちらのほうが規格は1クラス上です。バリエーションは、プレートに光沢の有るものとないもの、ベースの下部が黒と茶色の2種類でゲッタが1個所と3個所のものがあります。ゴールドライオン(英国)もゴールドモナークもジェネレックスもGECもMOVグループで中身はどれも同じです。Cossorのものもあるらしいですが、見たことがありません。トッププレート管にTT21があります。軍用番号は、CV5220です。

英国製のゴールドライオンのKT88です。艶ありプレートにトップがダブルゲッターのタイプです。1985年製です。最近のゴールドライオン(ゴールドモナークも同様)はロシア製で、規格は同じですが構造の異なった真空管になっています。入手時には注意が必要です。

英国製のゴールドライオンのKT77です。アルミクラッド鋼板のプレートでトップゲッターのタイプです。茶色の薄いベースが特徴的です。画像の真空管は、1979年製です。KT77は、KT88やKT66のようにたくさん生産されなかったので、入手は困難です。EL34同等といわれていますが、EL34は5極管で、KT77はビーム管です。構造が根本的に違います。また、最近のゴールドライオン(ゴールドモナークも同様)はロシア製で、EL34と混同されています。入手時には注意が必要です。

こちらも英国を代表する出力管のKT66です。KT66には、最も古いST管と画像のドーム型のスモークとクリアがあります。またベースは茶色と黒の2種類あってこれらの組み合わせがバリエーションになります。画像のKT66は、上から見ると第3グリッドとカソードが接続されているのが、良く判ります。クリアタイプなど、ステムの側で接続してあるものもあるようです。これもKT88同様、中国製やアメリカ製(7581:6L6の高信頼管)はよく見かけますが、本家のものがさびしくなってきました。製造はMOVで、マルコーニ、GEC、オスラムなどのラベルになっています。

GECのTT100です。あまり聞かない名前ですが、プレート損失100Wの送信管です。単3電池と比べると判ると思いますが、ずんぐりと太いがっしりとした造りの大きな真空管です。プレートはアルミクラッド鋼板で太いカソードが2本入っています。ヒーターが12.6V1.6A(並列:6.3V3.2A)で、ちょうどKT88を2本入れたような規格になっています。ベースは特殊な12ピン(コンパクトロンではない)です。

STCの12E1です。独特のプレートが印象的です。

CV450(EL38)です。EL37のトッププレート版といえる真空管です。太いカソードと小型の碍子を組合せた電極は、すばらしい出来です。EL34やKT88に比べると、比較的安価に入手できます。

マツダの11E1です。ベースはマツダオクタルという、ピン間隔が通常のオクタルベースより一周り広いものです。12E1と兄弟管ではないようですが、良く見ると12E1と同じような(そっくりな)プレートが入っています。

故浅野勇氏がPEN45のアンプを紹介したときに、「入手できればぜひ使いたい」と言われたPEN44です。マツダの高感度ビーム管で、プレート電圧250Vで約10Wの出力が得られます。ベースはマツダオクタルで、ヒーターは4V2Aです。

マツダのPEN45です。この真空管もベースはマツダオクタルという、ピン間隔が通常のオクタルベースより一周り広いものです。2極管を持ったPEN45DDという複合管があります。ソケットは、一見しただけでは通常のオクタルソケットと見間違いそうです。

ムラードのPM24Dは、PM24Aから始まるムラードの直熱5極管シリーズで最大のもので、外観はプレートの厚みを除くとPX25に大変よく似ています。プレート損失24Wで最大プレート電圧500Vの点もよく似ています。スクリーングリッドは、近代管のようにタフではなく最大で300Vになっています。類似管にスクリーングリッドの耐圧を500Vに上げたPT25Hがあります。

オスラムのPT625です。ちょうどP625にグリッドを追加したような真空管です。大きさはPX25並ですが、出力は1.5W程度です。全体がゲッターでよく見えませんが、RE604のようなプレートが入っています。向きはまっすぐです。

マツダの傍熱5極管のAC/Penです。ベースの側面にグリッドが引き出されています。当時はベースが5ピンまでだったので不足分をこのように側面に引き出していました。規格は6F6に良く似ています。

CossorのMP/Penです。初期の5極管でニッケルプレートが美しいです。ピンは、N43と同じ7ピンになっています。出力は42程度ですが、大きさは2A3ぐらいある迫力のある真空管です。


こちらもCossorのMP/Penですが、細身でプレートはメッシュです。電極の造りからムラードからのOEMだと思います。太いカソードが、いかにも良い音を奏でそうです。2本並べてみると、その違いは「全く別物?」のように見えます。

ムラードのPEN4VAです。

ムラードのPENA4です。細いタイプと太いタイプを並べてみました。見た目は太いタイプの方が良いように思えますが、細い方がカソードが太く、こちらの方がよい音を奏でそうです。

オスラムのKT63(初期のアルミベースタイプ)です。米国の6F6同等の出力管です。6F6が5極管であるのに対して、これはビーム管構造になっています。

オスラムの高感度出力管のN43です。ソケットはご覧の通りのちょっと変わった形をしています。

Cossorの小型出力管の220HPTです。小型ですが、とても丁寧な作りです。プレートには、Cossorのマークの「C」がエンボスで記されています。