「…えっと。お味噌汁は良いから、次は…」
定番の茄子の味噌汁を火から下ろす。それから、鍋の中の煮物を確認して器に。
主菜は後で焼くだけ。日持ちしそうな副菜も、いくつか作った。
一応、一汁三菜よりは種類もあるけれど。
…もうちょっと、食べるかな?でも、作り過ぎても食べる暇ないかもしれないし。いくら日持ちすると言っても、一人じゃ食べ切れないし。
…何年経っても、食事の種類と量には悩んでしまう。
好き嫌いは少ないから、メニューで困る事はないけれど。
食べる時間の取れない人だから。
その点で困ってしまう。
…まぁ。ダメなら明日にでもナルトとサスケを呼んであげよう。最近、自主トレ続きで拗ねてたし。
「ただーいま」
そんな事を考えてると、いきなり耳許に低い声。…気配出すのも忘れている人の帰宅。
「お帰りなさい。お疲れ様。怪我はないですか?」
振り返って出迎えると、ぎゅ、と抱き締められる。
「無傷だよ。ちょっと汚れてるけど」
言われた通り、少し土の匂いはするものの、血臭はしない。無事に帰って来てくれた事にほっとする。
「お風呂沸いてますよ。御飯はもう少しかかるから、先に…」
「一緒に入ろうか?」
「料理中です!」
くすくす笑いながら提案される内容に全身が熱を持ってしまう。…じ、冗談だよね?
「…残念」
「何言ってるんですか」
「本音。…あ。明日の予定は?」
「お休みですけど」
アカデミー教師は、原則として日曜は休み。…上忍師もやっているとはいえ、基本的に戦忍で、休みを取らないカカシさんには曜日の感覚がないみたいだけど。
「なら、明日付き合って」
「何かあるんですか?」
「ん?アイツらがちゃんと自主トレしてたか確認」
悪戯を思いついたような顔。
…後で、 あの子達のレベルに合わせたトラップを用意しておかなきゃ。
「良いですよ。お弁当でも作りますか?」
「良いね。上手く辿り着いた奴だけ昼付」
くつりと楽しそうに笑う。
…どうせ、なんだかんだ言って食べさせるのに。ん〜。何を作ろうかな。皆、成長期だし、栄養バランスの良い物を食べさせてあげたい。
「じゃ、カカシさんはお風呂!明日の下拵えもしたいから」
腕を伸ばして浴室に行かせようとすると、深い笑みを見せられる。
な、何か企んでる!
「何言ってるの?後で手伝うから、先に一緒に風呂でしょ?」
「え?…きゃあ!」
勘に従って、逃げようとした瞬間、ひょい、と持ち上げられてしまう。
「ゆ…夕食…」
「それも後!…手伝うよ」
抗議を聞き入れてくれる気はないらしい。手早く火を止め、包丁も菜箸も流しに浸けられてしまう。
「ぜ、絶対ですよ?」
「誓おうか?」
確認すると、揶揄うように言われてしまう。…誓う、なんか簡単に言わないで欲しいのに。きっと、判ってて言ってるんだろうけれど。
「…それは、一回だけで十分です」
ぷい、と横を向くと、吐息で笑う気配。…知ってるクセに。機嫌が良いと、ちょっと意地悪になるんだから。
「欲がないね」
「そんな事ありません」
言えない欲ならたくさん。
でも、そんな物には価値はないから。
要らないとは言わないけれど、それはおまけでいい。
それだって、充分貰っているのだから。
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