「…ねぇ、明日何時?」 「何が?」 「明日、出る時間」 綺麗に食べて貰った夕食を下げながら聞いてみる。自分的に結構大量に作ったつもりだったんだけど、運動部の男の食欲は予想を遥かに超えていて。なんと言うか…明日こそ、とか思う。 「6時半」 「ん。解った」 「何で?」 「朝ご飯、食べるでしょ?6時頃うち来てよ。…で、お弁当箱頂戴」 「はあ?」 食器を洗いながら、手を伸ばして相手のお弁当箱を受け取る。カウンター式のキッチンって、こういうの便利だよね。話は途切れないし、用件もすぐ叶えてもらえるし。…キッチン跨いで向こう側に座ってる相手は、ちょっと頭に疑問符を巻き散らしてるけど。それでもちゃんと渡してくれるトコが『らしい』んだよね。 …って、弁当箱、でかっ。1コあたり、私の倍は余裕であるぞ。 こんなの、二つも持ってってるのか…。ちゃんと埋まるのかな。この量を埋められるおかずって何?おばちゃんってば、これを毎日作ってんの?…尊敬〜。 「おかーさんとおばちゃんに頼まれちゃったんだもん。今日の夕飯からあの二人が帰って来るまでの、食生活」 「…そうか」 既にぐったりとして反論も出ないらしい。…そりゃ、そうか。部活の休憩時間にイキナリ母親の不在(うちの母親と2泊3日の旅行)を知らされて、他人のうちにまでご飯食べに来てるんだもん。 …まぁ。幸い、庭続きの隣家ってヤツで移動時間を考えなくて良いってのは利点なんだろうけど。 今更遠慮も必要ないしねぇ。 「お弁当、ガッコで渡せば良い?それとも持ってくならそれまでに何とかするけど」 出来れば学校が楽で良いなぁ。朝練のある人より、こっちは一時間近く遅いもん。登校時間。 「どっちでもいー…」 「じゃ、ガッコで渡すね。焦んないで済むし」 隙間埋めに苦労しそうだもんねぇ。メニューも考えなきゃいけないし。…ってか、ドコに入るんだろう、この量。…いや。コイツって一日5回位ご飯食べてなかったっけ…? 胃、異次元に繋がってんのかなぁ…。エンゲル係数、高そう。 「どーも」 「何か、リクエストある?」 「食えるモン」 「…了解」 それは、嫌いな物以外、何を入れても文句言わないって事だな?そう、解釈するぞ。 「…明日」 ぼそりと言い出す声に顔を上げる。 「何?」 「一緒に昼食う?」 「いいけど。部活の皆は?」 「居る」 「邪魔になんない?」 思いっきり部外者だよ?…そりゃまあ、同じクラスのヤツもいるけど。 「平気」 「じゃ、良いよ。…皆のお弁当、写真撮らせて貰えるかな?」 「写真?何で」 「参考資料」 このレベルのお弁当箱を埋めるメニューってのが知りたい。凄く。一品あたりの量が多いのか、それともおかずが多彩なのか。主食ばっかってのも考えられるけどさ。 とにかく、見た事ないから興味深い。参加するなら、是非ともデジカメ持参で。 「…いんじゃね?」 おまけ。 「…みぃ、メシ」 「持って」 「…デカくねぇ?」 「…写真撮らせて貰う為にデザート作ってみた。人数分」 「ふぅん」 |