(…つまんない任務だったなー)
難しいとか、簡単とか、そんなのは関係なくて。
自分を楽しませてくれる任務が少ないのは面白くない。
そんな事を考えながら受付所に向かう。
あそこには。
最高が居る。
「お帰りなさい、カカシ先生」
「ただいま、イルカ先生」
艶やかな微笑。
穏やかな声。
受付なんかに置いておくのが勿体無いくらいの人材が居る。
「報告書、出していただけます?」
「はい、どーぞ。…あのね、イルカ先生」
涼やかな事務用件に応えつつ、覗き込むように相手を窺う。
「はい」
視線は書類の向けたままで応える、甘くて綺麗な声が耳に心地イイ。
「今回の任務、流石にキツくて…」
少し、甘えるように低く囁いてみる。
周囲が心配そうな空気に変わるのは、それはそれで楽しいけれど。
「任務ですから、仕方ありません」
さらりと告げながら、ペンが書類の上を軽やかに走る。
…なんとも予想通りの反応に、内心で息を吐く。
ほんと、ツレナイねぇ。
「──────── …それに、結構楽しんでおいででしたでしょ?」
す、と上げられた顔には鮮やかな笑みさえ浮かんでいて。
内心を気取られた以上に見惚れてしまう。
「…やきもち、妬いてくれないの?」
くすりと笑みながら拗ねた声を出してみれば。
「任務に?」
周囲には気取られない程度の冷ややかな、それでいて優しい流し目が戻ってくる。
そこには、揶揄の色すら含まれていて。
「…そーでしょーね…」
完敗。
諸手を上げて降参してしまう。
あぁ。
もう。
火影サマ、アンタの仰る事は確かですよ。
「はい。結構ですよ。お疲れ様でした」
目を合わせて、この日最高の笑顔を見せるトラップの名手。
この佳人の仕掛けた罠には。
──────── ハマるしかない。
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