(…つまんない任務だったなー。多少は楽しめたけど、簡単過ぎたし)
スパイ容疑の女が居て。
確証を得る為に近付いて。
堕として、情報貰って、始末して。
自身の顔と身体と立場とを使うのは、男も女も同じ。
楽しめるか、楽しめないか。
それだけが重要。
とはいえ。
あまり続けば飽きもくる。
百戦錬磨の女も男も食傷気味。
他の楽しみを探す気もないけれど。
少しは疲れているのかもしれない。
(…あれは…)
「イルカ先生?」
「あ。カカシ先生!こんばんは。任務帰りですか?」
「えぇ」
──────── 良い所で。
最近のおもちゃ発見。
少し気分が浮上する。
「イルカ先生は?」
「一楽です!今日はチャーシュー麺が半額なんですよ!カカシ先生もどうですか?」
「…どうしようかな。…今日はちょっと、嫌な任務でね。食欲が…」
別に食欲に変動などないけれど。
ちょっと反応が見たくて言ってみる。
「え?それは良くないですよ。そういう時こそきちんと食べなきゃ。一緒にどうですか?」
「あ。そーですねー」
何て健康的な反応。
内心笑ってしまう。
「じゃ、行きましょう!」
「…ねぇ、イルカ先生?」
意気揚々と歩きだす相手を止めて。
「何ですか?」
「…俺ねぇ、ちょっと指、冷たいんですよ。手、繋いでも良い?」
懇願するように言う。
別に、体温が低いのは今更ではあったが。
「えぇ。どうぞ?俺なんかじゃ大した事ないと思いますけど。ごついし」
「そんな事ないよ。…あったかい。──────── ありがとね?」
そっと握って引き寄せて。
耳許に囁いてやる。
「え。あ。どう致しまして!」
一瞬。
ほんの一瞬だけ、頬を染めたように見えたけれど、いつもと同じように笑いかけられる。
やれやれ、不発か。
あまりに鈍感な彼に内心溜息を吐いて。
これからどう、堕として行こうかと算段する。
全てはこれから。
相手に合わせてのんびり行くのもまた一興。
暫くは暇つぶしにもなるだろう。
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