「…ふぁ…」
目覚ましが鳴って、目を擦る。辺りはまだまだ暗くて。まだ朝になってないから、もう少し寝ようと考えて。
はた、と気付く。
「あ。おにぎり!」
ぱちり。
半覚醒から覚醒へ意識を上手く移動させると、出来る限り足音を立てないようにして部屋を出て行った。
「えと。ごはんできてるから、なかみつくらなきゃ」
夜のうちに炊飯器が正しく働いたか確認し、安心すると台所内を探索。
背が足りない所為で、椅子を引きずりながら動き回ると、梅干しと鰹節、他の食材を発見する。移動中、かなり派手な音を立ててしまったが、本人に気付く様子はない。
一つに集中すると、他に意識が行かないのは、まぁ、幼児ならではだろう。
「あった」
捜し出した食材を並べ、嬉しそうに呟くと、次の作業に移ろうと、今度は食器を捜し出す。
「…イルカ?何やってるの?」
「ぴゃ!」
後ろからかけられた声に驚いて振り向く。そこには呆れた顔の両親。
「…あ」
「何、やってるの?」
再度問われる。不思議そうな声から、怒ってる訳ではないのが知れて。安心して口を開いた。
「あのね、おにぎりなの!」
「おにぎり?」
「うん。おにぎりつくるの」
「どうして?」
誇らしげに言う我が子に疑問を投げる。
「カカシさんのおべんとなの!にんむだから!」
「…成程。愛されてるなぁ、カカシん坊」
「だめかなぁ…?」
「大丈夫じゃない?じゃ、難しいところだけ手伝ってあげるから、頑張りなさい」
「はーい」
苦笑いの両親を巻き込み、初挑戦の弁当作りは満足いくものだった。
…幼児なりに。
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