「風邪でも引いたか・・・?」 今朝から身体が怠い。おまけに食欲も落ちている。願わくばベッドに撃沈されていたい心境である。 「キョウスケどうしたのぉ?」 こいつは病気しらずだと思う。 「あ、いや。風邪を引いたらしくてな」 「あら、じゃあ私がとっておきの御馳走作って上げるわ」 腕にまとわりつきながら楽し気に言うエクセレンを振り払う気力もでない。 「いや、いい」 言葉だけで抗議を告げる。 「大丈夫よぅ、私の料理の腕を信じなさい」 「エクセレン、俺はー」 言いかけた言葉を書き消す様にけたたましく警報音が鳴り響く。 「アルトアイゼン キョウスケ・ナンブ出撃るぞ!」 戦力が薄い味方陣に自分の戦力は不可欠。 痛む頭を抑えながら戦場に降り立つ。降り立ち様に相手に先制攻撃を加える。 「どんな装甲も・・打ち貫くのみ!」 「ちょ、ちょっとまだ味方がーキョウスケ!」 「生きていたくば気力で避けろ。威力を知りたくば当たって確かめろ」 言うが疾いかリボルビング・ステークを繰り出す。 さすがに避け切れない仲間の何機かが被弾した。 「味方を殺す気かキョウスケ!」 「俺は最初に言った筈だ。生きていたくば命賭けで避けろと」 目の前が歪み始める。 「ちっ、」 頭を数回振りながらトリガーに指をかける。 霞む視界の中に的を絞り込む。 「・・避けるなよ!弾が当たるまでは!」 5連チェーンガンを撃ち込む。 クリティカルヒットにより敵機のは大爆破を起こす。 「後はお前達のレベルでも十分倒せる雑魚だからな。総て無傷で倒せる筈だ」 「言ってくれるじゃねぇか。レベルが低い雑魚とはよ!畜生、言う通り無傷で帰ってやろうじゃねぇか。やってやるぜ!」 一斉に攻撃を開始する。 「わぁお、みんなやる気まんまんじゃない。私の分も残しておいてよね」 実に嬉しそうなエクセレンの声が響く。 「エクセレンー」 視界が完全に見えない。意識が飛ぶか飛ばないかのぎりぎりのタイトロープを渡っている事など本人以外知る由もない。 「悪いが、アルトをロンド・ベルまで運んでくれ」 「え?キョウスケ?」 しかし、エクセレンの声は耳に届く前に意識が飛んでいた。 「 ここはー」 見た所医務室ではなさそうだ。では、何処だろう。 「私の部屋よ。医務室から移してもらったのよみんなに」 みんな、と言う事はミッションは終了したのか。 「もう、味方にまで攻撃なんかしないでくれよな」 頭に降ってくる枕を避ける事ができずにまともに受け止めてしまう。 投げたのは藤原だった。 「まあ、俺達が早く足でまといにならない様にしないといけないんだけどな」 「そうしてくれるとありがたい」 「かあぁ、悔しいが嫌味も嫌味にならないわ」 「はいはい、言い合いはそこまでにしてぇ キョウスケには早く身体を治して貰わないとね」 言いながら、何故かエプロン姿のエクセレンが現れた。 「はい、食べてねダーリン」 藤原達に無理やり起こされ、目の前に置かれたトレイの上にはてんこ盛りにもられたねぎの山。 「葱の山を食えと、」 確かに汗が滝の様に出るから早く治るかも知れないが、栄養はないんじゃないだろうか。 「エクセレン特製ねぎてんこ盛り汗だくだくラーメンでーす」 最初に食欲がないと言った筈なのだか、どうやら聞いていなかった様だ。 しかし、この量を食えと本気で言っているのだろうか。 「旦那、幸せだよな彼女の手料理なんてこんな艦内じゃ食えませんぜ」 おい、断れない様な台詞を言うなよ。 「ささ、旦那」 ご丁寧に箸を握らせてくれる。 後で覚えていろよ、この借りは何処かで必ず返してやる。 「ああ、」 おそるおそる箸で葱を摘む。何だろう、ラーメンのくせにヤケに赤い気がするのだが。 「い、いただきます」 一口口に含んだ瞬間、再び意識が飛ぶ結果になった。 「あ、トウガラシ入れ過ぎてたって事?」 当分の間声すらでなくなったのは言うまでもない |