「…え?」
知恵熱が出そうな程のカルチャーショックと、人生観が変わるような経験が、一度に襲ってきてしまった翌日。
飽和した頭が立ち直る前に、更に頭が真っ白になるような事を言われてしまった。
「もう一度言おうか?」
「あ。はい。お願いします」
困惑の表情を浮かべたまま、堅い口調で言ってくるカカシさんに神妙に頷く。
…だって。
いきなり言われても信じられない。
頭の中、既にパンク寸前。
「この作戦が終わった後」
はい。
「里に帰り付き次第」
大体二週間後ってカカシさん、言ってたよね?
「三代目火影の名をもって」
なんか、物凄い重要事項みたい。中忍の自分とは無縁な感じがする。
「祝言を挙げる。…んだって」
一言、一言、区切りながら言うのを、ゆっくり頭の中で噛み砕く。
…て。
え?
「祝言、て…」
「結婚式の事だね」
それは、そうですね。
「誰と誰の」
「俺とイルカの」
まあ、そうかな?とか思ってみましたけど。
「…あの、まだ十六なんですけど」
「そうだね。俺も十七になったばっか」
一つ違いだからそれは当り前だけど。
…じゃなくて。世間的にまだ子供なのではないかと思ったのですが。
「…ありなんですか?」
「…まぁ。二人とも中忍以上だから、法律上は問題ないよ」
…確かに自分は、新米だけど中忍で。カカシさんは、暗部の隊長も務めてるような凄い上忍で。
一応、木の葉の法律で言うなら、立場上は大人なんだけど。
でも。
「何で?」
「昨夜、じっちゃんが儀式の首尾を確認に来たんだよ」
「…はあ」
儀式って…。もしかしなくても、昨日のアレの事だよね。
…で、カカシさんが『じっちゃん』なんて言うのは、三代目火影様の事で。
…あぁ。そういえば、カカシさんが三代目をじっちゃん、なんて呼んだの、十年振りに聞いた…て。
「え?」
ちょっと待ってください。
「…帰り際に言い残してった」
帰り際って…。
「…おじーさま来たの?」
凄く忙しい方なのに。夜中にわざわざ?
…逢えなかった、って事は、きっと眠っていた間の事だろうし。
「来たの」
「どうやって?」
いくらなんでも、普通に走って来た訳、ないよね。だって、ここは里から二日位かかるもの。
「時空間忍術の一種を使って」
あ、うん。成程。流石はプロフェッサーって二つ名されてた方だなぁ…。
「…へー…」
…忙しい最中、時空間忍術使って、儀式の事訊きに来て、それでもって結婚式のお話をしてったんだ…。
「イルカ?」
「ええええええ?」
頭の中でパチンと話が繋がった瞬間。
「…うわ!イルカ!」
気を失ってしまった。
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