鎮花



「…いーい、天気だねぇ」
 子供達の任務を早々に終わらせたお蔭か、久しぶりに日の中を歩く。
 季節は春。
 今年は暖かくなるのが早く、里は馥郁とした花の香に満ちている。柔らかな陽射しの下で、心なしか浮き立つ人々を見るのは、随分と心地いい。
 珍しく人の多い通りを選んで帰路に着くのは、カカシ自身もそれに中てられたのだろうか。
「ただーいま」
「お帰りなさい。早かったですね」
「うん。依頼が早く終わったし。九人も一辺に面倒見るのは疲れるしね」
「…あぁ。アスマ先生と紅先生、任務に出てらっしゃるんでしたっけ」
 肩を竦めると苦笑が返ってくる。
 七・八・十班の子供達の担当上忍が別任務の時は、任務についていない者がそれぞれの部下の面倒見るのが慣例となっている。
 …もっとも、一番多く任務についているのがカカシの為、こういう状況(子供達の面倒を見る立場)になるのはひどく珍しいのだが。
「そ。三人ならどんな突拍子もない事仕出かしてくれても良いけど、九人は流石にね」
「…何十人でも対処出来るクセに」
「そんな事より、イルカ、明日、空いてる?」
 ちろりと睨む相手に素知らぬ顔で話を変える。こうなると、言い募るだけ無駄なので、イルカは手を伸ばして鼻を摘むだけで頭を切り替える。
「空いてますよ。アカデミーは春休みだし」
「それは良かった。明日、ちょっと大量にお弁当作って?」
「…はい」
「甘味はね、蛇印の極上品があるし、酒は蛞蝓印…は無理か。飲むだけだ、アノヒト。蛙印の方が期待出来るから、ね?」
「…御三方もいらっしゃるんですか?」
「三代目も来るよ」
「賑やかになりますね」
「…十年振りだから、ねぇ」
 くつりと笑うと、連絡鳥を数羽、空に飛ばした。



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